今後は2ブランドで展開すべき 「巌流島バーチャルファイト」レビュー
2022年の年末以来、本当に久しぶりに開催された異種格闘技イベント「巌流島」。
常々、ゲームと相性がいいと思っていた「巌流島」だが、今回本当にゲームのような世界と融合した「巌流島バーチャルファイト」という興行が5月3日にYouTubeで配信された。
「バーチャル」と名前が付いたことから、選手が仮想空間で戦うイメージが浮かんだが、思っていたよりもその空間が凝っていた。今回は古代ヨーロッパの闘技場のようなステージで、さながら秘密結社の地下闘技場のようにも見えた。
またゲーム『アサシンクリード』が好きなので、副審・リングスタッフが身にまとっていた衣装は、まるでそのゲームの1シーンのようで好みだった。そして「ヘルメス」と呼ばれるレフリー、「アテナ」と呼ばれるラウンドガールの衣装もエンタメ性が高く、よく似合っていたと思う。
「格闘技興行」というより、見映えや話題性を重視した「ネット配信用動画コンテンツ」だった。途中、選手自身が試合を振り返り心情を吐露するシーンが挟まるが、それもまた動画配信サイトのドキュメントを見ているかのようだった。また、格闘技中継ではほぼ必須とも言えるラウンドタイムが表示されず、打撃音やセコンドの声だけが聞こえたのも個人的には集中できて見やすかった。
そしてYoutubeで無料配信されるわりには途中でCMが流れなかったので興が削がれず、非常にテンポよく見ることができた。後ろのモニターには今回のスポンサーと思われる動画広告が表示されており、古代闘技場の背景との世界観が崩れるものの、ここはあえて目立たせる広告としては正解なのかもしれない。もし背景が現代的な街並みや『攻殻機動隊』や『サイバーパンク2077』のような世界であれば、そこまで違和感ないはずだ。
概ね新しい試みとしては肯定しているのだが、正直言うと「巌流島」にして「巌流島」に非ずだったのは否めない。今回4試合行われ、巌流島ルールは1試合のみだったが、「転落」という概念(土俵際の攻防)と円形の闘技場ではないのはがっかりだった。和の世界観も然ることながら、あの闘技場、道着、ルールこそが巌流島のキモである。
そこで期待するのは従来の「巌流島」ファンと、今回初めて見た新規ファンを取り込む2ブランド展開だ。
"バーチャル"に対して従来の「巌流島」を"リアル"と対義した時、言わば従来の「巌流島」は「現世(うつしよ)」で、「巌流島バーチャルファイト」は「幽世(かくりよ)」でもある。そして、その内訳は以下の通りである。
現世・REAL:和の世界観、円形闘技場、巌流島ルール、有観客興行
幽世・Virtual:仮想空間、正方形闘技場、打撃系ルール多め、動画配信コンテンツ
今回の配信はありがたいことに無料だったが次回以降はPPVでも問題ない。配信で利益を出して定期的な有観客興行に繋げてほしいところだ。
各試合についての感想は後日。