私的偏愛録 其の十三 町田メロメ『三拍子の娘』
普段ひとりっ子をやっています。まぁ、ひとりっ子なんて言っている年齢ではないのですが。
ひとりっ子だからわがまま放題でしょう、とか言われたりもしてきましたが、周りの大人を見て育ってきたので、幼い頃から集団生活の場では周りに合わせて動けていた方だと思います。一方で、時々変なこだわりが発動して意固地になることもあったりします。
基本一人が苦ではないので、友人の輪を広げ忘れてご飯やショッピング、趣味や旅行なども一人が多くなってしまいました。そのくせ、出先でわいわい盛り上がる人たちを見ると寂しさを思い出し、羨ましく感じるのです。
そんなひとりっ子の中のひとりっ子のわたしですが、ごくたまに兄弟姉妹がいたらいいなと思う時があります。『三拍子の娘』を読んだ時がそうでした。すみちゃん、とらちゃん、ふじちゃんと暮らせたら楽しいんだろうな。この三人なら、ひとりっ子に染まり切ったわたしも受け入れてくれる、そんな気持ちになるのです。
あの三人が暮らす家で、マルセイバターサンドや鳩サブレーで小躍りしたり、フォルティッシモを愛たり、お酒をしこたま飲んでふじちゃんに怒られたり、朝から一緒にラプソディ・イン・ブルーを聴きながら会社に遅刻したり。
こんな妄想もたまにはいいでしょう。この人生はきっと、サバンナで眠るインパラの夢の中なのだから。