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エッセイ㉔


橋本病について

大学3年生になり、橋本病を発症した。
大学病院に行き、採血した結果、医者でも初めて見るぐらい低い数値とのことだった。「なんで歩いてきているの?運ばれてきてないのが不思議なくらい」と診察室に入るなり言われた。

橋本病の症状として、長い時間かけてゆっくりと症状が進むため、診察を受けたときも体がその状態をデフォルトだと思い込んでいた。
ただ、思い返すと、平衡感覚がなかったなとか、心臓の鼓動がものすごくゆっくりになって胸が苦しい感じがしていたなとか、橋本病特有の目が半開きになったり、動作がゆったりしていたなとか徐々に思い当たる自覚症状が浮かんだのだった。心肥大などの可能性もあるため、心臓のエコーも撮った。

医者からは、低い数値から急に高いホルモン剤を飲むと、心臓に負担がかかるとのことで、チラージン15μgから飲み始めた。
飲み始めてすぐに、体が軽くなったのを実感した。「今までは、頭にモヤがかかっているような感覚だったけど、なんだか元気になってきた……?」と、内心嬉しくなった。ただ、一方で、薬を飲む前の自分の行動が思い出せなかった。診察前の1、2週間に私がどういうことをしていたのか全く覚えていなかった。何をしていたのかがわからないという感覚は初めてだったため、混乱した。
大学のゼミで、「先週、卒論の発表をしたと思うんですけど、先週のプリントを見ても覚えていなくて……記憶が無いんですよね…」と伝えたときは、ゼミ生も先生もただただ驚いていた。そりゃそうだ。

そのことを医者に話すと、かなり重症な状態だったため、記憶障害(物覚えが悪くなる)も多少起きているかもしれないとのことだった。
数値が安定すれば、症状も良くなるということで、通院治療が始まった。
今まで普通に出来ていたことが出来なくなる、生活しているだけなのにそれが苦しいという日々であった。何もせずに過ごすことの罪悪感と、生きているだけ丸儲けという感情が行ったり来たりしていた。
一年間の通院を経て、数値が正常となったが、服用自体は続いている。(持病ということになる)
ただ、橋本病自体は、女性に多い病気で、私のように悪化すると生命に直結するが、服用さえ忘れなければ生活に支障が出ることはない。妊娠の際は、更に調整が必要となるらしい。
健康に生きるというのは、簡単なようで難しいんだなと、病気にならない人のすごさを実感したのだった。

このような経験をふまえて、①人はいずれ死ぬし、死ぬタイミングは選べない、②今、生きている間にできることやしたいことをして、楽しみたいという気持ちに変化したのだった。
また、自身の記憶力の容量が以前より減った感覚があるため、生活に支障を出さないためにも、エッセイのように過去を書き綴る機会は必要だと感じた。

エッセイに書いた過去の出来事は、最悪、忘れてもいい、出来れば覚えておいた方が良いが読み返しときに思い出せばいいと自分に言い聞かせるためでもある。(新しいことが覚えられなくなるため)
健康第一!

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