エッセイ⑧
中学生の頃の話
中学生の頃、たまたま、教室のベランダに出たとき、やんちゃな男子が、クラスの男子にタバコを勧めていた。丁度、教室から死角になる位置であった。勧められた男子は、純粋無垢な本当にいい子であった。
それ故に、突然出された犯罪(未成年なので)の共有に、「お前、なんでこんなもん持ってるん」と驚きつつ、小さな迷いと強い好奇心が芽生え、爛々と目が輝きだしたことを覚えている。
私は、ベランダの流しで何か作業をしながらそれを横目で見ていた。
丁度、思春期を迎える中学生は、悪に憧れる時期である。世の中でタブーとされることに触れると、少し大人に近づけたような気がするのだ。(近頃の悪と呼ばれるものは、ただただ人に迷惑をかけることも多いので、そこの見極めは大事である)私の過ごした中学では、武装したような不良は極僅かで、普通に通学し勉強するが酒やタバコを仲間内で楽しむヤンパー(中途半端なヤンキー)が大多数であった。
色々な話を耳にしたが、特にそれを大きくする訳でもなく、事実は事実として受け止めていた。
ただ、ある日聞いた話には衝撃を受けた。
(これは、あまり話したことはないし、不特定多数の人間が見れるネットの場で語るべきではないと思うが)
クラスのある男子が、山道のひっそりしたところでおじさんから大麻をもらったと言う。
その当時、フリースタイルダンジョンが流行り、ヒップホップな世界観に憧れる人が多くいた。
ラップバトルは、互いにディスるイメージが強く、なんとなく距離を置く人もいるだろう。実際、悪口の言い合いといえばそれまでだが、目の前の相手に「俺はここまでやってきた。こんなことをして生きてきたんだ。お前の方はどうなんだ。俺を倒してみろよ」という語りと、言葉選びで勝敗をつける。
プライドを持ってビートに言葉を乗せるということ自体は、とても興味深かった。(当時付き合っていた同級生はラッパーになった)
多分、その嗜好品の流れとして切っても切り離せないのが大麻などの薬物なのであろう。私は、関わったことはなかった。ただ、そうした物の入口がものすごく近いところにいるのだなと思いながら学生時代を過ごしていた。(高校生の頃に、県内の学生の大麻一斉検挙があった)
中学生に売る大人がいるという事実にも、ほんの少しだけ深淵を覗いた気がしたのだった。
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