今更解説する2020年漫画大賞、ブルーピリオドの面白さ
今面白い漫画は?と聞かれたら絶対2020年のTOP5に入ってくるのがこのブルーピリオド。漫画大賞の受賞で知った人も少なくないはず。
本日はその面白さについて独断と偏見に基づいて書いてみようと思います。
・一見矛盾する2つの要素
誰かに何かを伝えたいと思ったら伝えたいモノと伝え方が必要だ。美術受験でいえば情熱とテクニックの両方が必要になる。一見矛盾するその二つの要素のバランスをうまく取って作品を作る必要があるのが美術の面白い所だ。主人公はその両方について紆余曲折ありながら学んでいく。
補色は色を際立たせるとか、構図で印象は変わるだとか、主人公は持ち前の卒なくこなす能力でテクニックは徐々に身につけていくが、肝心の情熱の部分(書きたい絵を描く)についてはかなり葛藤がある。それもそのはず、主人公はただなんとなく人生を卒なくこなしてきた。身勝手に情熱を燃やす筋肉が衰えてしまっているのだ。それは我々、社会人でこそ同じかもしれない。普段の業務に追われ、自分の感情より卒がない事を優先している内に自分の本当の声なんて聞こえなくなってしまうのだ。
自分の嫌な所を隅々まで見たり、テクニックで情熱を隠すのではなく、情熱をテクニックで武装する事により主人公はそれらを乗り越えていく。そのきっかけはいずれも他人との会話であり、本音での対話が如何に重要なのか考させられる。
・柔らかい名言の数々
〜とは〜だという、よくある名言を堅い名言というのであれば、ここに出てくるのは柔らかい名言だ。「好きな事は趣味でいい、それは大人の発想だと思いますよ。誰に教わったか知りませんが」「あなたが青く見えるなら、りんごもウサギの体も青くていいんだよ」「好きな事をやるって、いつでも楽しいって意味じゃない」とかとか。まっすぐ自分の言葉で話している感じのセリフが多い気がする。これはこう!っと考えを押し付けるわけではないが、芯がある感じ。
あと大事だなっと思った事は、名言と言っても言葉にはなっていないが、美術(に限らず作品)には何かしらメッセージがあるという事。主人公が受験で描く絵なんかがそう。思想やメッセージを様々な葛藤で煮詰めてテクニックで体裁を整え、初めて作品はできる。作品を視聴する際、与えられる事に慣れすぎてすっかり傍観者になって批評してしまっている自分がいる事がある。恥ずかしい。このブルーピリオド で製作者側を垣間知った事で、ちょっとはどう考えて作られたのか考えてみれる気がする。
・憂鬱を抜けて
そもそもこのブルーピリオド、名前の由来は以下の通り。深いですね。。
ピカソの青の時代ってあるじゃないですか。
それが一番わかりやすいかなと思って採ったのと、
青春時代の意味と、あと1話が渋谷が青いみたいな話だったので、
それを掛けている感じです。
出典:インタビュー記事
青の時代でピカソは青色の冷たく暗い色調で、「死」「苦悩」「絶望」「貧困」「悲惨さ」「社会から見捨てられた人々」などをメランコリックに表現していました。ちなみに青の時代の次は薔薇色の時代。1話の渋谷が青いというのは、渋谷は賑やかさの象徴であり、一見学園生活は賑やかだがその虚しさ、自分の人生を生きていないという苦悩を表しているのかなと。すなわちブルーピリオドは何となく楽しい事をする青春時代の終わりであり、自分の人生を生きていないという虚しさを終わらせるための話でもあるというかなり前向きなタイトルなのだと思います。
・まとめ
一見矛盾する情熱とテクニックを駆使して芸大へ行くというストーリーながらその実はやりたい事ができない、青の時代の人へのファンファーレでもある作品です。作品を見るとはどういうことか知りたい人へもおすすめ。
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