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恐るべき公安👮‍♂️⑧-01監視テクノロジー「監視追跡のGPS追跡とNシステム」

恐るべき公安⑧-01監視テクノロジー「監視追跡のGPS追跡とNシステム」

悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。

青木理「日本の公安警察」

青木理「日本の公安警察」

青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動



道路に光る監視の目

発達するテクノロジー

営業マンの監視システム
システムはPHSが発する電波を使って所有者の居場所を把握するサービスを利用して、担当者によれば「地形などにもよるが、誤差は100メートル程度」。
複写機販売会社の本社内にあるコントロールルームでは、10人程度のオペレーターが顧客らからの電話を受けながら、画面を凝視し続ける。システムを開発した会社の担当者は「将来的には数メートル単位での位置把握が可能になる」と胸を張る。

●発達するテクノロジー

コンピューターの液晶画面に映し出された都心の地図。
ところどころに人の形をした影が浮かぶ。
東京都新宿区にある大手複写機販売会社の本社
画面上の人影は、機器メンテナンスや消耗部品交換などのために都内各地へと散っている同社のエンジニアだ。
時折人影の位置が動き、エンジニアの移動している様子が手に取るように分かる
同社幹部が言う。

このシステムで出先にいるエンジニアの現在位置と移動状況を1日中把握するんです。顧客から故障などの連絡が入った場合、画面を見ていちばん近いエンジニアを向かわせることができます。効率化や経費節減とサービス向上の両面で非常に効果的です

システムはPHSが発する電波を使って所有者の居場所を把握するサービスを利用して、担当者によれば「地形などにもよるが、誤差は100メートル程度」。
複写機販売会社の本社内にあるコントロールルームでは、
10人程度のオペレーターが顧客らからの電話を受けながら、画面を凝視し続ける


システムを開発した会社の担当者は「将来的には数メートル単位での位置把握が可能になる」と胸を張る。
だが、複写機販売会社幹部は苦笑する。
「そこまでやると人物上も問題がね・・・・・・。オペレーターには今も
「エンジニアの動向を必要以上に詮索するな」と言ってあるんです」


案内をしてくれた同社幹部と並び、画面に映る人影と、
椅子に座ってそれを見つめるオペレーターを眺めているうち、
形容しがたい不快感がわき上がってきた。
いくら効率的だろうと、いくら仕事中だろうと、1日の自分の移動状況がすべて監視されているなどというのは尋常なことではない。


テクノロジーの発達と裏腹に制限されるプライバシー。
こう表現してしまえば陳腐かもしれない。
だが、こんなシステムを公安警察が縦横無尽に駆使し始めたらどうなるか。

そんな不吉な予感もわき上がる。実を言えば、その芽はすでに出始めているのである。

青木理「日本の公安警察」

Nシステム

「Nシステム」は、警察庁を始めとする警察組織のどこからでも検索可能で、
調べようと思えば目的や時期を問わず、誰が所有する車両であろうと、
その移動状況を容易に把握できるということになる。
Nシステム問題に詳しい弁護士の桜井光政は不気味な予測を口にする。
「このシステムが増えていけば、国民全員が複写機会社のエンジニアと
同じ状況に置かれる可能性が出てくる」。
つまり、あらゆる移動が全て警察に監視されることになる。

●Nシステム

道路をまたぐように設置された数台のカメラ。
下を車両が通過するたびにレンズがうっすらと赤く瞬く
「自動車ナンバー自動読み取りシステム」。
通称「Nシステム」と呼ばれる装置だ

全国の幹線道路や高速道路に設置され、通行した全車両のナンバーデータを
無人カメラで記録する移動車両監視装置
である。
読み取られた情報は通信回線を通じ、すべてが警察のコンピューターに送られている。

Nシステムの反対運動に取り組んでいる交通ジャーナリスト浜島望は言う。

「登録された車両が通過するとコンピューターが反応する。
蓄積されたデータは後からの検索も可能で、ナンバーを入力すれば、
目的の車両がいつ、どこに移動したかが瞬時に分かるシステムです」


Nシステムをめぐっては1998年3月、
東京や横浜の市民が「肖像権を侵す」「プライパシーの侵害」などと訴え、
国を相手に損害賠償請求訴訟
を起こしている。
この裁判の中システムの概要の一部を明らかにしている。
国側の説明はこうだ。

本件システムの仕組みは、道路上に設置した端末装置のカメラで通過する車両をとらえ、そこで得られた情報を端末装置に内蔵されたコンピューターで高速処理し、ナンバープレートの文字データを抽出し、
これを通信回線で各都道府県警察の警察本部に設置された中央装置に送り、
中央装置のコンピューターが当該データとあらかじめ登録されている
手配車両のデータとを自動的に照合する。
読み取ったデータは、犯罪の発生から警察による事件の認知、
あるいは容疑車両等の割り出しまでに時間がかかる場合があるため、
その後一定期間保存され、捜査上必要がある場合には、
これを検索することができる。
また、データは当該都道府県を管轄する管区警察局に設置されたサーバにも送信されて、保存されており他の都道府県警察の管轄区域内に設置された端末装置によって、読み取ったナンバーデータを検索することができる


つまり記録されたデータは、警察庁を始めとする警察組織のどこからでも検索可能で、調べようと思えば目的や時期を問わず、誰が所有する車両であろうと、
その移動状況を容易に把握できる
ということになる。

Nシステム問題に詳しい弁護士の桜井光政は不気味な予測を口にする。
このシステムが増えていけば、国民全員が複写機会社のエンジニアと
同じ状況に置かれる可能性が出てくる
」――。

青木理「日本の公安警察」

張り巡らされる監視の目

公安警察の協力者獲得作業における「基礎調査」のケースを想定するだけでも、
尾行という発覚の恐れのある手段を講ずる前段階で、車両に関しては対象者の移動場所、移動時間や生活のリズムまでをラフな情報として把握できる。
何よりも過去の蓄積データを事後に検索できるという利点は大きい。
つまり、移動パターンや行動などを全て監視・予測することが可能になってくる。

●張り巡らされる監視の目

現在、Nシステムは全国で何ヵ所に設置されているのだろうか。
運用する警察庁側は「86年から整備され、97年末段階で幹線道路を中心に約400ヵ所」と説明しているが、設置場所などの詳細は「捜査上の秘密」を根拠に明らかにしていない

一方、市民団体などの調査によると、1999年8月末現在で東京の94ヵ所、
大阪の46ヵ所を筆頭に全国で566ヵ所に設置され、
今も毎年約50台ものペースで増え続けているという。

費用は1台で約1億円。市民団体側作成による「Nシステムマップ」を眺めると、
その監視の眼は日本地図上に網の目のように張り巡らされ、
特に東京や大阪といった大都市ではカメラの下を通過しないで
長距離の移動をするのがほぼ困難な状況
だ。

警察はNシステム以外にも数多くの情報網を展開しており、
公安警察ではそれが特に顕著だという事実は、本書の中で紹介してきた。
これに「精度の高い情報網の1つ」としてNシステムが加わったとするならば、
その効果の大きさを推測するのはたやすい。

公安警察の協力者獲得作業における「基礎調査」のケースを想定するだけでも、
尾行という発覚の恐れのある手段を講ずる前段階で、
車両に関しては対象者の移動場所、移動時間や生活のリズムまでを
ラフな情報として把握できる。

何よりも過去の蓄積データを事後に検索できるという利点は大きい。
もちろん建て前上、システムを管理するのは警備局ではなく、
警察庁側は「保存されているナンバーデータは、
一定期間経過後は逐次消去される仕組みとなっている。
保存期間中であっても、一定の重要犯罪の捜査に必要な場合以外には使用しない
こととするとともに、検索用端末装置を操作できる職員を限定するなど
厳格な管理措置が講じられている」
と反論する

だが法的な拘束力があるわけではなく、使用目的をチェックする術もない

青木理「日本の公安警察」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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