見出し画像

恐るべき公安👮‍♂️③-02諜報工作の手口「協力者という名のスパイ」

恐るべき公安③-02諜報工作の手口「協力者という名のスパイ」

悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。

青木理「日本の公安警察」

青木理「日本の公安警察」

青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動



協力者という名のスパイ

工作

"王道"とも言えるのが、対象団体内部に「協力者」と呼ばれるスパイを
獲得することによって情報を引き出す作業の「工作」である。

協力者設定作業の基本

●工作

公安警察において最も代表的で現在も広範に行われている情報収集活動であり、その"王道"とも言えるのが、対象団体内部に「協力者」と呼ばれるスパイを獲得することによって情報を引き出す作業である。
『警備警察全書』はこれを「工作」として解説を加えている。

「協力者(情報提供者)をつかみ、(略)情報を収集するのも重要な手法であり、これを(略)協力者工作として重要視している」

手元に1通の内部文書がある。
警察庁警備局が第1線の公安警察官に対する講習用として作成した資料の1つで、
「協力者設定作業の基本」と題されている(次ページ図参照)。
これまで外部に漏れ出たことのない貴重な資料だが、
これに従って「協力者獲得」の手法を見ていこう。

青木理「日本の公安警察」

スパイ候補の「基礎調査」

「基礎調査」では
対象となる人物の本籍、住所、生年月日などの基本情報はもちろんのこと、
性格、前科、趣味晴好、経済状況、家庭環境、親族や知人との交友関係など、
協力者工作の対象としてふさわしいかどうかのありとあらゆるデータが収集される。「企業の方向性を変えたり、極秘情報を得るために」経営者や役員など、対象者の選定時には団体内で中枢情報を握っている特定の人物を戦略的に狙うことも多い。「反共思想を持つ嫌味な上司になれるタイプか?」など、獲得した一般協力者を「他のスパイと共謀して」団体中枢に近いところまで組織内で出世させ、育て上げる手法もある。
マイナンバーカードに保険証などを統合したいのは、基礎調査情報を簡単に一括で手に入れて「弱みなどを探るため」である。

調査着眼点と調査項目

●スパイ候補の「基礎調査」

最初の作業が対象団体に対する広範な探索による「対象の掘り起こし」である。
どういう人物を協力者に仕立て上げるか。
後述するようにきっかけはさまざまだが、対象選定時には
「情報活動の対象者について必要な端緒、条件となるものや検討資料となるものを広も収集する活動」
と位置づけられる「基礎調査」と呼ばれる作業が重視される。

基礎調査は公安警察にとって
「全ての情報活動の基盤・出発点」とされ、
当然、協力者母作業でも最重要視される項目である。

ここで戸籍などの関連資料の閲覧、聞き込みや尾行、張り込みなどの手法を駆使し、
対象となる人物の本籍、住所、生年月日などの基本情報はもちろんのこと、
性格、前科、趣味晴好、経済状況、家庭環境、親族や知人との交友関係など、
協力者工作の対象としてふさわしいかどうか
のありとあらゆるデータが収集される(次ページ表参照)。

基礎調査によって協力者工作の対象の選定が行われ、次の項目に従って検討作業が行われる。

(1)必要性=対象者の地位や活動状況、性格などから対象団体の幹部になりうるか
(2)適格性=過去に窃盗などを犯していたり、性格に問題はないか
(3)安全性=対象者に保秘意識があるか
(4)可能性=接触し、獲得できる十分な可能性があるか


この際には
「多面的に」
「先入観にとらわれない」
「客観的に」
「好ましくない事実を軽視しない」

――などの留意点が挙げられ、段取り構想である「計画」に進む。

対象者の選定時には団体内で中枢情報を握っている特定の人物戦略的に狙うことも多い。
団体の中枢情報は一部の幹部からしか入手できず、
幹部の中から獲得の可能性のある人物をリストアップし、生活・行動形態や趣味などを調べ上げる。

その後の接触では、例えば行きつけの飲み屋などで偶然を装って隣に座ったり、
時には綿密な基礎調査によって弱みを探り出して接近を図ることもある。

これを裏付けるのが1950年代末に発覚した
福島県警作成の公安警察文書である。同文書にこんな1節がある。

「色々な形で関連する人と場の中より特に人的結びつきの強い対象を選定し、
弱点を抽出し、または取り組み得る条件があればこれを最大限に活用して条件を作為する」

一方で、獲得した一般協力者を団体中枢に近いところまで組織内で出世させ、
育て上げる手法もある


公安警察側が女性警官を使って工作に当たることはないとされる。
また原則として未成者、女性は工作対象から外しているというが、
これが建て前に過ぎない
ことは、後に述べる。

青木理「日本の公安警察」

接触から説得へ

第3者を介在させたり、時には脅迫に近い手段が講ぜられ、スパイを獲得する。
自民党議員のように、金や欲望のために、簡単に犯罪に手を犯罪傾向が強い方が操りやすいため、スピード違反のもみ消しなど警察職務を利用して接近をはかることも多い。公安は、ありとあらゆる自治体や企業や自治会などを自由自在にコントロールできるように、スパイを張り巡らせて、第3者には親成や近所の住人など担当者の知人、あるいはすでに協力者となっている人物を介在させることもある。
また、スパイ獲得は「統一協会の正体隠し伝道」と全く同じように、身分を隠して接近して、事実を積み重ねて、後戻りできないように、ハメていく。その際に有効なのは、"既成事実の積み重ね"だという。
たとえ情報を得ていなくても、接触する過程でさまざまな理由づけをして金銭を渡し、公刊されている資料であっても受け取っておく。
その積み重ねが「協力の実績」という既成事実となり、たとえ説得時に拒否したくても、対象者側は後戻りできない深みへと誘われている。

●接触から説得へ

基礎調査によって抽出された結果に検討を加えつつ工作対象が選定され
計画作業の中で方針や手段、方法、要員、期間などが決定されると、
いよいよ対象者に対する「接触」(面接)、さらに「協力要請」(説得)が行われる。
一連の工作作業の中で、接触から説得に至る過程こそがもっとも困難で、
公安警察官の能力が試される局面ともいえる。
ここに至ると事前の検討会が数を増し、あらゆる手法についての検討が加えられる。

例えば先の図にあるように第3者を介在させたり、
時には脅迫に近い手段が講ぜられ
スピード違反のもみ消しなど警察職務を利用して接近をはかる。
第3者には親成や近所の住人など担当者の知人
あるいはすでに協力者となっている人物を介在させることもある。

だが最も難しいのは身分を秘匿して接触した場合に、
自らの身分をどの段階で明かすか、であるという。
ある公安警察官からこんな話を聞いたことがある。
「多くの捜査員がなかなか明かしたがらない。しかし明かした上で対象者を説き伏せなけば情報はとれない。
早く明かしすぎて逃げられてしまうのでは話にならないが」

有効なのは、"既成事実の積み重ね"だという。
たとえ情報を得ていなくても、
接触する過程でさまざまな理由づけをして金銭を渡し
公刊されている資料であっても受け取っておく。
その積み重ねが「協力の実績」という既成事実となり、
たとえ説得時に拒否したくても
対象者側は後戻りできない深みへと誘われている
対象者は深みに気づきながらも戻らないーそんな工作が理想とされる。

もちろん、説得して拒否されるのは当然のことだ。
「工作は拒否されることを前提とせよ」
「真の工作は拒否されたときに始まる」
いずれも公安警察官の基本的な教え
である。

説得は、(1)親交の度合い(2)信頼感(3)時期場所(4)手段方法(5)安全性(6)可能性――によって評価判断がなされる。
例えば親交の度合い。
既述のとおり理想的には暗黙のうちに対象者が工作者側の意図、地位に感づき、
それでいて接触を拒まないことが望ましいし、そう仕向けて拒めないように持っていくのが理想的
また十分に恩義、信頼感を与えることも重要だ。
危険と隣り合わせの手法でもあるが、一般的な協力者候補に対しては自宅に招待し、妻の料理を食べさせ、工作員側の生活臭をさらし、対象者に安心感を与えるのも有効とされる。

青木理「日本の公安警察」

獲得と運営

協力者が組織内での地位を上げていくよう全力が尽くされる。
地位が上がることはすなわち、情報の重要度、及び確度が向上することを意味するからである。出世できるように、他のスパイも組み合わせて、裏切り者が上手く重要情報に触れられる位置に登れるようサポートする。
また、接触は慎重を期し、ある公安警察官は接触のたびに場所を変え、1度接触したらその場で次の接触場所を決め、次回接触時まで一切の連絡を取らないという。
接触場所の確保だけのためにアパートを借りることもある。
ホテルや旅館も有力な接触場所だ。バレないよう細心の注意が払わられる。

●獲得と運営

説得に成功し、「獲得」された協力者は、
いよいよ恒常的な情報提供者として「運営」されることになる。
公安警察にとっては協力者の獲得が目的ではなく、あくまでも「運営」して
情報提供を受けることが本旨である以上、対象者の特性や精神状態に対する注意深いケアが行われ協力者が組織内での地位を上げていくよう全力が尽くされる。
地位が上がることはすなわち、情報の重要度、及び確度が向上することを意味するからである。

運営上で最も気遣わねばならないのが接触場所だ。
ある公安警察官は接触のたびに場所を変え、
1度接触したらその場で次の接触場所を決め、
次回接触時まで一切の連絡を取らないという。
接触場所の確保だけのためにアパートを借りることもある
ホテルや旅館も有力な接触場所だ。
協力者が組織を裏切り命を懸けている以上、接触が発覚することは協力者の死をも意味し、公安警察にとっては対象団体側による協力者の摘発と暴露を
最も恐れねばならない
スパイは連絡から発覚する――これも公安警察官の基本認識とされる。

青木理「日本の公安警察」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


いいなと思ったら応援しよう!