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統一協会の手口①-05マインドコントロール・騙し編「①布教ノウハウに似た振り込め詐欺とマルチ①」

統一協会の手口①-05マインドコントロール・騙し編「①布教ノウハウに似た振り込め詐欺とマルチ①」

悪名高い統一協会(世界平和統一家庭連合)の
「マインドコントロール」や
「騙し」の手口を明かしていきます。
ここでは、主に”勧誘”や”騙しの手口”を見ていきます。


旧統一協会に似た「振り込め詐欺の手口」

旧統一教会の布教ノウハウは「振り込め詐欺」に類似

システマティックな詐欺の手口
個別対応のマニュアルの存在
詐欺犯は、相手がダマせる人物かどうかを、少額を払わせることで見極める
詐欺での王道パターンとして、相手の知らない知識で思考を止め、
焦らせるという手がある。
よくわからない言葉で思考が止まると、詐欺犯は一気に畳みかけてくる。

私は長く講師を務めてきましたが、教団ではそれぞれの役割を分担させ、
それに専念させます。そして、信者にする効率を上げてきます。

これまで、さまざまな詐欺事件を見てきて、振り込め詐欺組織の実態が、どうしても旧統一教会のシステマティックな伝道方法と重なって見えてしまうのです。

【振り込め詐欺の場合】
たとえば、振り込め詐欺組織では、
全体を統括する「指南役(統括役)」がいて、
詐欺の電話をかける「かけ子」がおり、
さらに現金を被害者宅にとりに行く「受け子」がいます。
いまはキャッシュカードをダマしとることも多いので、
ATM(現金自動預け払い機)からお金を引き出す「出し子」もいます。
それぞれがしっかりその役割分担を果たすことで、
振り込め詐欺組織は多額のお金を集めることができます。

「指南役(統括役)」「かけ子」「受け子」「出し子」

【統一協会の勧誘の場合】
まさにそれが、教団でいえば、
タワー長が「指南役」、
霊能者(占い師)が「かけ子」、
連れ込み役が「受け子」とい
った役割分担に似ているわけです。

「タワー長(指南役)」「霊能者(かけ子)」「連れ込み役(受け子)」

【個別対応のマニュアルの存在】
いま、深刻な被害を引き起こしている架空請求詐欺では、
50、60代の人たちが被害にあい、なかには億単位のお金をとられる人もいます。ダマシのパターンは同じで、「個別対応のマニュアルの存在」がうかがわれます。

2021年1月、1億6600万円の架空請求詐欺の被害が出ました。
被害者は札幌市の50代男性で、北海道内では過去最高額ということです。
振り込んだ回数は、じつに117回(6~10月)にものぼり、
全財産を失ってしまったといいます。
「ついに、これだけの金額になってしまったのか」
詐欺犯への憤りとともに、これが報道を聞いたときの率直な思いでした。
というのも、2020年10月にも、同じ札幌市で50代男性が
約1億900万円の架空請求の被害にあっていたからです。
これは、たんなる偶然なのか、この地域の人たちを狙ったものなのか、
それは定かではありませんが、同系統の詐欺グループが
相手の資産を把握したうえで、前年以上のお金の詐取を
もくろんでいたとしてもおかしくありません。

きっかけは2021年6月、60代男性のもとに届いた「ご利用料金の支払い確認がとれておりません」とのショートメッセージです。
「NTTファイナンスサポートセンター」
なる組織に電話連絡するように促されます(「NTTファイナンス」は実在企業)。
男性が電話をかけると、「未納料金」を払うように言われます。
こうした手口の場合、最初に払わせる金額は、
たいてい数万円から数十万円と少額です。

【騙せる相手か?見極める手口】
詐欺犯は、相手がダマせる人物かどうかを、
この金額を払わせることで見きわめます。
し、ここでお金を払ってしまうと、
詐欺のターゲットと見なされてしまいます。

そして、次々にさまざまな役割を演じた人物から詐欺の電話がかかり、
多額の被害になってしまいます。

最初に10万円ほどのお金を数回払うと、男性のもとには
「日本個人データ保護協会」
「日本ネットワークセキュリティ協会」
「神奈川県警察」
などを名乗る電話がかかります。
これらの協会や警察はすべて実在するものです。
疑ってネット検索で調べると正規サイトが出てくるため、
信じてしまう人もいるかもしれません。

【相手の知らない知識で思考を止めて焦らせる手口】
詐欺での王道パターンとして、相手の知らない知識で思考を止め、
焦らせるという手があります。

60代男性は、「あなたの端末からランサムウェアが使われている」
と言われます。もしかすると、これを聞いた多くの人は、
「ランサム? それ、何?」となったことでしょう。
この時点で、「すでに罠にハマっている」といえます。
【よくわからない言葉で思考が止まると、
詐欺犯は一気に畳みかけてきます。】

被害者は117回も詐欺犯の指示に従ってお金を振り込んでいるので、
事実も経過もかなり曖昧になっていると思います。
そこで、私のこれまでの架空請求業者などへの取材経験から、
男性は次のような話を持ちかけられたのではないかと想定したかたちで話を進めます。読者のみなさんは、ぜひとも、このパターンで話を持ちかけられたら、詐欺だと思ってください。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

「あなたの端末から不正プログラムが発信されている」
人のやさしさ、思いやりにつけ入って、
マインドコントロールしながらお金をダマしとる架空請求詐欺の恐ろしさ

詐欺犯の多くは、ネット関連の社員などを騙り
「ランサムウェア」をわかりやすく説明してきます。

こんな調子です。
「難しい言葉でわからないですよね。ランサムウェアの『ランサム』は、
『身の代金』のことです。
サイバー犯罪者たちは、相手のパソコンやスマホなどに
不正なプログラムを感染させて使えなくしたところで、
それをもとに戻すための費用(身の代金)を要求するのです」

被害者が内容を少し理解したところで、
「よく聞いてほしいのですが、その不正プログラムが、
あなたの端末から発信されていて数十人の被害者が出てしまい、
多額の被害金を発生させているのです」
といった話をします。

知らぬ間に「自分の端末から不正プログラムが出て被害を起こしている」
との言葉に、おそらく60代男性は、
人さまに迷惑をかけてしまったとパニック状態だった
に違いありません。
気が動転しているところに、今後被害を発生させないために
「サイバー保険に加入しなければならない」と言われれば、
お金を払うのではないでしょうか。

しかし、架空の請求ですので、いくらでも詐欺犯はウソをついてきます。
そのひとつに、「被害者のひとりが自殺未遂をした」があります。
それを聞いた側は、「誰かを自殺するまでに追いやってしまった」
と自責の念を抱きます。心根がやさしい人ほど、
「自分のせいで……」と考えます。
詐欺犯は、そのタイミングを見計らって、慰謝料などの話を持ちかけます。
申し訳ない気持ちでいっぱいの被害者は、
迷わずお金を振り込んでしまったに違いありません。

人のやさしさ、思いやりにつけ入って、
マインドコントロールしながらお金をダマしとる架空請求詐欺が、
どれだけ卑劣で、許せない手口かがわかると思います。

2020年10月から12月にかけて1億900万円ほどの被害にあった50代男性も、
「NTTファイナンス」を騙るメッセージをきっかけにして、
同じように「サイバー保険」や「損害賠償」の名目で、
次々にお金をダマしとられています。
50、60代の中年層で、ネット事情にあまりくわしくない人は、
とくに気をつける必要があります。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

入院患者もターゲットにする卑劣さ

たいがい被害者が家族や知人など第三者に相談することで
「それはおかしい」と気づき、被害が止まるもの。
なんと病院に入院中に架空請求の被害にあっていた。
「なぜ、相談しにくい環境になっていたか?」
責任感の強い人ほど、この架空請求詐欺でダマされやすいともいえる

とはいえ、1億6000万円以上もダマされた男性は、
「なぜ、100回以上も振り込んだのだろうか?」
という疑問を抱く方も多いでしょう。

ここには、詐欺犯の「巧みな言い回し」があるからです。
詐欺被害は、たいがい被害者が家族や知人など第三者に相談することで
「それはおかしい」と気づき、被害が止まるものです。

今回、それができなかったということは、
男性の周囲には相談できる環境がなかった。
あるいは、詐欺犯から周囲に言わないように口止めされていた。
私は最初、そう考えていところが、その後、驚くべき意外な事実がわかりました。

なんと、被害を受けた男性は、病院に入院中に架空請求の被害にあっていたというのです。病室には家族、友人、知人がいないため、相談しにくい状況だったのではないかとの指摘もありますが、これには少々違和感を覚えます。
なぜなら、病院であれば、健康状態を気にかける看護師などの医療スタッフもおり、相談しやすい環境だったはずだからです。

そこで考えるべきは、「なぜ、相談しにくい環境になっていたか?」です。
いま、銀行の窓口や街角のATM、コンビニなどでは詐欺被害が多発しています。そのため、警戒も徹底されており、被害を防いだ事例も多くあります。
しかし、まさか病院内で詐欺が起こるとは誰も思わず、
院内のATMなどへの注意、警戒が手薄だったのではないかと考えています。
この手の架空請求では、被害者に電話をして振り込みを指示しますが、それが容易にできたことが、今回の被害に大きくつながったようにも思えます。
もしかすると、ATMのそばに、被害者の男性が携帯電話で話していることを不審に思った人もいるかもしれませんが、まさか病院内で詐欺が発生しているとは思わず、素通りしたのでないでしょうか。
先入観とは恐ろしいものです。いまやスマホや携帯を持ってどこにでも行けますし、誰もがスマホを持っている時代です。詐欺は必ずしも家のなかだけで起こるのではなく、どの場所でも起こりうるのです。
もちろん、病院内でも詐欺は起こります。二度とこうした多額の被害を生み出さないために、よもやの場所でも詐欺は起きることを心しておく必要があります。
詐欺被害に気づいていない状況では、目の前で起きているトラブルは自分が引き起こしたことだと思い込まされていますので、なんとか自分で解決しようと考えてしまいがちです。
責任感の強い人ほど、この架空請求詐欺でダマされやすいともいえるでしょう。
とはいえ、困ったときには、誰かに相談したい思いに駆られるものです。

「相談未満」の漏れ聞こえてきた小さな声を拾ってあげることで、
被害を防ぐ道が生まれてきます。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

「バレちゃった?」の裏に隠された落とし穴「詐欺がバレた時の対応マニュアル」

教団には「個別対応マニュアル」がある。
「詐欺がバレた時の対応マニュアル」もある。
【マニュアル①偵察&財産把握】
【マニュアル②第1段攻撃「確認」】
【マニュアル③通報を減らすためのバレたマニュアル】
バレた告白の真意は、警察への通報を1件でも減らすテクニックだった。

教団には「個別対応マニュアル」があると話しましたが、
私が入手した「詐欺電話をかける際のマニュアル」にも、
次のようなものが用意されています。

もうダメだ(詐欺がバレちゃってるよね)。
ダマすのは無理だから、あきらめたよ。
でも、どこから詐欺ってわかっていたの?」

と言うのです。
詐欺電話をかけた最後に、
犯人はわざわざこのような言葉を相手に投げかけるのです。

なんのためにこの言葉を話すのか、わかるでしょうか
入手先を特定されないため、マニュアル内の言い回し、
文言を一部変えていますので、ご了承ください。

【マニュアル①偵察&財産把握】
振り込め詐欺では、
まずアポ電(アポイント電話)といわれる事前電話をかけ、
「相手がダマしやすい人なのか?」
「資産はどれくらいあるのか?」
「家族と同居していないか?」
などを把握してきます。

【マニュアル②第1段攻撃「確認」】
そのうえで、お金をダマしとるための、
本格的な詐欺電話をかけます。

振り込め詐欺では、入手した名簿をもとに孫の名前を騙り、
電話をかけます。
「オレ、ヒロシだけど。おばあちゃん、元気?」
「ああ、元気だよ」
「いま、ひとり?」
「そうだよ」
「ああ」
「わかったよ」
「いま、新型コロナが流行っているから、なかなか外に出かけられないよね」
「じつは、話したいことがあるんだけど。またかけるから、相談に乗ってね」
そう言って、ものの数分で電話を切ります。

このアポ電により、
「高齢者がひとりでいること」
「孫のヒロシであると信じている」
「相談に乗ってくれるやさしいおばあちゃん」
であることを把握します。
これにより、詐欺のターゲットにされてしまい、
次に詐欺を実行するための本電話がかかってくることになります。

【マニュアル③通報を減らすためのバレたマニュアル】
いま、こうしたアポ電は数多くかかってきていますが、
先の文言は、こうした「通報を一件でも減らす目的」があるのです。

詐欺グループは、入手した名簿を見ながら、
特定の地域に狙いを絞り、次々に電話をかけます。
そのとき、一帯で不審電話の通報が多発すると、
その地域への警察による警戒が強まり、詐欺がしにくくなってしまいます

それゆえ、詐欺をする側としては、
少しでも通報を減らしたいと思っているので、
詐欺、バレちゃった。もうダメだ」といった話をしてくるのです。
マニュアルをもとに話すことで、次のような話の展開になります。

「もうダメだ。詐欺はバレてるよね?」
「ああ」
「だよね。お母さんをダマすのは無理だとわかったよ。ハハハ」
こちらが半笑いで話すことで、
詐欺の電話を受けていた女性を、笑わせるように仕向けます。
「でも、どこらへんで詐欺だと気づいたの?」
「途中でお金の話が出たでしょ。それに、息子の声とちょっと違うかなと」
女性がどこで気づいたかを、得意げな口ぶりで説明をさせます。
「なるほど。さすがだね。これじゃ、お母さんは、
絶対に詐欺に引っかからないね」
「もちろん」
「次に電話をかけてもダメそうなんで、詐欺の名簿から消しておくよ
そう言って、詐欺師は電話を切ります。

こうしたやりとりをすると、多くの人は、
よしよし。詐欺師を撃退してやった。自分は大丈夫」という満足感から、
警察への通報をしなくなりがち
なのです。これが狙いです。

詐欺の話をしても、言葉が相手に刺さらず、疑って聞いている。
数多くの詐欺電話をかけている人間からすれば、相手の口ぶりから、
それがすぐにわかります

しかし、ここでブチッと電話を切ったのでは、
警察に通報される可能性は高くなります。

そこで、このような話の展開に持っていくのです。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

偽警察官まで用意している最近の組織

もはや息子が同居していても容赦なく強盗を行っており、
家族が同居しているから安心というわけではありません。
キャッシュカードをダマしとる手口にも、虚を突く手口が見られます。
【マニュアル①還付金の電話をかける】
【マニュアル②虚を突いて、偶然を装って予定変更】
【マニュアル①警察のフリした電話をかける】
【マニュアル②虚を突いて、偶然を装って予定変更】

最近の犯罪組織は、詐欺を行うだけでなく、強盗などの手段も講じてきています。
2020年12月末、警察を騙った男らが、警察手帳のようなものを見せ、
家宅捜査を名目に家に入り込み、家族が拘束され、
1200万円が奪われる事件が発生しています。
まさに、これは虚を突いて行われた犯行だといえます。

今回の事件では、事前に資産などを把握するためにかける
犯罪の予備電話(アポ電)があったかどうかははっきりしていませんが、
用意周到に金庫を開けさせるなど、家にお金がある状況が何かしらの方法で
把握されていたのは間違いないで
しょう。

このとき、犯人は5人組で押し入っています。
高齢者だけが住む家を狙う点検業者を装った「点検強盗」では
通常2人組で押し入りますが、5人でやってきて、
70代の高齢夫婦と40代の息子の3人を拘束しています。
大勢で来ているとなれば、家族の人数も把握したうえで、
この人数で犯行におよんだと見られます。

もはや息子が同居していても容赦なく強盗を行っており、
家族が同居しているから安心というわけではありません。

キャッシュカードをダマしとる手口にも、虚を突く手口が見られます。
【マニュアル①還付金の電話をかける】
高齢の女性宅に、役所を騙り、
「払いすぎた保険料があります」と電話をかけて、
「振り込みの手続きのために、キャッシュカードを郵送してください」
と言ってきました。
【マニュアル②虚を突いて、偶然を装って予定変更】
そして、女性が郵送の準備をしようとすると、再び電話があり、
「偶然、近くに銀行員がいましたので、カードを渡してください」
と突然言うのです。
そして、偽の銀行員が家に来て、カードをダマしとっていきます。

これは、「あなたのキャッシュカードで不正なお金の引き出しがあった」
と不安にさせたうえで、「警察署に来て被害届を出してください
と電話をかける手口にも見られます。
【マニュアル①警察のフリした電話をかける】
「警察に来てほしい」と電話で言われ、
相手が本当の警察署員と信じている話の途中で、
【マニュアル②虚を突いて、偶然を装って予定変更】
急に「巡回している警察官が家に行きます」と話を切り替え、
不意打ちを食らわせるかたちでカードを詐取するという事例もあります。

これは非常に巧妙な手口で、人は突然の出来事には弱いものです。
偽の警察官は、ただでさえ
「警察」
「カードによる不正引き出し」
と言われ、パニックになっているところに、
いきなり話の流れを変えるのです。
こうなると、冷静になれずに誘導されやすくなります。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

「息子に相談する」と言われた場合の対応マニュアル

詐欺組織内には「突然の状況をつくりだしてパニックを起こさせて、ダマす」
といった何かしらの「成功マニュアル」を使っている。
犯罪者は、あらゆる手段で、私たちのお金を狙ってきます。
しかも、マニュアル化しながらお金をとっていきます。
しかし、裏を返せば、マニュアル化されたダマシの手口を知ることで、
私たちは身を守ることもできるわけ
です。

こうした虚を突く手口が組織的犯罪に頻繁に見られますので、
詐欺組織内には「突然の状況をつくりだしてパニックを起こさせて、ダマす」
といった何かしらの「成功マニュアル」を使っていると考えられます。

「息子に相談したい」
と詐欺電話をかけた先の高齢の母親に言われたときにはどうするのでしょうか。

これも、入手した詐欺マニュアルに載っています
「じつは、私もそうしたいと思っていたんですよ」
と高齢の母親の話に乗ったうえで、
「とても大事なことですので、こちらからも息子さんに
お電話をしたいと思います。
息子さんのお電話番号を教えていただいてよろしいでしょうか?」
と切り返します。

番号を聞き出すと、突然、偽警察官は、
「では、息子さんに電話をかけますね」
と息子に電話をかけ始めます。
もちろん、かけたふりです。

母親と電話をつないだままの状態にして
こちらの声が聞こえるように、
「はい。はい。そうですか。わかりました。
お母さまにもお伝えしておきますね。
お忙しいなか、ありがとうございました」
と話します。
そして、通話が終わった様子で、再び母親の電話に出ます。

「息子さんは、かなりお仕事で忙しいようですね。
くわしいことはお母さんにお聞きして、
手続きを進めるように、とのことでした」
母親は息子の了解がとれたならと思い、
偽の警察官の話に乗ってしまう
ことになります。

犯罪者は、あらゆる手段で、私たちのお金を狙ってきます。
どの手口を見ても、高齢者の心をうまくコントロールして
ダマしていることがわかります。
しかも、マニュアル化しながらお金をとっていきます。
しかし、裏を返せば、マニュアル化されたダマシの手口を知ることで、
私たちは身を守ることもできるわけです。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

旧統一協会に似た「マルチの手口①」

私もダマされた旧統一教会の「正体隠し」工作

正体を隠して近づく。勧誘の目的を告げずに誘う。
これは悪質商法の特徴です。

正体を隠して近づく。勧誘の目的を告げずに誘う。
これは悪質商法の特徴
です。

私も旧統一教会に誘われるときには
「バレーボールをしよう」
「自己啓発サークル」
「ビデオセンター」

などと教団の正体を隠されたまま勧誘を受けました。

安倍元総理がメッセージを寄せた
UPF (天宙平和連合)や
世界平和女性連合、
世界平和連合、
CARP (Collegiate Association for the Research of the Principle =原理研)、
ピースロード
など、
これらの名称を一見しただけでは、これが旧統一教会の信者で
構成された団体であるとは気づかないのではないでしょうか。
実際に、一部の政治家も、ここが教団の関連団体とは知らずに
祝電やメッセージを送っています。

旧統一教会は、2015年に「世界平和統一家庭連合」に名称を変えました。
教団側は正体隠しの名称変更ではないと言いますが、
もともとは「世界基督教統一神霊教会」です。

この「基督教」が「平和」になり、
「神霊教会」が「家庭連合」になっています。
宗教色を消したかたちにしているといえます

実際に近年、ボランティア、募金などを通じ、
同連合や関連団体が各自治体の活動にも参画していることが発覚し、
続々と登録が取り消しになっています。
また、一般向けにチャリティーバザーも開催していますが、
そこがよもや過去に霊感商法をしていた旧統一教会と気づかずに
足を運んでお金を出した人もいるのではないでしょうか。
これらのことから、多くの人の目から見れば、
旧統一教会の正体を隠されて近づいてこられたように感じてしまっても
しかたがない現実があります。

しかし、これを行っているのは旧統一教会だけではありません。
実際にはびこっている、正体隠しを行う悪質集団の手口を明らかにします。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

マルチ業者からも問題視された悪質な勧誘手口

マルチ商法では、会員になった人が新

マルチ商法では、会員になった人が新たな人物を誘い入れることで、
ネズミ算式に販売網を広げていきます。

とくに社会経験が少ない若者がダマされやすく
「誰でも稼げる」
「オーナーになって夢をかなえよう」
「みんな借金してから始めている」
と言われ、クレジットカードでお金を借りさせられて
契約させられるという、問題のあるケースも報告されています。

ある元マルチ商法の販売グループが行っていた手法は、
それ以上にひどいものでした。

ここで“元マルチ”といったのには理由があります。
このグループは、あまりにも悪質な勧誘だったために、
加入していたマルチ商法の本体から改善通告を受け、
最終的にこのマルチ業者から抜け出ることになったからです。

そして、いまもこのグループは独自に進化しながら
マルチ商法的な動きをし続けています。

グループに引き込まれた男性の証言から、
そのマインドコントロールしていく手口を解き明かします。

30代男性Aは約4年間、この販売グループに入っていました。
5年ほど前に参加した街コンのイベントに参加したことがきっかけでした。
そこで、ひとりで参加していた30代女性と出会います

「あとでわかったことですが、この女性は勧誘をする目的で
街コンに入り込んでいまし
た」
当時の彼は、そのような彼女の目的は知りませんので、
気軽にLINEを連絡します。

2カ月後、ボードゲームのイベントに誘われます。
場所は都内のタワーマンションでした。
このとき、彼は「イベント参加者に危なそうな人はいないか?」と思い、
注意深く見てみたそうですが、
みんな感じのいい人ばかり」だったので、
警戒心を解いて参加してしまいます。

私もさまざまなイベントに誘われた経験がありますが、
人の性格はいろいろで、ひとりぐらいは嫌いな人物はいるものです。
そうした人がひとりもおらず、みんながいい人というのは、
思想が一致している可能性があり、逆に危険
なのです。

このグループの勧誘方法は多岐にわたります。
彼は街コンでしたが、20代男性Bは友人から
合コンに来ないか」と知人に誘われて行くと、
それはタワーマンションで行われた合コンイベントで、
このグループに入るきっかけになっています。

30代男性Cは、フットサルに誘われたことがきっかけで入会しています。
あとになってわかったのは、この合コンもフットサルも、
すべてこのグループが勧誘するために用意した場
でした。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

グループに共感を示すと「報連相」を求められる

ゲームを通じて少しずつその思想に染めていこうとしていたのです。
もうひとつの勧誘テクニックが使われています。
それは、ひとつのイベントが終わったあとに、次の催しに誘う手です。
【報連相をさせる真意】
いまにして思えば、報連相をさせることで、
私の個人情報を把握し、勧誘を有利に進めようとしていた
のでしょうね」

男性Aは、10人くらいの人たちとカードゲームや
キャッシュフローゲームをしました。
「キャッシュフローゲームをさせながら、
自分たちの思想に染めるのも、目的のひとつです」
と彼は話します。

人生ゲームのように、サイコロを回してお金を貯めながら、
円卓のコースをぐるぐる回ります。
そして、一定の金額になれば、
「会社で働くというラットレース」から抜け出し、
経営者、投資家に上がれるというもの
でした。

まさに、この「会社人間からビジネスオーナーになる」
という考え方がこのグループの根本にあるもので、
ゲームを通じて少しずつその思想に染めていこうとしていたのです。

彼はイベントの帰り道に、
「次のボードゲームにも来てみませんか?」
との誘いを女性から受けます。
とくに悪い印象もなかったので、1週間後に彼は再びイベントに参加します。

そして、またこのイベントの帰り際に、
「別のイベントがあるので参加しませんか?」
と誘われます。彼が参加したのはフットサルです。
このなかには、イベントに参加した顔見知りもおり、
すっかり心を許してしまいました。

通常のマルチ商法の勧誘では、イベントや説明会のあとに、
すぐに個別に話す場を設けて勧誘するものですが、
このグループは、すぐには本筋である勧誘行為をしません。

何度も自分たちのグループに足を運ばせて良好な人間関係をつくり、
一定の思想に染めるまで待ち続ける
のです。

ここには、もうひとつの勧誘テクニックが使われています。
それは、ひとつのイベントが終わったあとに、次の催しに誘う手です。

イベントを終えると心が高揚していますので、
次の誘いの話をすれば、相手は「そうですね」とうなずかざるをえません。
これを延々と続けていき、本人の身と心をからめとっていきます。
イベント後の帰り道での誘いには十分に注意してください。

心が思想に染まったところで、本来の目的である勧誘をスタート。
そして、ターゲットにした人物が
十分にグループの思想に染まったと判断すると、
勧誘の牙をむき出しにしてきます。

男性Aは、スポーツイベントが終わると、男性Xから帰り道に、
「僕が学んでいる人のビジネスセミナーがある」
と誘われます。
ただし、参加するには条件があり、
「毎日、日記をつけて、私に送ってほしい」
と言われ、彼はうなずきます。
同時に、『金持ち父さん貧乏父さん』(ロバート・キヨサキ著、筑摩書房)を読み、
感想を毎日送るように言ってきます。

【報連相をさせる真意】
いまにして思えば、報連相をさせることで、
私の個人情報を把握し、勧誘を有利に進めようとしていた
のでしょうね」
と話します。
このあたりは、旧統一教会の報連相によく似ています。

当時の彼は、これがセミナーに参加するための条件だと思っているので、
数週間行います。みずからの思想に近い本を読ませるなどして、
みずからのグループの考えに染めさせてきたわけですが、
結局、彼は、
「私がこのグループを抜けるまでの4年間、この報連相は続きました」

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

「判断の自由」を奪われる恐ろしさ

知らされたときには、
もはや指示どおり先に進むしかない状況に陥っている、
非常に恐ろしい勧誘です。
本来、その後の人生を左右するような重要なことを決める場合、
十分な情報を手にさせ、本人の意思で
「やるか」「やらないか」
の判断をさせなければなりません。

あるとき、男性Xから「会って話そう」と言われ、
「自分たちが参加するビジネスの勉強コミュニティーに入らないか?」
と誘われます。
セミナーへの参加にはコミュニティーへの
「入会同意書」にサインしなければならないというのです。

男性Aは「経営ビジネスのことが学べるなら」
という軽い気持ちでサインします。
後日、彼は都内で行われたビジネスセミナーに参加します。
100人ほどが参加していました。

壇上では30代の若い男が話をします。
「経営者になるためのメソッド」と題して、
「会社で働くラットレースから抜け出し、ビジネスオーナーになる。
これには行動力が必要です」との内容が話されます。
その後、チームごとに分かれたディスカッションに参加。
現在何をして働いているのかや、
自分自身の夢や目標などを語り合います。

最後に、
「自分の周囲の人たちを入会させ、集客していく」
との話が出て、ここで初めて、
グループがネットワークビジネス(マルチ商法)であることを知らされます

当時の彼は、
「経営することは難しいと思っていましたが、
セミナーを聞いているうちに、特別な能力は必要なく、
ここでの活動を続ければ、経営者としての成功がつかみとれるかもしれない」
との希望を抱いたと言います。
もうすでに彼の心はグループの思想にどっぷり浸かっていたのです。

セミナーの帰り道、
男性Xからあるネットワークビジネスを紹介されます。
入会同意書にサインさせられたうえに、
グループの思想に染まっていることもあり、もはや拒否できない状況です。

男性Xが言うままに、クレジット決済で15万円を払い、
このマルチ商法に参加する契約をします。

ここにいたるまで、約4カ月です。

このグループが使ったのは、旧統一教会が使っていたのと同じく、
みずからの正体を明かさずに勧誘し続けるという巧妙なやり口です。
「すぐに誘わない」
「じっくり時を待つ」
ことで、グループの思想にハマらせます


そして、しっかりグループの考えと本人の心が一致したところで、
本筋の勧誘を行うのです。
この手法を使われると、本人の意思決定がほとんど介在しないまま

知らぬ間に心がグループの思想にからめとられていますので、
「ここがマルチ商法のグループである」と知らされたときには、
もはや指示どおり先に進むしかない状況に陥っている、
非常に恐ろしい勧誘です。

本来、その後の人生を左右するような重要なことを決める場合、
十分な情報を手にさせ、
本人の意思で
「やるか」
「やらないか」
の判断をさせなければなりません。


しかし、正体を隠した組織的な勧誘では、
その判断する自由を奪ってしまっていることになります。
しかも、厄介なことに、いったん組織の考えにハマると、
周囲の助言が耳に入らなくなり、いまの仕事をやめるなど、
一途な思いで走り出してしまいます。

心に入り込んだ思想の呪縛を解いて、本当の自分の姿に気がつくには、
長い年月がかかります。その間に、お金と時間が奪われていきます。


今回証言してくれた男性も、元マルチ商法の販売グループへの入会から、
抜けるまでに4年の歳月がたっています。
きっかけは、街コン、合コン、スポーツでの声がけで、
出会った相手との何気ない連絡先の交換です。
〝気軽さ"のなかに、勧誘者たちはこっそり入り込んで
きます。

多田文明「信じる者は、ダマされる。」

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統一協会の手口シリーズまとめ


伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より



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