恐るべき公安⑥-01公安と宗教団体「公安の華々しいオウム殲滅戰」
悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。
青木理「日本の公安警察」
青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動
オウム殲滅戰
井上嘉浩vs.公安
教祖の麻原を逮捕するためには、「何をしでかすか分からない過激分子」である井上嘉浩は、絶対に"事前除去"されなければならない対象だった。
腰が重かった公安
オウム真理教は、かなり統一協会と共通する部分が見られ、
反共を旗印にしながら、ロシアに進出していたり、近年、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に急接近していた新興の宗教団体であり、統一協会がKCIAの工作機関であるのと同じく、公安の工作機関であった可能性も否定できない。
オウムについて全く調べていなかったのは、統一地方選が近かったからなんていう声もあるが、真相などは不明のままである。
また、幹部たちは全員死刑になって、処刑されてしまい、真相が謎のまま、闇に葬られた点も留意しておく必要がある。
国松長官狙擊
「国松長官狙擊事件」は、警視庁公安部の決定的な転換点になる。
弛緩していたのが緊張感が高まり、公安1課にオウム情報の集約センターが置かれ、全国各都道府県警警備部が収集する教団情報が一斉に集まり始めた。
微罪、別件を乱発
警察庁が「あらゆる法令を適用する」と宣言して以降、オウム信者は微罪、別件、ありとあらゆる手法が駆使されて片っ躍から逮捕された。
例えば、公務執行妨害はもちろん、カッターナイフを所持していれば銃刀法違反、
ビラをまきにマンション敷地内に入れば建造物侵入、
駐車違反や車検切れなどきわめて稀な逮捕も続いた。
一方で、教団の非合法活動を一手に引き受けていた井上の身柄を押さえないまま
教祖逮捕へと捜査の歩を進めれば、非合法部隊がどんな行動に出るか分からないと公安は考えていた。
今思うと宗教弾圧では?と思いかねない強引な微罪逮捕や強引な捜査が行われていたのに対し、多くの高額献金被害者を出し、「赤報隊」などへの関与も噂される統一協会への強引な微罪逮捕や強引な捜査が行われないことも謎である。
公安と統一協会の癒着が窺われる。
井上逮捕
多摩地区周辺に約200人もの公安警察官を送り込む大々的なオペレーション組み、
追尾対象は「足立ナンパー、赤色のダイハツ・シャレード」と大勢の公安警察官を動員して、井上容疑者を逮捕した。
麻原逮捕
伊丹万作「騙されることの責任」
もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。
もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない。一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より