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公安の手口🚓③-01右翼と公安「潜在右翼とは?」

公安の手口③-01右翼と公安「潜在右翼とは?」

新右翼の「一水会」の元会長が、公安警察に追われて使われた
エゲツナイ卑劣な手口の数々を「公安警察の手口」の本を元に
見ていきます。

鈴木邦男「公安警察の手口」

鈴木邦男「公安警察の手口」

鈴木邦男(すずき・くにお)
1943年福島県生まれ。67年、早稲田大学政治経済学部卒業。
70〜73年、産経新聞社に勤務。
学生時代から右翼・民族派運動に飛び込み、72年に「一水会」を創り、「新右翼」の代表的存在になる。99年12月に「一水会」会長を辞め、顧問になる。現在、月刊「創」など にコラムを連載中。
主な著書に、『新右翼』(彩流社)、『夕刻のコペルニクス』(扶桑社文庫)、『言論の覚悟』(創出版)、『ヤマトタケル』(現代書館)などがある



右翼と公安の関係

●右翼と公安の関係

共産党や新左翼担当の公安は必死になって情報収集を行なう。
詳しくは第四章、第五章で述べるが、彼らは左翼系の機関紙・誌には全て目を通し、集会にもぐり込んで、左翼が何を考えているのかを探る
それだけでなく協力者(スパイ)を見つけ、養成する
ときには公安自らが新左翼組織に潜入することもある。まさに命がけだ

鈴木邦男「公安警察の手口」

【右翼は公安に対してほとんど仲間付き合いをしてくれるので、全てお見通し】

【右翼は公安に対してほとんど仲間付き合いをしてくれるので、全てお見通し】

ところが、命がけの左翼担当の公安とは対照的に、
右翼担当の公安の仕事はきわめて楽だ。
なぜなら、右翼は公安に対してほとんど仲間付き合いをしてくれるので、
苦労して情報を集める必要がないからだ。

だから、右翼が何を考え、何をやろうとしているのか、
公安は全てお見通しだ。

もしかしたら当の右翼団体よりも熟知しているかもしれない

鈴木邦男「公安警察の手口」

【右翼の設立を丁寧に指導してくれ、管理する公安】

【右翼の設立を丁寧に指導してくれ、管理する公安】

ただ、右翼といっても千差万別だ。
真面目に国の未来を憂えて団体をつくっている人もいるし、
金が儲かりそうだから旗上げしたという人もいる
ヤクザだと警察の取り締まりが厳しいから右翼団体をつくったとか
いろいろな理由で右翼団体はつくられる。

だが、いざ右翼団体をつくり、街宣車を手に入れたが、
さて何をやっていいか分からない
。そんなこともある。

そういうときは公安が来て指導してくれる
「そうですね。とりあえず軍歌をかけて朝から晩まで街宣車を走らせたらいいでしょう。それも共産主義者や政治家への脅威になるでしょうから。
でも、右翼団体となると綱領と規約が必要ですね。
そんなものは私らが作ってあげましょう

そう言って、綱領や規約を作ってくれることもある。

嘘のような話だが本当だ。そんな団体は現に存在する
なかには、団体名を作ってもらったというところもあるから驚くほかはない
(これでは変革運動、維新運動を掲げる団体とは言えないと思うのだが・・・・・・)。

ともかく、右翼担当公安は、右翼のことを熟知している。
たとえば、一水会に所属し、その後やめた人間のことはぼくらも知らないが、
公安は知っている。
ずっと追跡調査をしているからだ(以前に一水会20周年や30周年のとき、
記録を作ろうと思って資料を集めたことがあったが、散逸しているものが多かった。街で貼ったビラや配ったチラシなどもない。その点、公安は全て保存している。「まさか公安に貸してもらうわけにもいかないしな」と苦笑したことを憶えている)。
公安には全ての資料・情報がある。
全ては知られていると思った方がいい。
公安とつき合いのない新右翼もそうだ。ましてや他の右翼はなおさらだ。

右翼の集会やデモに行けば必ず公安がいる。
なかには、「同志」あるいは「来賓」待遇で来ている公安もいる
ともに共産革命に反対する同志だと思っている人が多い。
だから右翼担当の公安は楽だ。事務所にも入れてくれるし、話も聞かせてくれる。
「先生、最近の政治情勢について教えてください」とおだてて公安は喋らせる。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【DVで逃げた奥さんの情報を右翼に売り渡したりして情報を聞き出す

【DVで逃げた奥さんの情報を右翼に売り渡したりして情報を聞き出す】

また、秘密の話でも、他の団体から聞いたり、
あるいは、内部で不満をもつ人間から巧みに話を聞きだす
ときには偽の情報をばらいて怒らせ、
「本当はこうだ」と当の団体から言わせたりする


また、日教組大会に行くときなどは、餞別を右麗に渡して激励する
また、機関紙などをまとめて買ってやり金を渡す。
交通違反をチャラにしてやる。
なかには、逃げた奥さんを探してやり恩を売る公安もいる。

ともかく、あらゆる手段を使って公安は右翼から情報をとろうとする
だから右翼のことは全て知っている。

右翼の事件が起きたときは、その時点で9割以上は解決しているといわれていた。
右翼は潔いから、大体、声明を出してから事件を起こす。
逃げようなどとは思わないし、逮捕されることにより、世の中に自分の主張が伝えられると思っている。
だから公安としては犯人を捜す必要がないから非常に楽だ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

「潜在右翼」の出現

●「潜在右翼」の出現

ところが最近、従来とは別の形の「決起」がある。
名を名乗らないし、事件後は逃げる。全く「右翼的」ではない

赤報隊がその一番いい例だ。

こうした「潜在右翼」による犯行は捜査が難航するケースが多い。
右翼に関する情報は全て公安が把握しているので、少しでも右翼運動と接点があったら必ず捕まるはずだが、潜在右翼の場合は、普段は普通の仕事をして、休みの日だけ出かけて行き「決起」する
こうした事件の場合、犯人には前科がないし、右翼運動をしたことがないため、逮捕がきわめて難しい
こうした潜在右翼の出現により、右翼に対する公安捜査の方法が完全に機能しなくなった。
今後も潜在右翼による犯行が予想されるため、
「潜在右翼対策」を強化することが公安活動の最大の課題となった。

鈴木邦男「公安警察の手口」

潜在右翼にはなす術なし

●潜在右翼にはなす術なし

潜在右翼に対しては全く手が出ない
こうなると公安は無力というよりも、捜査の「邪魔」でしかないのだ。
というのも公安がいるためにかえって事件は解決しないからだ

そもそも公安は今まで「捜査」など一度もしたことはない
事件が起こったときは、もう犯人は分かっているし、あとは関係者を捕まえたり、
ガサ入れをして証拠を集めるだけだ

刑事警察のように、誰が殺したか分からない事件を、
地べたに顔をつけるようにして手掛かりを探し、
一軒一軒聞き込みに行くといった、ゼロから始める捜査を経験したことがない。
だから赤報隊は逃がしたし、もう少しで征伐隊だって逃がすところだった


赤報隊事件と同様に、征伐隊事件も迷宮入りする可能性もあったが、
征伐隊は犯行現場に設置されたビデオカメラに映っていた

そこから足がつき、逮捕された。
日教組や社民党、朝鮮総連などは監視カメラが設置されている。
そのカメラに不審な人物が映っていて、さらに車のナンバーも映っていた。
監視カメラが設置されていることも知らないで「征伐隊」は襲撃を重ねていたのだ。


逆に言うと、その程度のことも知らない一般の人が、
これだけの事件を連続して起こしたことになる

きっと公安も愕然としたし、戦慄しただろう。
さらに世の中全体がどんどん「右傾化」している。
ちょっと前までならば、憲法改正を肯定する意見を口にすると、周囲の人から右翼呼ばわりされた。
しかし今は、普通の人でも憲法改正を口にする


そんな時代の雰囲気のなかで、全体が「右翼」になる。
いや、一般の人の方が右翼よりも過激なことを考え、発言している。
そんな時代の空気を征伐隊事件は如実に表わしている

こんな事件がこれからも続発したら公安としてはお手上げだ。

犯罪一般についてもこれは言える。
ちょっと前までならば、犯罪に走る人のタイプは決まっていた。
ヤクザとか、チンピラとか、一目見ただけで「こいつは危ない」という格好をしていた。

ところが今は、
「こんな大人しい人が」
「こんな紳士が」
「こんなあどけない子供が」
と思うような人が平気で人を殺し、罪を犯す。
これでは誰を信じ、誰を警戒したらいいのか分からない。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【「新しい歴史教科書をつくる会」や「救う会」の潜在右翼】

公安だって同じような戸惑いを感じている。
かつては右翼団体をつくり、黒い街宣車で走り、強面で運動をしている。
そういう右翼だけを見ていればよかったのに、今は彼らは事件を起こさない。
事件を起こすのは、右翼に接触せず、ちゃんとした仕事を持っている人たちだ。
これでは手の打ちようがない。

たとえば、「新しい歴史教科書をつくる会」や
北朝鮮の拉致被害者支援団体の「救う会」などは、
公に認められた市民権のある大衆組織
だ。
議員や大学教授、評論家などが大勢参加しているし、右翼とは別物だ。
だから公安も、こうした組織に集まる人々を尾行したり、張り込んだりはしない。
ところが、彼らの方が
「日本は改憲しろ」
「核を持て」
「北朝鮮との戦争も避けるな」
と一般の右翼よりも過激なことを主張する

また、どんなに過激なことを言っても、
社会的な地位が大学教授や評論家だから許されている。
奇妙なことだ

鈴木邦男「公安警察の手口」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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