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公安の手口🚓④-03スパイ育成と手口「弱みを握る」

公安の手口④-03スパイ育成と手口「弱みを握る」

新右翼の「一水会」の元会長が、公安警察に追われて使われた
エゲツナイ卑劣な手口の数々を「公安警察の手口」の本を元に
見ていきます。

鈴木邦男「公安警察の手口」

鈴木邦男「公安警察の手口」

鈴木邦男(すずき・くにお)
1943年福島県生まれ。67年、早稲田大学政治経済学部卒業。
70〜73年、産経新聞社に勤務。
学生時代から右翼・民族派運動に飛び込み、72年に「一水会」を創り、「新右翼」の代表的存在になる。99年12月に「一水会」会長を辞め、顧問になる。現在、月刊「創」など にコラムを連載中。
主な著書に、『新右翼』(彩流社)、『夕刻のコペルニクス』(扶桑社文庫)、『言論の覚悟』(創出版)、『ヤマトタケル』(現代書館)などがある



弱味を握って脅迫する

【ターゲットの隙や弱味を探る】

●弱味を握って脅迫する
【ターゲットの隙や弱味を探る】

公安は対象者と知り合うだけではダメで、
その人間をスバイにして情報を収集しなければならない。
これは大変だ。だから、公安の腕の見せ所は、
いかに対象者の心をつかむかという点にある。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【美人局をして、ターゲットの弱みを握る】

【美人局をして、ターゲットの弱みを握る】

まず、対象者の隙や弱味を見つける。
たとえば、女遊びが好きだとか、
パチンコ、競馬、競輪などギャンプルが好きだとか。
酒好き、旅行好きだとか、あるいはサラ金などに借金がある
ローンで苦しんでいる、友人関係で悩んでいるとか。

そうした隙を発見し、相談に乗ったり、金を貸したりする。
女をあてがうこともある

一緒にソープやファッション・ヘルスに行ったり、
あるいは女の子を紹介し、つき合わせる。
まるで美人局のようだ


さらに凄い手がある。これは島袋氏が実際、自分でやったという。
対象者と親しくなり、さんざん酔わせ、ストリップに連れて行って
「沖繩男子の面子にかけても彼女を泣かせてこい。
君は巨根の持ち主だと聞いたぞ」
とおだてて、本番ショーの舞台に上げる。
そして彼が本番をしている証拠写真をカメラで隠し撮りする。

後はその写真を見せて、なかば脅迫して彼をひきずり込み、
スバイ要員に仕立て上げた


「こんな写真を見たら党の幹部は何と思うだろうな」と言いながら脅したのだ。
「頼む、それだけはやめてくれ。何でもやるから」と、
向こうからスパイになる。

女を使って籠絡し、それを写真に撮って「スパイになれ」と脅す。

これは旧ソ連もよく使った手だという。
日本人の政治家や商社マンもやられたという噂を聞く。

島袋氏は公安としてはやり手だが、その上司になるとさらに凄腕だ。
M市の共産党系市議会議員をスパイに仕立てあげ、
また、民青同の県常任委員5人のうち半数以上がスパイだったという。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【弱みを握ってスパイに仕立てる手口やゴミ漁り】

【弱みを握ってスパイに仕立てる手口やゴミ漁り】

対象者に近づき、弱味を握り、スパイに仕立てる。
これは一種、「教育」のようなものだ
。教育者としての情熱にも似ている。
しかし公安には、普段はもっと地道な作業がある。
張り込んだり、尾行したり、
そしてときには浮浪者に変装して共産党事務所のゴミ漁りをする

琉球大学日共支部が火災にあったときは、焼け跡から出たゴミを持ち去った。
共産党事務所のゴミの入ったドラム缶を漁ったときは、重大な資料が見つかった

警察内部の者が共産党の二重スパイであることを発見したのだ。
この男は即座に離島の駐在所に左遷された


しかし共産党もやるもんだ。組織防衛という「守り」に徹するだけでなく、
積極的に逆襲したのだ。
警察官を逆にスパイにしてしまうなんて。
それに、ゴミのなかにその資料があったなんて本当なのだろうか。
でも公安がゴミ漁りをしているという話は有名だ

1974年に連続企業爆破事件があったときは、
犯人は一般市民のなかに潜んでいて、表面には出てこなかった。
「こいつらかもしれない」と見当をつけても証拠がない。
それで、公安は毎日ゴミを持ち去った。
そのなかから証拠を見つけて逮捕した。
東アジア反日武装戦線〈狼〉というグループだった。

企業に時限式の爆弾を仕掛けたが、
そのとき、時計を購入した領収証がゴミ袋のなかにあり、
そこから逮捕に結びついたという。
この話はぼくの『腹腹時計と〈狼〉』のなかに詳しく書いた。

ゴミ袋については個人的にもやられたことがある。
朝日新聞の記者が殺傷された赤報隊事件、それに新右翼の査問事件など、
いくつかの事件のときにぼくは「容疑者」にされて二十四時間、
尾行・張り込みをされた。
どこに行くにもピッタリ付いてくるし、門にはいつも二人組の公安がいる。
そしてゴミを出すと、ゴミ回収車が来る前にぼくのゴミだけが消えている。

そこまでやるのかと思い、背筋が寒くなった。
共産党はそんなことを毎日のようにやられている。

大変だ。だったら、ゴミにだって細心の注意を払っているはずだ。
それで二重スパイが分かったというが、きっかけはゴミだとしても、
公にできないやり方で分かったのではないだろうか。
島袋氏だって全てを告白しているわけじゃない。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【共産党のスパイ挑発数】

【共産党のスパイ挑発例】

それに島袋氏は沖縄県の公安だ。全体のほんの一部分にすぎない。
東京で、また、全国で公安がどんなことをやっているのか、それは分からない。
絶対に公表しない。ただ、島袋氏の例から全体を類推するだけだ。

対する共産党の方も、具体的な被害例は発表していない。
それをやれば、組織防衛にならないからだ。
また、党に潜入したスパイや公安を査問し、
逆に洗脳して「二重スパイ」にしている例もある。
しかし、そのことも具体的には公表しない。

ただ、「これだけのスパイを摘発した」
と発表することはある(最近はあまり発表したいようだが)。
データは古いが、1980年末の第12回党大会では、
「過去2年間に全国で百名ちかいスパイを摘発した」と発表した

公安警察や公安調査庁と結びついたものが圧倒的に多く、
75%を占めている
という。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【共産党でスパイに転落させられた例】

ヤンキーや不良が補導されたり、犯罪者が捕まったけど、揉み消して貰うのと引き換えに、スパイになる例が多そう。

【共産党でスパイに転落させられた例】

スパイに転落した主な事例」としては、次のようなものが挙げられる。
①党員の飲食、金銭問題、競馬、競輪などギャンブル、
 不正常な異性関係の弱点をつかれたもの
②消食のもてなし、金品の贈与などによる懐柔
③交通違反などを利用したもの
④親類の警察官、学校の同級生、職場の同僚で、
 その後公安関係者や警察官になった者から工作されたもの
⑤労働闘争や党活動の中で不当に逮捕され、その関係を利用されたもの
⑥窃盗などの破廉恥罪や非行少年グループなどで補導されたもの

こんな形でスパイにされている。

こういう人間は公安に目をつけられ、弱味を握られてスパイにされやすい。
気をつけろ、というわけだ。
今までは、「党員は居酒屋などで酒を飲むな」という通達があった。
「今時、こんなことを強制しているのか。だから共産党はダメなんだ」
と昨年(2003年)、新聞に取り上げられ、叩かれていた。

だから今は撤回したようだ。
しかし、これも組織防衛からしたら、やむをえない点もあった

酒を飲むと誰だって気が大きくなる。共産主義の思想だってそれを阻止できない。
組織的警戒心も薄れる。周りの人に話も聞かれる。公安がいるかもしれない。
見知らぬ人と意気投合し、それが公安だったということもある。
さらに、酔って党の書類を置き忘れた、という事件もあったらしい。
だから、「外で酒は飲むな。飲むなら家で飲め」と言ってきたのだ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

スパイ摘発の規準

【スパイを見分けるコツ】

●スパイ摘発の規準

さらに警戒は外に向けられるだけではない。内部にも向けられる。
自分の身の回りを見て、「怪しい人」がいないか、
急に金回りのよくなった人はいないか

相互監視しろ、という。スパイ摘発の奨励だ。
では、どんな人が怪しいのか。

【スパイを見分けるコツ】
それを見分けるコツは次のようになる。
・収入と比較して金まわりがよかったり、生活が派手だったりする者や、
 外でよく酒を飲む者がいるかどうか
・自分より地位の高い党員を飲みに誘うなどして金を使う者がいるか
・会議によく出席したがるが、党勢拡大の統一行動や大衆運動には
 参加したがらない者がいるか
・必要以上にメモを取ったり、聞いたり、資料を欲しがったりする者や
 不自然な質問をする者がいるか
・行動、動作に落ち着きのない者がいるか
・男女関係や酒で乱れている者がいるか

共産党も大変だ。

こんなことにまで気をつけなくてはならない。疑心暗鬼になる
さらに共産党は党勢は減る一方、
そして「二大政党の時代だ」といわれ、共産党の存在意義も疑われている
さらに、税金を使って公安はスパイを送り込み、潰しにかかる
共産党もその防衛に大童だ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【公安によって組織運営が妨害されている】

【公安によって組織運営が妨害されている】

それでなくても入党者は少ないのに、党に入ってきたら、
「外で酒を飲んでいないか」「女性問題はないか」と常に監視する。
熱心な党員がいても、
「熱心にメモをとり、質問するのもかえって怪しい」と疑心暗鬼になる。
これでは党勢も伸びるわけがない。

「居酒屋で飲むな」という通達を新聞でスッパ抜かれて叩かれたとき、
共産党も公安の問題を表に出して闘えばよかったのだ。
なぜこんな通達を出したかというと、実は多大な被害、
挑発を公安から受けているからだと、全てを公表したらよかった。

公党に対し、これだけ膨大な人員と金を使ってスパイ活動をしている。
これで民主国家といえるのかと糾弾したらいい。


以前に、「朝まで生テレビ」のパーティで
上田耕一郎氏(日本共産党幹部会副委員長)と会ったことがある。
また、茨城県の青年会議所に呼ばれて地元の共産党の市議と討論会をした。
両方とも公安の話をした。「これは許せない問題です」とお二人とも言う
しかし共産党として取り組む問題だと言う
ぼくの僻みかもしれないが、「右翼や他の人たちの手を借りてまでやる問題ではない」と言っているようにも聞こえた

鈴木邦男「公安警察の手口」

【公安記者や元公安の人に聞く共産党脅威の理由】

【公安記者や元公安の人に聞く共産党脅威の理由】

本書を執筆するに当たり、公安記者や元公安の人に
「公安はなぜ共産党ばかりを監視するのか」と聞いてみた

前述した通り、返ってくる答えは、
「共産党はかつて武装革命をやろうとした。
今の共産党が武力革命に訴えるとは考えられないが、
その可能性が全くないという保証はどこにもない。
それに、40万人という党員数は脅威だ」というものだった。

共産党を敵視する側の論理も、これと同じ考え方なのだろう。
だとすれば、共産党はどんなことがあっても
革命には訴えないことを宣言するべきではないだろうか。
たしかに、共産党は今までもそのようなニュアンスのことは言ってきた。
しかし、「敵の出方」論などを持ち出して話をややこしくしてきた。
どこから誰が読んでも誤解されないように、
はっきりと武力革命を否定するべきだ。
そうしたら公安が共産党を監視しスパイする理由はなくなるはずだ。
でも、たとえ共産党が武力革命の否定を宣言したとしても、公安という組織は廃止されないようにも思う。
「そんな宣言は偽装に違いない」といって、公安は自らの組織の存続を画策するだろう。

しかし、そのことによりヴェールに包まれた
公安の存在が表に出ることになるだろうから、
それだけでも十分に意義があるように思う。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【公安の手は中央委員会まで伸びている】

【公安の手は中央委員会まで伸びている】

かつて共産党に在籍し、その後、評論家になった人からこんな話を聞いた。
日本共産党の佐賀県委員長が公安のスパイだと発覚したことがある。
金の問題で弱味を握られ、スパイになったと本人も認めていたという


また、野坂参三が「スパイであり、仲間を売った」
として日本共産党を除名されたことがある
日本共産党の中央委員会の決定が出て、
一時間もしないうちにその評論家の耳に入った。
日本共産党は発表していないし、マスコミはどこも知らない

なぜそんなに早く知ることができたのか。
中央委員のなかの誰かが公安に洩らしたからだ。

公安の手はそこまで伸びているのだ。

「そこまで公安は頑張っているのか。だから必要だ」
と思う人がいるかもしれない。
しかし、「野坂除名」を一時間早く知るためだけに膨大な予算と人員をかけ、
犯罪的な行為(スパイ獲得)を行なう必要があるのだろうか。
ぼくは必要ないと思うし、こうした問題を含め、公安の間の体質をもっと論議すべきだろう。

鈴木邦男「公安警察の手口」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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