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公安の手口🚓④-05スパイ育成と手口「工作の手口」

公安の手口④-05スパイ育成と手口「工作の手口」

新右翼の「一水会」の元会長が、公安警察に追われて使われた
エゲツナイ卑劣な手口の数々を「公安警察の手口」の本を元に
見ていきます。

鈴木邦男「公安警察の手口」

鈴木邦男「公安警察の手口」

鈴木邦男(すずき・くにお)
1943年福島県生まれ。67年、早稲田大学政治経済学部卒業。
70〜73年、産経新聞社に勤務。
学生時代から右翼・民族派運動に飛び込み、72年に「一水会」を創り、「新右翼」の代表的存在になる。99年12月に「一水会」会長を辞め、顧問になる。現在、月刊「創」など にコラムを連載中。
主な著書に、『新右翼』(彩流社)、『夕刻のコペルニクス』(扶桑社文庫)、『言論の覚悟』(創出版)、『ヤマトタケル』(現代書館)などがある



驚くべき人心掌握のテクニック

【自壺党🏺みたいに事前にガサ入れのお知らせ?】

●驚くべき人心掌握のテクニック
【自壺党🏺みたいに事前にガサ入れのお知らせ?】

前にも書いたが、他の右翼の人にぼくはこう言われた。
「公安とうまくつき合えばいいんですよ。
酒も飲ませてくれるし、小遣いだってくれる。
何か事件があってガサ入れするときだって事前に教えてくれますよ」。

この話を聞いたとき、そんなこともしてるのかよ、と驚いた。

「明日ガサを入れるよ。嫌だろうが、
こっちも仕事だから分かってくれよ」
と言ってくる。
やられる方も、事前に名簿とか大事な書類は他に移しておくだろう
翌日、「家宅捜索ですよ」
「はい、ご苦労さん」と型通りのガサ入れをして、
機関紙やポスターを押収して帰る

全て公表しているものだから、そんなものは押収のうちに入らない。
完全な八百長だ。

よく、ゲームセンターやヤクザの事務所にガサが入って、
そのガサの情報が事前に漏れていたと騒がれることがある

新聞にも叩かれるし、表沙汰になれば
警察もその警察官を処分しなくてはならない

ゲームセンターやヤクザからは、いつも警察は情報をもらっている。
一緒に酒も飲むだろう。そうした人間関係がなければ情報は収集できない。
その見返りとして、「明日ガサが入るよ」と一報する。
それで処分される。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【八百長ガサ入れ】

【八百長ガサ入れ】

でも公安は同じことをしても処分されない
風紀係(生活安全部)やヤクザ担当の刑事とは違う。
「こっちは国の安全を守っているのだ」という自負がある。
そして、やっていることは全てヴェールに包まれていて
一般の人には全く分からない。
どこにガサ入れをするか、好き勝手にやれる。アンタッチャブルだ。
さらに、自分たちとつき合い、仲のいい右翼には「ガサ情報」を漏らし、
手ごころを加えてくれる。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【極秘のファイルを見せて信用させる公安】

【極秘のファイルを見せて信用させる公安】

親密になったら、極秘の書類だって見せてくれる。
公安には膨大な右翼のファイルがある

そのファイルを見せてもらったという右翼がいた。
「いやー、まいったよ。俺のことなんか”大酒のみ。
虚言癖あり”なんて書かれていたよ。ガハハハッ」
と笑っていた。

この話にはぼくも驚いた。そこまで見せるかなといぶかしんだが、
「これがバレたら私はクビですよ」と言いながら公安は見せたという
必ずしもよく書いていないところにリアリティがある
見せてもらった右翼は思うだろう。
「クビになる危険性を冒してまで極秘資料を見せてくれた。
それほど俺を信頼しているのか」と。
じゃ、その信頼に応えなくては、と思う。


その心理を利用して公安はこう言う。
「しかし酷いですね。”虚言癖あり”なんて。
もちろん、私はそんなことは思いませんよ。
最も真面目で行動力のある愛国者だと思っていますし、
上にもそう報告しているんです。
でも、こんなデタラメを言う奴がいて上は信じているんです。
担当の私の言うことを信じないんですから。上は見る目がないですよ」

鈴木邦男「公安警察の手口」

【英雄になれると囁いて事件を起こさせる公安】

【英雄になれると囁いて事件を起こさせる公安】

さらに、こうささやいたのだろう。
でもこんなファイルが残っているなんてシャクですね。
だから、どこかを襲いませんか。
共産党でもいいし、日教組でもいいし、入った時点で私が止めますよ。
そうすれば、あなたは英雄になりますし、すぐに出てこれますよ


この推測は多分、当たっていると思う
なぜならその後、彼は小さな事件を起こして捕まったからだ。
極秘文書を見せたといっても、このくらいは大丈夫というものを見せたのだろう。
そして右翼の信頼を勝ちとり、あわよくば「事件」を起こさせようと思ったのだ。

公安の方がずっと上手だ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【時々公表するファイル】

【時々公表するファイル】

それに、公安は重要度の低いファイルなら結構公表している。
デモか何かで警察官と揉めて逮捕されたときのことだ。
取り調べ室が満員だったせいか、大部屋で調べられた。
そのときに壁に新左翼の指名手配書がベタベタと貼られていた。
一般の街頭や駅、銭湯などに貼られているものではない。
警察官用に作られた詳しいものだった。

写真、住所、実家は元より友人宅、そして何と、
「情婦」の名前、住所も書かれていた。

いくら何でもこの表現はないだろうと思った
(せめて「ガールフレンド」とか「女友達」という表現にしてやればいい)。
この経験から推察すると、公開していないファイルや、
さらに極秘の潜在右翼のファイルには何が書かれているか分からない。

鈴木邦男「公安警察の手口」

刑事警察のガサ入れとの違い

●刑事警察のガサ入れとの違い

さて、ガサ入れに話を戻す。公安は自由に、勝手気儘にガサ入れをやっている。
しかし、逮捕と同じように、
一応は裁判所の令状をもらってやることになっている。
しかしそれは形式上、建て前上のことであって、
実際は警察が好き勝手にやっている。
警察が請求した令状を裁判所が拒否したことは、まずない。
それは裁判所がガサ入れの実態を全く知らないからだ。

「何も逮捕するわけじゃない。証拠があるかないか家捜しするだけだろう。
それで証拠がなかったら本人も疑いが晴れて、かえっていいだろう」と、
そのくらいにしか思っていない。
だからポンポンとハンコを押す。これが問題なのだ。

確かに、逮捕令状は慎重にやる。
よく刑事ドラマでも
「そんなことじゃ(逮捕)令状はとれませんよ。もっと証拠を固めないと」
と刑事が言うシーンがある。
でも、「そんなことじゃ、ガサ令状は出ませんよ」なんて言うシーンはない。
ガサの令状なんて、いつでも、いくらでも出るからだ

鈴木邦男「公安警察の手口」

【裁判官も誤解しているガサ入れ】

【裁判官も誤解しているガサ入れ】

ぼくは今まで何十回とガサ入れをされているが、こんなに嫌なことはない
一週間くらいで出られるのなら逮捕された方がマシなくらいだ。
「でも爆弾や銃があるわけじゃないし、調べられても困るものはないだろう」と、
知らない人は言う。ガサ令状を出す裁判所ように、
「かえって容疑が晴れていいじゃないか」くらいに思っているのだ。


しかし警察もはじめからそんなものがあるとは思っていない
(公安のガサ入れで証拠が見つかったとか、
犯人が逮捕されたなんて例は一つもない)。
それよりも手帳とか電話帳、住所録を持っていくのが主目的なのだ。
それを探すためだけに全国にガサ入れをするのだ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【友人や仲間が増えた頃を狙って離間工作を仕掛ける公安】

【友人や仲間が増えた頃を狙って離間工作を仕掛ける公安】

やり方も巧妙だ。
「運動を離れているし、もう自分にはガサ入れなどないだろう」
と思い油断しているところをわざと狙う。

友人や仲間が増えた頃を狙って襲い、電話帳、住所録を盗ってゆく。
泥棒だ。いや泥棒よりもタチが悪い。

ぼくは泥棒にも何度か入られたことがあるが、金がないから何の被害もなかった。
その点、公安は金よりももっと大事なものを盗ってゆく。

ともかく公安は、いつでも、どこでも、好きな所にガサ入れできる。
では、「ドンドン」とドアを叩かれたとき、なかから開けなかったらどうか。
彼らは無理にも開ける。電動/コギリやオノでドアをぶち壊す。
実際、新左翼はそれでやられている。
本人が留守でも大家さんを呼んで開けさせる。文句は言えない。

何を持っていかれても仕方ない。
「それだけは持っていかないでくれ」なんて泣きつくと、
「公務執行妨害だ」と言って逮捕される。

ぼくはもう、勝手にしろ、と思っている。

【信用などを低下させて孤立させる手口】
でも、金属探知器をわざわざ持ってきて、
「チャカ(季銃)、爆弾はないか」
「覚醒剤はないか」
と大声で言い合っている。
隣近所に聞こえるように大声で言う。
また、わざと外に出て大声で警察官と話す。

大家さんや近所の人は、「どんな凶悪犯か」と思って見にくる。
妻帯者はもっと大変だ。(関係ないとわかっていても)
奥さんの服や下着まで全部取り出して調べる

鈴木邦男「公安警察の手口」

【ガサ入れをして弱みを握って脅して言いなりにする手口】

【ガサ入れをして弱みを握って脅して言いなりにする手口】

下着の間に秘密書類を隠しているかもしれない、そう思うのか。
一枚一枚、奥さんのパンティを拡げて見ている。
顔から火が出たと言っていた人も
いた。
また、なかには独身のくせに押入れから、セーラー服が発見されたとか、
エロ本、エロビデオを大量に発見されたという人もいる。こんなのも恥ずかしい。
「このビデオは売って商売しているんじゃないか。パクられたくなかったら、
これから定期的に会って情報を提供しろ」と脅された人もいた。


いつ、どこでガサが来るか分からないし、来たらやられっ放しだ。
泣き寝入りするしかない。対抗手段は何もない。
ただ、「準抗告」といってあとで裁判所に訴える方法はある。
しかし、これで勝つことはまずない。それにガサが終わった後だ。

たとえ例外的に、
「ガサは不当だった。押収した物は返しなさい」と裁判所が命令したとしても、
もう全てコピ―してある。それから返してもらっても同じことだ。

でも、悔しいから弁護士に頼んで何度か準抗告したことがあったが、
全て却下された。
裁判所にしても、
「逮捕じゃあるまいし、ガサくらい、いいじゃないか。ガタガタ言うな」
という気持ちがあるのだろう。他人の痛みが分からない。


作家の和久酸三氏だったと思うが、
裁判官は女には甘い判決になりやすいと言っていた。
というのは裁判官になるような人は子供のときから優秀でエリートだ。
遊ぶ暇もなく勉強する。だから、女性被告に対しては、
「悪い女性などいるはずがない。
きっと男に騙されて仕方なくやったんだろう」と同情する。
自分が遊んでいないから悪い女に騙されたことがない。
だから女性に対してだけは性善説であり、年齢をとってから不祥事を起こしたり、
金や女の誘惑に簡単に負けたりするのだろう。人間が甘いのだ。

ガサ令状にしても同じ。
「捜してもらって証拠がなければ疑いも晴れて当人にもいいだろう」
と思っているのだろう。
そして、警察の言い分を真に受けて、ガサ令状を乱発する。困ったものだ。

だから、こんな裁判官には少し、「実習」をやらせたらいい。
弱い者、被害者の「痛み」を知ってもらうのだ。

まず、実習としてガサを数回体験させる。
また、十日くらい、拘留も体験してもらう。
そうしたら、「こんなに大変なことか」と分かり、
令状を出すのにも慎重になるだろう。
これは絶対にやってもらいたい。

鈴木邦男「公安警察の手口」

張り込みのやり口

●張り込みのやり口

次に、「張り込み」と「尾行」だ。両者は一体だ。
アパートだけを張り込みしている、ということはない。
24時間、張り込んでいるから、外出するときはどこにでもついてくる。

前にも書いたが、見沢知廉氏の「スパイ査問事件」の直後、
ぼくは3ヵ月間張り込まれた。

気が狂いそうだった。これなら捕まった方が楽だと何度思ったか分からない。
雨の日も風の日もアパートの門のところに必ず2人いる。
車はどこか近くにおき、交替要員がいるのだろう。
わざと門のところに2人、立っている。いやな気分だ。
どこに行くにも必ず付いてくる。


このときは、ぼくも巻き込まれたとはいえ、事件に少しは関係があった。
だから仕方ない部分もあった。
このときの体験で、何をやっても警察にはかなわないと思ったし、
非合法闘争なんて無理だと思った。


だから今は反省し、非合法は一切やらない。
全て、合法運動でやっている。はっきりそう言明しているし、そう実行している。
しかし、それでも公安は張り込み、尾行をやめない。
一水会のような合法的団体の集会、デモにも必ず公安が大挙して来る。

また、外国から要人が来るときや、いろんな「記念」の日には主要メンバーを尾行する。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【右翼カレンダー】

【右翼カレンダー】
公安はもちろん、各交番にも、「右翼カレンダー」というものがある。
たとえば、開戦記念日や吉田松陰が死んだ日、三島事件の日などが書き込まれたカレンダーだ。
「右翼は必ずこうした記念日に事を起こす」と公安は思っている
(本当はそんなことはないのだが)。

潜在右翼と目された人も、こういう記念日に張り込み、尾行をされる。
そろそろ何か起こしてくれよ、と期待を込めてやっているのだろう。

一般的には、ちょっと離れて尾行し、気づかれないようにする。
でも、少し活動した人間になると、尾行が付いてるかどうかはすぐに分かる。
それに、外国の要人が来日しているとか、「右翼カレンダー」の要注意日だと、
「多分、付くだろうな」と思うし、実際、付いている。

ぼくも若くて過激だった頃は、「自分たちは正しいことをやっているのに、なぜ権力は弾圧するんだ」と思っていた。
反面、「正しいことをひたむきにやっているからこそ弾圧されるんだ。
幕末の志士たちも幕府の犬どもに付け狙われたんだし」と思って、
被虐的なヒロイズムに浸ったりした。
そして、この犬どもをまいてやろうと思った。
ただ、新左翼と違ってぼくたちは「尾行をまく」練習をしていないし、
その技術もない。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【尾行のまき方】

それで新左翼の本を読んで研究した。
いろんな「技術書」があるが、たとえば『連合赤軍服務規律』というものがある。
『腹腹時計』と同じように、70年代初頭に出された、
いわば「権力との闘い方」読本だ。
もちろん、秘密出版だ。このなかに「尾行のまき方」が書かれている

絶えず権力の尾行、敵対党派の有無に注意し、
電車は少人数の場合は最後尾車輌の最後のドアより、
3〜5人以上の場合は最前車輛より乗降する。
乗る場合は、発車直前。車掌が発車合図を完了し、
発車ベルが鳴り終って数呼吸して乗ること。
降りる場合は、乗客が降り、乗客が乗り終わってからおりる。


新左翼の活動家は常にこのような緊張感を持って生きている。
電車に乗るのでも、いちいちこんな面倒なやり方で乗る。
しかし、相手はプロだし、こんな本のことは十分に知っている。

それに一人の尾行ならまけるかもしれないが、
尾行は何人もいて、どこで交替しているか分からない。
発車直前に降りたって、車輛の中と外に公安はいるんだ。まきようがない。

鈴木邦男「公安警察の手口」

尾行のやりロ

【尾行を撃退した方法①回目】

●尾行のやりロ
【尾行を撃退した方法①回目】

ただ、「同伴尾行」と違い、見え隠れの尾行のときは対処法もある。
あるとき、あまりに頭に来たので、こっちから尾行している奴に声をかけた

「何で尾行しているんだ。名前を名乗れ」と。
最悪の場合は、揉み合って逮捕されてもいいと思った。
それほど頭に血が上っていたのだ。

尾行していた公安は、思わぬ逆襲にたじろいだ。
「いや、何も尾行なんかしてませんよ。私は一般のサラリーマンです。
たまたま行く方向が同じなだけです」と、
しどろもどろに言う。

「俺は公安だ。文句があるか」と言われたら、こっちは手を出せない。
でも、「一般人だ」と言い繕っている。
こっちも端にかかって、「よし、じゃ交番に行こう」と相手の腕をとった。
手首が太い。柔道や剣道をやっている者の手首だ。やっばり公安だと分かった。

「一般のサラリーマンだというなら身分証を見せろ」
と服のポケットに手をかけた。

その瞬間、彼は脱兎の如く逃げ出した。
馬鹿な奴だ。新米の公安なのか、それとも、
「気づかれずに尾行しろ」という命令しか受けていなかったのか。
こうなるとこっちもいたぶってみたくなる。追いかけた。

そして、「ドロボーだ。捕まえてくれ!」と大声で叫んだ。
向こうは全速力で逃げる。
こっちも全速力で追いかける。警察官を追いかけるなんて痛快だ。
あのときの気分は忘れられない。

でも彼は何を思ったか、交番に飛び込んだ。追跡劇はそれで終わりだ。
「ドロボーだ。逮捕してくれ」と交番のお巡りさんに交渉したがダメだった。
公安だと知って匿ったのだろう。
こっちは暴力的に追い返されてしまった。
でも、一瞬だけでも公安を追いかけたのだ。それで満足しなくっちゃ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【尾行を撃退した方法②回目】

【尾行を撃退した方法②回目】

尾行の公安に一泡ふかせたことが、もう一度だけある。
日ソ友好会館建設反対闘争で釧路に行った。
1977年4月のことだ。抗議に来たことを察知して、公安がピッタリ尾行する。
歩いていても、タクシーに乗っても尾行してくる。
何をやったって尾行はまけないと思った。


夜、タクシーに乗ったときも尾行の車は付いてくる。
タクシーの運ちゃんが、
バックミラーを見ながら「変な車が付いてきますよ」という。
だから正直に「尾行されているんだ」と言った。


そうしたら運ちゃん、急に目を輝かせて、「まいちゃいましょうか。
こんなの、一度やってみたかったんですよ」と言う

「いや、無理だよ」と言ったら、「任せといてください」と言う
そして急に細い道に入った。
街灯が全くない道だ。
さらに車のライトも全て消した。
真っ暗ななかを、真っ暗な車が全速力で走る。
こっちは生きた心地がしない。
暗いなかを、くねくねと曲がり、公安の車をまいてしまった。
凄腕の運ちゃんがいると思い舌を巻いた。


ぼくの長い活動家人生のなかで尾行を撃退したのはこの二回。
あとは、全てことごとく公安にやられっ放しだ。
いくら振り切ろうと思っても無理だった。
ちなみに、釧路で夜、尾行を振り切ったが、
次の日の抗議運動で、警備の警察官と揉めて逮捕されてしまった。
尾行を振り切った仕返しに逮捕したのではあるまいが、結局は負けた形になった。
そして23日間、寒い釧路警察所の留置場にぶち込まれていた。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【新左翼の尾行のまき方】

【新左翼の尾行のまき方】

二度の例外があるにしても、あとの100パーセント近くが尾行、
張り込みのやられ放題だ

どうやっても逃げ切れない。
その点、新左翼は偉い。頑張っている。
集会やデモの後、皆、公安の尾行を振り切っているからだ。

たとえば、中核派や革マル派などがデモをする。集会を開くとする。
全て事前に警察に届け出をし、許可をもらってやる。
「反体制運動だから無届け・無許可でやっているのだろう。
だから警察も取締まるのだろう」
と思っている人も多いが、違う。
右翼の集会やデモ、街宣(街頭宣伝)だって全て許可を得てやっている。
許可の条件も厳しい。
「この時間はダメだ。このコースはダメだ。こっちにしろ」
と注文をつける。
「表現の自由」は憲法にはあるが、警察のお許しがなくてはダメなのだ。

さらに、厳しい条件をクリアして集会、デモをしても、
公安はドッと押しかけて顔写真を撮る。
そうはさせじと、参加者は顔を隠す。
ヘルメットにサングラス、タオルで覆面をする。
あるいは大きなマスクをする。異様だ。

「ほら、過激派はこんなに異様で、恐ろしげな格好をしている」
と警察は利用する。

でも新左翼にしたら、もともとは「組織防衛」のためでもあり、
「ブライバシーの保護」なのだ


どんな集会やデモに出ても本来、自由なはずだ。
それに警察の許可を得てデモや集会をやっている。

それにもかかわらず、参加者全員の身元を調べようとし、
顔写真を撮り、帰りは尾行する。


デモや集会のときは皆が一緒だし、顔も隠せる。
しかし解散して家に帰るときはバラバラだ。
そこを公安が狙う。
群れから離れたヌーやシマウマを狙うライオンのようだ。いや、ハイエナか。
だから解散後の方が〈戦争〉だ。
新左翼の側も、参加者(とくに、顔を知られていない新人)を守る義務がある。

だから五人くらいずつ組になり、リーダーが引率する。
きちんと手順を決めておき、全力疾走したり、
バラバラに別れたり、タクシーを拾ったりと、
必死で公安をまく。本当に大変だ。ご苦労さんだ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【戦前のように特高化した公安と治安の悪化】

【戦前のように特高化した公安と治安の悪化】

たかが集会に出たくらいで、こんな必死な思いをする。
まるで戦前のようだ。

特高に狙われ、追われる共産党員のようだ。
民主主義の現代日本でもこんなことが繰り返されている。

これは公安が悪い。公安は人間も金も余っていて、
使い道がないから、こんなことをしているのだ。

一方において凶悪犯罪は増える一方だという
前にも述べたが、昔はヤクザとか、いかにも犯罪者らしい人が犯罪をした。
今は、普通の大学生、高校生が簡単に人を殺す。
「出会い系サイト」で知り合った女が、「人を殺してみたかった」と言って、初対面の男を殺したりする。

「警察官が足りない」と言われている。でも、公安は余っている。
それを刑事警察に回せばいいんだ。
それなのに、
「俺たちは国家を守っているんだ。ドロボーや人殺しなんか追っかけてられるか」とプライドを持っている。

さらに刑事警察に対して、
「逃亡左翼を見つけろ」
「潜在右翼を見つけろ」
と公安の仕事を押しつける。
これでは少ない刑事警察の力をさらに削ぐことになる


極端にいえば、公安のせいで昨今の凶悪犯罪は増えているし、
犯人も捕まらないともいえる。
さらに、右翼や左翼の犯罪を防ぐどころか、
逆に卑劣で陰惨な犯罪を増やしている。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【犯罪を増やし、治安を悪化させているのは外国人ではなく公安】

【犯罪を増やし、治安を悪化させているのは外国人ではなく公安】

極端にいえば、公安のせいで昨今の凶悪犯罪は増えているし、
犯人も捕まらないともいえる。
さらに、右翼や左翼の犯罪を防ぐどころか、
逆に卑劣で陰惨な犯罪を増やしている。

デモや集会に出てみたらいい。
警察の許可をとった合法的なデモや集会なのに、警察・公安だらけだ。
まるで犯罪者を監視するように集まっている。
活動家たちは、表現の自由など、どこにもない。
顔写真を撮られ、尾行され、ブラックリストに載せられる。

こんなことなら、デモや集会になど一切出ないで、普通の市民生活を送り、
隠れて火炎瓶や爆弾を投げ、また市民生活に戻る方がいい。

そう思いつめる者も出る。かつての〈狼〉や赤報隊だ。
さらにそれを真似た征伐隊だってそうだ。
また、合法運動をしていて、それで弾圧されている左右両翼にしても、
「いつか公安に一泡ふかせてやろう」と復讐の念を育てさせることになる。
公安の存在が犯罪を助長し、育てているのだ。


「でも過激なことをするから公安は監視、尾行するのだろう。
それをやめたら公安も嫌がらせをやめるのだろう」と言う人もいる。
しかし違うのだ。
たとえば、日本共産党はもう暴力革命なんて考えていない。
誰も暴力をふるわない。
でも公安は監視し、協力者(スパイ)を獲得し、育てている。
また、一水会だって、過去の反省を踏まえ、
「全ては言論活動でやる」と公言している。

それでも尾行されるし、公開講座のときも公安がびったりと付いている。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【変わった新左翼と変わらぬ公安①】

【変わった新左翼と変わらぬ公安①】

また、荒岱介氏率いるブントという集団がある。
かつては「戦旗派」といい、過激なゲリラ闘争もやった。
皇居にロケット弾を撃ち込んだこともある。
しかし今は非合法闘争を一切清算し、合法的市民運動に変わった。

マルクス主義を捨て、新左翼でもなくなった。
地方議会にも議員を出し、合法的に世の中を変えようと運動している。
彼らの主催する「グランワークショップ」には多くの若者が集い、
皆、素顔で出ている。
誰もヘルメットやマスクをしていない。
堂々と爽やかに運動をしている。偉い。立派だ。

「かつての敵」のぼくなどもパネラーに呼んでくれる(三度ほどぼくは出席した)。

ところが、その会場付近は百人ほどの公安がびっちりいる。
それに、帽子を目深にかぶり、サングラス、マスクをしている。
公安の方が「過激派」的だ。
そして一人一人の顔写真を撮っている。ひどい奴らだと思った。

そう思って抗議したら、理由をつけて逮捕されてしまう。
公開の場所で彼らと話し合いたいと思っても、それはできない。
右翼も左翼も大きく変わりつつあるのに、公安だけは旧態依然として昔のままだ。

鈴木邦男「公安警察の手口」

【変わった新左翼と変わらぬ公安②】

【変わった新左翼と変わらぬ公安②】

こんな例もある。新左翼のなかでは革マル派は最大党派だ。
だから公安も必死になって「革マルの脅威」を強調する。
かつてのような激しい学生運動はない。

「でも労働組合を握り不穏な行動をしている」と公安は印象づけている。
2002年11月にJR東労組で組合を脱退しようとした
人間を引きとめて口論になった事件があった。
別に暴力はない(あったら暴行・傷害で逮捕している)。
その人間は半年後に組合をやめ、会社もやめた。

そうしたら、公安はいきなり組合員7名を逮捕し、30ヵ所をガサ入れした。
「革マル派が脅して会社をやめさせた」強要罪だという。
普通なら事件にもならないのに、7名は半年も拘留され、今も裁判中だ。
新聞は公安発表を鵜呑みにして「革マル派幹部逮捕」と報じた。
「革マル派ではない。事件は冤罪だ」と組合側は言っている。

しかし新聞をみた人は
「革マル派なら捜索されても仕方ない」
「労組にはまだ過激派がいたのか」と思ってしまう。
これは恐ろしい。
その後、何度もガサ入れは行なわれ、
帳簿や通帳、名簿が大量に押収された。
どうもこれが主目的だったようだ

「革マル派かもしれない」という予断だけで公安は何でもやれるのだ。
そして、
「過激派は怖い」
「公安は必要だ」と刷り込みをしている。

鈴木邦男「公安警察の手口」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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