恐るべき公安②-01公安の歴史「特高警察の解体と警察民主化」
悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。
青木理「日本の公安警察」
青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動
特高警察の解体と警察民主化
特高警察の猛威
戦前、戦中は、「治安維持法」数々の治安法が制定され、共産党の危険性を煽ることで、予算を獲得し、肥大・強化されていった特高警察が、戦争中は「反戦活動」を妨害し、「反戦を言い出せない雰囲気」を作り上げることで、広島・長崎に原爆が落ち多くの犠牲を出し、本土が空爆され大量の死者が出ても、「保身」で降伏できなかった背景がある。
現代では、「すべての通信を監視する大量監視システム」と公安警察と「対テロ戦争の大義名分」により、全く同じ状況が作られていることに着目して歴史を見ていきたい。
「公安課」の誕生
なぜ、戦後も大日本帝国を信望するファシストを駆逐できなかったのか?と言うと、アメリカ軍の配下にCIC(陸軍諜報部隊)を置く「参謀二部(G2)」が、
「元特高関係者を雇って日本国内の情報収集や謀略活動に利用」し、「味方のスキャンダル探し」などに便利に活用したため、駆逐されず生き残り、再び令和にファシスト国家を築くことになった。
公安警察は、他にも内閣調査室、公安調査庁へと連なっていく。
"治安のシンボル"を温存
戦前・戦中に、「反戦」などの民意が全く反映されなくなった理由に、「内務官僚」による支配があった。内務官僚たちにとって、中央集権的な警察組織は"治安のためのシンボル"であり、自らの力と権益の源泉でもあった。
中央集権的な警察や憲兵、特高を指揮することで、全国隅々まで国民の思想や行動を支配し、「官僚支配の根幹システム」になっていた。
昭和や令和の時代でも、公安や警察を指揮することで「官僚支配」が可能となり、民主主義が奪われた。
GHQの警察観
戦前10ヶ年間における日本の軍閥の"最も強大なる武器"は、中央政府が、都道府県庁も含めて行使した「思想警察及び憲兵隊に対する絶対的権力」である。
これ等の手段を通じて、軍は政治的スパイ網を張り、言論集会の自由更に思想の自由まで弾圧し、非道な圧制に依って個人の尊厳を堕落させるに至った。
なので、「日本を支配する官僚たち」は何がなんでも手放したくなくて、必死の抵抗をした。そのため、国民を顧みない自らの権益と権力的発想によって描く"理想的な治安像"を守るのに必死だった内務省は、特高関係者の罷免緩和をもGHQに求め続けた。
47年警察法
47年警察法は、「戦前型の中央集権的な警察組織を完全に否定した」ことで素晴らしいものだったが、よく思わない政府が、勝手に法を無視して反故にし、「負担金は打ち切り兵糧攻めにする」ことで、民主化警察を潰し、中央集権化、全体主義化に転換することができるように工作していった。
伊丹万作「騙されることの責任」
もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。
もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない。一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より