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恐るべき公安👮‍♂️①-02公安警察の組織機構「資金と人員」

恐るべき公安①-02公安警察の組織機構「資金と人員」

テロ組織のような悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。

青木理「日本の公安警察」

青木理「日本の公安警察」

青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動



資金と人員

ベールに包まれた活動費

警察には、共産党員宅の家の間取りや指紋や筆跡を手に入れると、報奨金が貰えるシステムがあるほど、反共カルト集団である。

●ベールに包まれた活動費

既述のとおり、公安警察は「国の公安に係る警察運営」などを理由とし、実質的に国家公安委員会―警察庁の直接管理下に置かれている。
各都道府県警の公安警察官は身分上はもちろん地方公務員で給与も地方自治体から支払われているが、活動費は国から支払われている。その活動費を覆い尽くしているベールはきわめて厚い。
「この金は、警察庁から直接各都道府県警備部長ないしは警備課長に渡され、
これについては、各地方公安委員会や地方自治体議会はもとより警察本部長にすら一切知らされない仕組みになっている」
(日本弁護士連合会編「検証 日本の警察」)というのが実態だ。

1998年版「警察白書」によれば、97年度の警察庁予算は最終補正後の金額で約2515億円。うち国費が約1826億円、補助金が約689億円の内訳になっており、
国費のうち人件費、装備や通信、施設費をのぞいた金額が約470億円。
ここから公安警察の活動費が支出されているが、その詳細は一切公開されていない。まして、国から支弁された予算が、公安警察内部においてどのように消費されているかについては、全く外部に漏れ伝わることはない。

公安情報の収集という金に換算しにくい活動をしていることも一因であろうし、後の章で詳述するように、公安警察が協力者という名のスパイを養成して報酬や謝礼と引き替えに情報を得たり、時には非合法スレスレの活動を繰り広げたりしている以上、活動の資金源でもある予算を表沙汰にできないのも当然と言えるかもしれない。

ただし、公安予算として国から支弁された金をすべて警備・公安部門で消費するわけではないようだ。一部は各都道府県警の本部会計に組み込まれ、本部会計分からは地域部、交通部などに所属する一般警察官で公安情報収集に功労のあった場合の報奨費などにもあてられるという。

「外勤警察官も警備(公安)の触覚たらしめる」との公安警察の方針にも基づくが、
巨大な予算を公安部門だけで消費することに対する他部門の反発を和らげるという配慮もあるようで、公安情報収集に関してはかつて警察内に驚くほど広範な部内報奨制度もあったとの指摘もある。

「不法駐車の車の主が共産党員であれば、違反切符へのサインと印鑑の代わりに押させた指印は、筆跡と指紋を両方入手したとして表彰」
「刑事が盗難事件で行った先が共産党員宅であれば、対照指紋が取れるだけでなく
家の間取りなども分かり、それも即表彰の対象」
(小林道雄「知られざる警察経理(中)」、「世界」97年3月号)

青木理「日本の公安警察」

流用、ビンハネ

大川原化工機捏造事件で有名になったが、公安にとっては改竄文書捏造は当たり前、スパイへの報酬もピンハネし放題の環境になっている模様。

●流用、ビンハネ

そもそも警察予算は、公安警察に限らず、あらゆる意味で聖域視されており、極度に不透明な膜に覆われている
二重帳簿による不正経理が恒常的に行われているとの証言も数多い
そんな中でも公安警察予算を覆うベールは、さらに厚さと不透明さを増す
特にその情報収集活動の中核をなすのが協力者獲得作業である公安警察においては、存在しない協力者に謝礼と称して金を支払った工作を施して架空経理を繰り広げてもチェックが及ぶことはない
警察組織で警視総監に次ぐ階級(警視監)で退任した松橋忠光は著書『わが罪はつねにわが前にあり』の中で愛知県警警備1課長在籍時のことをこう振り返っている。

「警備公安警察において、(略)庶務係が職員全員の三文印を用意し、正式な手続による旅費・捜査費を除き、すべて計画的に文書を操作(露骨に言えば偽造である)していることは、(略)知っていた。
しかし、こうした『二重帳簿式』の経理手続は、カネの使い方に不正がなければ、
会計法規が現実の警察活動上の必要性に適応していない以上やむをえないこと
、と当時の私は考えていた」

だが、その実態を調べるように命じた松橋は、予算の多くが上司への餞別や課員の
「手当」に流用されていた事実に驚愕する
警察の本来の活動に使用された経費が3分の1しかなかったのである
(略)私はこの集計表を見て啞然となった」

同様の証言は他にもある。沖縄県警警備部に所属し、
1984年に退職した元公安警察官、島袋修は著書『封印の公安警察』で、
協力者への報酬までが上司にピンハネされている現状を記している。


「スパイ要員との接触費用(工作資金)は、警察庁からその実績(評価)などによって
3カ月あるいは6ヵ月ごとに手渡され、(略)ところが警察庁から支給される必要資金は上司によってほとんどがピンハネされ、われわれ現場の班員に届く頃には
雀の涙程度の金額になっている。班員は自腹を切らされ、やがてはサラ金地獄に落ちるケースもあった


稀少ではあるが、過去にはこうした実態を裏付ける文書も流出している。
1955年の島根県警文書はその代表例であろう(野村平爾ら編『警察黒書』)。
今から35年も前の資料であり、古さは否めないが、全く漏れ出ることのない公安警察の会計資料という意味できわめて貴重なものだ(表参照)。
紹介するのは1955年4月分。警視総監の月給ですら5万円程度の時代の話である。
協力者への謝礼に加え、部内で予算が流用されている実態が浮かぶ。

青木理「日本の公安警察」

硬直化したままの共産党対策

●硬直化したままの共産党対策

警備・公安警察の予算は、戦後の共産党対策を起点に、特に60年、70年安保闘争対策をエポックな軸とし継続して膨張を続けてきた。80年代に入ると中核派などの新左翼セクトによるゲリラ事件、内ゲバ事件も膨張を理由づけた。

中でも共産党対策が日本の公安警察における予算の主要な柱になってきたという。
その現状は今もさほど変わらず、公安警察を始めとする日本の治安機関においては
旧態依然とした共産党対策を前提としたシステムがマンネリ化、硬直化しながら不正も恒常化し、実体面での予算は膨張を続けてきた。

公安警察ではないが、公安調査庁の内部文書に興味深い資料がある。
行政改革官庁と名指しされている公安調査庁が組織改革を断行した際の方針を記した「業務・機構改革問題の概要」(1996年2月付)の一部だ。

「今後の公安庁が生き残る道は、日共部門を財源にして他の重要部門に振り分けるとか、入管協力に回すといった形であろう」

同庁に関しては7章で詳しく触れることになるが、文書は治安組織の中で依然として共産党対策が予算獲得の名目になっていることを如実に示している。
公安警察で重視されるのは、あくまでも情報である。
情報に基づいて危機をあおり続けさえすれば、予算は無限の膨張を繰り返す

それをチェックすべき機能は存在しない
公安組織の硬直化を許してきたのは極度の秘密性と、
刑事や交通など他の警察部門には存する
事件や事故発生件数などの客観的指標の希薄さゆえでもあったろう。

青木理「日本の公安警察」

組織人員

●組織人員

警察職員は1998年度時点で、警察庁、警視庁、各道府県警警察職員を全て合わせて約26万3500人に上っている。
このうち、機動隊員も含めた警備専従者が警視庁で1万3000人、全警察では5、6万人との推計データもあるが、実際に公安警察部門の職員が何人に上るか、これに関してもやはり近年は公開されておらず、明確な資料はない。
だが、公安警察に膨大な人員が割かれていることは、警視庁の現有勢力を例に取るだけても一目瞭然だ。
手元にある資料によれば、1999年現在で警視庁公安部の公安総務課が抱える課員は約350人、公安1課も同規模の約350人、公安2課が約170人。
これてもかつてに比べると「激減した」(ある公安部員)といい、公安総務課はピーク時の1975年前後に500人以上。
公安1課は中核派がゲリラ活動を活発化させた1985年ごろの最大時、600人もの課員を抱える大所帯だった。警視庁であれば、これに100署を超える所轄警察署所属の公安警察官が直轄部隊として加わる


一方、殺人、強盗など凶悪犯罪の捜査にあたっている刑事部の捜査1課は約300人弱。オウム真理教事件など凶悪事件の続発によって、増加してきた結果の数字であるということを考えれば、公安警察にいかに大量の人員が割かれてきたかを推察するのは容易だ。

青木理「日本の公安警察」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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