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恐るべき公安👮‍♂️③-04諜報工作の手口「スパイ獲得の実例②大阪」

恐るべき公安③-04諜報工作の手口「スパイ獲得の実例②大阪」

悪名高い公安の
組織や手口に迫っていきます。

青木理「日本の公安警察」

青木理「日本の公安警察」

青木理(あおき おさむ)
1966年長野県生まれ。ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
90年に慶応義塾大学卒業後、共同通信社入社。
社会部、外信部、ソウル特派員などを経て、
2006年よりフリーとして活動



協力者獲得のケーススタディ

大阪府警の"落とし物"

公安はスパイの運命を自分達の都合の良いように操作しまくる。
例えば、「縁談が破談になる方がプラスとなる」と思うと
妨害して、縁談を破断にさせたりして、都合よく他人の人生をいじる。

●大阪府警の"落とし物"

協力者獲得工作は、公安警察の歴史上、途切れることなく、
連綿と続いてきた情報収集法
である。
その手法はかつても今もさほどの相異はない

大阪府警平野署の公安警察官が忘年会帰りに、
内部資料を落とすという失態を演じたのは、1958年12目のことだった。
落とし主は同署警備課の係長。文書は係長が逐一下す指示により、
部下が協力者の獲得と維持に必死になっている様子が手に取るように分かる興味深い資料である。ごく一部を時系列に沿って紹介する。

工作対象者は若い共産党シンパ
「処置」というのは上司から部下への工作の指示内容、
「印象」というのは接触時に公安警察官が対象者に抱いたイメージ、
③は「接触」を意味し、
⑤は対象団体である共産党への入党を意味する符号である。


[昭和33・7・11]
「印象」前回のお祝い(5000円)に対して、嬉しそうに礼を言っていたし、表情も明るく快活によく話した。
許婚者が彼の自宅を訪問する旨語っていた。

[7・31]
「処置」作業遂行の面から考慮して、破談になる方がプラスとなるので言動には特に注意すること
「印象」同人は報告要領が悪いので、③の都度、是正指導が必要であると認められた。

[8・7]
「処置」対象の安易感を払拭し⑤に対する熱意を促すと共に、常時⑤の意義を確認させ、督励に努めるよう留意されたい。
「印象」本人は明るい表情でよく話したが、結婚問題を気にしているため、
作業上のことはチョット消極的。

[8・25]
「指示事項」結婚問題で相談したり、意見を求めたりすること。
これは信頼と親密度を急速に高めるために役立つ。

[9・8]
「指示事項」これからは週1回以上の③をして、この結果を聞きたい。

[9・17]
「印象」当方のために「なにか」をしなければ――という気持ちが充分読みとれた。

報告書は以下、複数の協力者、あるいは協力者候補に対する同様の記述が延々と続くが、ここで報告書内の協力者工作のうち代表的な一例を、可能な限り原文に忠実に再現してみようと思う。
平易にするため隠語や符合の一部を平文にしたが、原則的に推測を排した。

青木理「日本の公安警察」

1958年・大阪での工作

検討会

「検討会」では、統一協会の「タワー長会議」のように、
ターゲットの調理方法などを決める。
今回の場合は、一般協力者としての獲得条件があると判断された。

●検討会

1958年9月1日。大阪府警平野署警備課の係長「つじい」と部下の「さとう」「くらさき」は、ある男に対する協力者獲得工作のため、一般の警察官「はやし」を同席させて検討会を開いた。
時刻は午後1時から2時間。
ターゲットになったのは対象団体組織の幹部K夫妻と親しいA(いずれも報告書内は実名)
狙いはAを通じてK夫妻及び団体内部の情報を得ること
そしてA自身を忠実な協力者として団体内部に送り込むことだった。

検討会ではまず「くらさき」がAの本籍、住所、家族構成を報告
続いて基礎調査によって判明したAのデータを発表した。

「以前、Aは大阪市浪速区内で駄菓子店をしていたが、夏はアイスクリームの外交員として働いていた。
現在はK夫妻宅の付近に居住し、夫妻宅で開かれた会合などに出席。
Kから政治意識を買われて信頼され、親交があるようです」

続いてAと面識がある警察官「はやし」が報告した。

「Aとは現住地に転入以来、交際を続けています。
Aが世話をして防犯懇談会を開催した際に懇意になりました。
以来、数回にわたって飲食を共にし親交を重ねています
Kの動静や集会情報など自発的に提供してくれており、好意的、協力的です。
前にAの家で酒を飲ませてもらったので、今度は私の家に招くことになっています」

「はやし」の報告を受けた「つじい」らは、Aが情報提供に好意的であり、
Kの支持者として信頼されていることから一般協力者としての獲得条件があると判断。
今後指導・説得すれば対象団体内に正式に加入し、情報提供をするスパイになる可能性が十分にあるとにらんだ。
「つじい」らは方針を固めた。

「家に招待する約束になっているんだな。では、まずはAと親交のある「はやし」を介して接触を図ろう。
場所は『はやし」の家では防衛上問題がある。東住吉区のお好み焼き屋にしよう。
場所の設営は「くらさき」がやれ。日取りは9月4日の午後7時。
前日の午後は「はやし」と「くらさき」の2人が場所を点検して、
店の主人に「はやし」を紹介しておけ。今回は手がかりをつかむ程度でいい。
協力要請も行わず、暗示する程度にしておくこと

それから今後は作業員にまかせて「はやし」は手を引け。Aに悪感情を与えない程度に距離をおくように

全員が了解し、午後3時、検討会は終わった。

青木理「日本の公安警察」

お好み焼き屋にて

●お好み焼き屋にて

当日の午後7時10分。
打ち合わせどおり、Aを連れた「はやし」が東住吉区のお好み焼き屋に入った。
店内に客として待機していた作業員は、「はやし」が席に着いて注文を済ませ、
トイレに立つと、わざとらしく大きな声で呼び掛けた

「珍しいところで会ったな。こんなところにも来るのか」
「ちょっと連れがいてな。まあ一緒に来いよ」
席に戻った「はやし」は作業員をAに紹介した。

「こいつ、同じ会社の者でね、いい男なんだ」
同じテーブルに加わった作業員はできるだけ自然に場を盛り上げた。
Aは表面上は明るくこだわりもみせなかったが、作業員に対しては当たらず障らずの受け答えをしていた。
作業員はAが直感的に作業の意図を察知したと感じたが、酒と煙草、パチンコなどが好きだというAはお好み焼きを口にしながら対象団体の動向や活動内容を話した。
作業員がテーブルを離れた後、Aから「あの人、何をしている人なんだ」と聞かれた「はやし」は
「保安関係の仕事だよ」とだけ答えた

青木理「日本の公安警察」

協力の開始

「検討会」では、Aに対する報酬金を与えることが決められる。
報酬を与えるとは、情報提供と引き替えにカネを受け取るのは、
協力者(スパイ)として後戻りできない一線を渡ったことを意味する。
つまり、公安に逃げられないよう捕らえられたということである。

●協力の開始

翌日の午前10時。署内の1室に「つじい」と「くらさき」が顔をそろえ、
再び検討会が開かれた。

Aは我々の意図を察知している気配がある。
徐々に作業目的を説明し、協力要請する。
対象団体の主義主張を説明し、視察の必要性を説こう」


そう判断した彼らは9月9日、「はやし」を通じてAを秘密裏に平野署に呼び、
説得にかかった。
もともと対象団体に批判的な感情も持っていたAは意外と素直に説得に応じた
「わかった。絶対に協力関係がバレないようにしてほしい
だが、わたしは対象団体のメンパーじゃないから参考程度しか分からないぞ」
「つじい」らはこう答えた。
「われわれの指示どおりに動いてくれればいいんだ」
彼らにはAが育てがいのある男に見えた。

いずれは正式に対象団体に加入し、情報を持ってくる強力な協力者に仕立て上げる――そんな腹づもりだった。
協力を約束したAに対し、「つじい」たちは不安や動揺を与えないよう配慮する一方で、幹部Kと親交を深めつつ接触するよう指示した。
Aは期待に応え、たちまちK宅で行われた集会の様子や参加者といった情報を提供するようになる

徐々にKの信頼も得るようになったAに対し、
9月22日の検討会ではAに対する報酬金を与えることが決められる
4日後の夜。「つじい」らはAに団体機関紙の入手を持ちかけ、快諾を得ると2000円を手渡した

「機関紙代や交通費にかかる費用の足しにしてくれ」
そう言う「つじい」らにAは、いったんは「そんな心配はしなくていい」と固辞したが、結局は現金をポケットにしまい込んだ。
情報提供と引き替えにカネを受け取るのは協力者として後戻りできない一線を渡ったことを意味する
工作は大きなヤマを越えた。今後の接触は安全を考えて西成区の旅館が使われることになった。

青木理「日本の公安警察」

洗脳工作を推進せよ

●洗脳工作を推進せよ

順調にいっているかにみえた協力者工作に突然、
障害が発生したのはその直後のことだった。
「つじい」らから機関紙入手の依頼を受けたAは9月末、
団体の幹部に対し、2部も購読を申し込んでしまったのだ。

幹部から「どうして2部も必要なのか」と問われたAは
「知り合いに革新的な考えの人がいるので読ませたい」と答えた。
だが報告を受けた「つじい」らは焦った。


「不審に思われたかもしれない」
「最悪の事態を考えて作業を進めろ」


10月最初の検討会で、「つじい」らは作業にブレーキをかけねばならないと決意した。
「幹部はAに対して不審を抱き、今後は十分監視するだろう。
当分は事態を静観し、積極的な活動は避けよう」


だが、注意を払いながらもAは順調に情報提供を続けた。
翌年には地方選挙も迫っていた。
「つじい」らは慎重な作業をするよう配慮しながら、
Aを優秀な協力者にすべく全力を傾けた。
Aが対象団体幹部に対して批判的な態度を取ると
表面上は幹部に従うよう説得し、
一方でAがいかに識見があり政治的感覚に優れているかを褒めそやした。

Aは確実に「つじい」らの協力者として育ちつつあった。

10月末で途切れているAに対する工作報告書の末尾はこう締めくくられている。
「11月の着眼事項 Aの洗脳工作を推進し、団体外支持者として育成する。
時機をみて作業目的が対象団体への加入にあることを示して協力と決意を求める」

青木理「日本の公安警察」

伊丹万作「騙されることの責任」

もちろん、「騙す方が100%悪い」のは紛れもない事実である。
その上で更に「騙されることの責任」を考えよう。

伊丹万作「騙されることの責任」

もう一つ別の見方から考えると、いくら騙す者がいても誰1人騙される者がなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。
つまり、騙す者だけでは戦争は起らない。騙す者と騙される者とがそろわなければ戦争は起らない一度騙されたら、二度と騙されまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない騙されたとさえいえば、一切の責任から解放され、無条件で正義派になれるように勘違いしている人は、もう一度よく顔を洗い直さなければならぬ。
伊丹万作「戦争責任者の問題」より


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