仕事って、なんだろう?:「なりたくない職業」のはなし
話題のNetflixオリジナルドラマ『地面師たち』を視聴しました。
作中、「地面師という仕事」と発言した人物に対し、別の人物が
「地面師は、仕事じゃないですよ。犯罪です」とたしなめるように言う場面があります。
この場面を見て、ふとちょっと苦い記憶を思い出しました。
小学生の頃の、道徳の授業。
「なりたい職業となりたくない職業を答える」という回がありました。
当時の私は、「なりたくない職業ってなんだ...?」と思って、とりあえず悪いことはしちゃいけないよね、ということで「さぎ師」と書きました。
当時は山下智久さん主演の「クロサギ」というドラマがブームで。
そのドラマの決め台詞が、
「職業は...詐欺師、だ」
だったんです。
で、ふとそれを思い出して、あぁ詐欺師は犯罪だからなりたくないかも、と思って書いた。
当時の担任の先生は、子供ながらに、なんだか馬が合わないと感じていた人でした。
たぶん相手も私に対して、そんな感じの印象だったのでしょう、やたらと当たりがキツかったものです。
で、私の回答を覗き見て、
「詐欺師って...職業じゃないでしょう」
と、鼻で笑いながら言ってきました。
私は、なんだかすごく子供じみた回答をしてしまったのかな、と思って恥ずかしくて、泣きながら消しゴムでごしごし消して、書き直しました。
隣の席の子が私を慰めようとしたのか、先生に聞こえるように
「山Pも、職業は詐欺師だ〜って言ってるけどなぁ?」
と言ってくれたのが、とてもありがたかったのを覚えています。
それで、結局「お医者さん」と書きました。
理由には、「血を見るのが怖そうだから。」
他のクラスメイトの解答も、大半はお医者さんでした。
理由は「血が怖い」だとか、「人の命がかかっているからとても大変そう」などで、今度はズレてないと思って、少しほっとしたのを覚えています。
結局あの授業の目的はなんだったのか、いまだに理解できていません。
何を書いたら先生は満足だったのでしょう。
いまだにあのときの、情けないやら恥ずかしいやら、私一人がおかしな回答をしてしまったかもという不安や、何を書くのが正解なのかわからない焦りやら。
そういう感情を思い出して、胸がきゅっと苦しくなる時があります。
それでも今の私なら、「当時の私、ちゃんと考えてるじゃん!」って思えます。
正直あの授業はつらい思い出ですが、「何が正しかったんだろう」みたいなことを考え続けているという点では、身になっているのかもしれません。
ドラマ内の「地面師は、仕事じゃないですよ」という台詞には、はっとさせられました。
誰かの役に立って、その結果として報酬を得ることが「仕事」と呼べるものなのであって、「お金を稼ぐ」ことが「仕事」なのではないのですよね。
先生の言っていた「詐欺師は職業ではない」というのは本当にその通りで、当時の私の解答はある意味では「質問の意図を汲めていない」つたないものだったのでしょう。
でも大人になって振り返った今でも、やはり「なりたくない職業を答えよ」という問いに対する回答としては、良い逃げ道だったと思います。
大人になった今でも、難しい問いに直面することは日々たくさんあります。
なによりも誰かを傷つけることのないふるまいや言葉を大切にしていきたい、と改めて思いました。
お仕事されているみなさま、いつもお疲れ様です。
いつもありがとう。
お互い気楽にやっていきましょうね!