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夜はいつでも回転している

92夜 All Tomorrow's Parties


報酬はぼちぼち上昇傾向にあった。鰻ほどではないが鯖くらいだ。鯖がどこへ行くのかは知らんけど。

社長が言う。
「別に減るもんじゃないんだからいいじゃない」

おかんも妹も言う。
「ええやん。そんくらい減るもんちゃうし」
「税金みたいなもんちゃうの?」

こいつら全員焼きそばだよ。
具のない焼きそばだ。減ってんだよ!私の何かがさ!

そいつは目に見えるわけじゃないけどさ。私の中にあるとかでもない。私の何かは夜の中にある。ここが昼間でもどこかはいつでも夜なんだ。日々回転し続ける夜の中に私の何かはあるし、それは間違いなく減っている。誰も見えないし誰も知らないから私の何かは無いことになっているけれど、私の何かは確実に存在してる。
 

熱い風呂を沸かして閉店間際の店で買ったばかりのスカーフを首に巻いて上下白のジャケットとパンツ着たまま湯に浸かる。ヴェルヴェットアンダーグラウンドのニコみたいな格好だ。ソファーで腐り始めている元カレの携帯がメッセージを受信し続けている。頭のてっぺんにハサミが突き刺さっている元カレとそれを写真に撮っている自分を思い出してわらけてきた。ハサミの取手の輪っかが小さいネズミの耳みたいでかわいいってアホか私は!
 

風呂場で笑うと声が響いていつもより笑っているような気がする。笑い疲れて湯船に浸かりながら上を見ると換気扇がうるさく回転して笑い声の残響が吸い込まれていった。夜の中にある私の何かはまた少し減っていく。


End

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