夜はいつでも回転している
84夜 月を釣る
男と女が部屋の中にいた。
部屋の隅には幽霊がいた。
幽霊は何かをしゃべっているが男女には聞こえていない。
幽霊にとって1日は24時間ではなくなった。
腕時計の針は既に鳥のように夜の中へ飛んでいった。今頃はアフリカ大陸に向かっているのかもしれない。
幽霊は老人であるのと同時に子供でもあった。
男が何かを決断できないでいるのを女は見つめていた。女はタバコに火をつける。女の匂いとタバコの煙が混じり合う。幽霊はかつて自分がこの男だったことを思い出していた。
窓の外を見ると見知らぬ女たちが湖に髪を垂らして月を釣り上げている。
End
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