オールド・チルドレン[幻聴ラヂヲ]
今日も聞こえてきたどこかの星の怪電波
インタビューか対談のようだったが、
テーマは「オールド・チルドレン」という変なコトバだった。
「アダルト・チルドレン」は、この星でも一時よくいわれてきたが、
もっと歳を取ったケースのことらしい……
◇ ◇ ◇
「今後、期待されるのは、永遠の子どもじゃないかと思うんですよ。
子供の頃に学習し大人になればそれを生産に役立てるというのが、これまでの常識でしたが、AIとロボットの普及が進むと従来の生産活動の多くは彼らがやってくれます。大人の仕事が大幅に少なくなるんです。
でも、その学習データは人間の積み上げてきたもの。
いずれAIが勝手に研究もやりはじめるんじゃないかと云われたこともありましたが、だいぶ見方が変わってきました。
というのも、AIには自分の中から、やりたいことがわいてくるということが無いんです。探し出してくることは出来るけれど、それはすでにネット上にあるもの。
ですから、最初のひらめき、アイデアとかテーマといったものは、人間が与えてやる必要がある。これからも」
「なるほど。大人になる必要がない。大人にならない方が良いというのは、そういうことなんですね」
「これまでだと、思いつくだけなら誰だって出来る。カタチにしなきゃ意味がないと云われてきましたが、カタチにするのはAIがやってくれる」
「画像生成はすでにそうなってますね。下手くそな絵を、AIが整えてくれる。望めば巨匠の油絵のようにも仕上げてくれます」
「もう少しすれば、空飛ぶ絨毯とか、ランプを擦ればエージェントが出てくるとか、そういうものまで設計してくれるようになりますよ」
「なんとなくわかります。今でもお金さえかければ、ある程度は出来るでしょうから。ただ、人間は設計するまでもなく、エンジンつけなきゃムリだとか、そんなもの作っても売れないとか、やろうともしない」
「人間の直感って、本来、超能力のようなポテンシャルがあると思うんですが、大人になるにつれ、ごく狭い常識にとらわれるようになります。自分の仕事の範囲で、使えるか使えないかと判断する。プロというのは、その判断に長けていることだったりしますから」
「出来もしないことを考えるのを半人前、素人扱い…… ともかく、見下しますね。云われたことをやってりゃいいんだ! 自分で考えるなんざ、十年早い! とかね。これまではそれが正しかったんだけれども、そこが変わってくるということですね」
「ええ。過渡期は大変ですけどね」
「ですね。下剋上ですもんね。これまでのやり方をマスターしている年配者と、半人前だけど常識に染まっていない生意気な若僧と。ことごとくぶつかりそうだ」
「口先だけじゃダメですよ。AIを使いこなして成果を上げないと。
今はある程度、仕事の仕組みやプログラムのコツがわかってないとAIを生かせませんが、その割合が減っていくと思います。つまり、若手社員どころか、学生の思いつきでもAIがちゃんとサポートしてくれるようになるはずです」
「それがさらに進めば、大学生よりも高校生、中学生の方が活躍できるかも知れない?」
「そこは単純じゃないと思います。未成熟な感性には素晴らしい面もあるけれど、不安定とか乱暴とか自己中とか、そういう面もあるわけです」
「『オールド・チルドレン』というのは、従来の大人ではないけれども、ある種の成熟はしたほうがいいという考え方ですね」
「ええ、十二歳の子と、ローティーンの感性で三十年生きてる『オールド・チルドレン』とでは自ずと違うと思うんです。AIやロボットとの関係についても、うまく操作できるということと、気心が通じるというのはまた別ですからね。信頼関係が深まるには時間が必要です……」
◇ ◇ ◇
先日、動画サイトで『AKIRA』を観ましたが、あそこに早老症とおぼしき子供たちが出来ますが、作者の中に降りてきた幻覚は、実は「未来人」だったのかもしれません。子供の感性のままで歳を取る人たち。超能力者に見えたのは、遠隔操作でAIやロボットを駆使していたからかも。