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[歴史ミステリー]八重歯とエクボの古代秘史

最初に、質問

 お嬢さんにあると八重歯、そうでない人にあると何?

 お嬢さんにあるとエクボ、そうでない人にあると何?

 これは、高齢者施設のレクでやっていたクイズですが、プラスαの話がないかと探していて、偶然、こんな話を見かけました。今回のミステリーは、そこからはじまりました……。

「『八重』というのは『ヤーウェ』で聖書に登場する『神』です」

 ネットというのはおもしろいですね。「八重歯」を調べていたらそんなものがヒットした。「いろは歌」についての考察でした。

 ご存じの方も多いと思いますが、「いろは歌」は暗号だという話があって、いろんな解読が試みられています。有名なのは、下の折句の「とか(咎)なくてし(死)す」が、柿本人麻呂の刑死を暗示しているという推理です。たしか『猿丸幻視考』という小説で有名になりました。
 ところが、ネットで見かけた記事では、暗示されている人物は人麻呂ではなく、「イエス・キリスト」だと論じられていました。根拠は、上の折句の「やあえ」はヘブライ語の神「yhwh」だと。もちろん、それだけじゃなく、「いろは歌」全体をヘブライ語で解釈した上でのことです。

 その解説をみた瞬間、「八重歯」と「鬼歯」の対比は偶然ではないかも、と気づいたわけです。「鬼」には幾つもの意味があるのですが、その中には、人ならぬ存在という意味で「神」という意味もあったのですよ。
 また、「鬼」には「異人」という意味もあります。「化け物」というイメージは、外国人のことだったろうというのが今日的な解釈です。体格が大きくて肌の色が違って、髪の毛が縮れ毛で、と鬼の特徴を並べていくと、確かに中東辺りの人たちのことかと思えるフシはあります。
 ただ、中東の人がなんで日本に来たのか? その足取りがイメージ出来るのは異端の歴史学者と一部の歴史マニアだけでしょう。教科書では一切ふれられていませんし。まあ、この話をしかけると、「ああ、トンデモね」と読むのをやめる人が多そうなので、今回はしません。

 なるべく常識的な範囲で、たとえば、鉱山のことを調べている人の中には鉱山征服者がいたと考える人がいます。現代でも、発展途上国の鉱山の多くは先進国の民間企業が経営してますよね。鉱山というのは進んだ技術がなければ活用が出来ません。途上国のボスとしては、自前で経営して苦労するよりも、配当をもらったほうがトクだという判断になるわけです。この発想は、おそらく古代にもあっただろうと。
 鉱山資源は、昔から世界的に流通していました。それだけ貴重なものであり、利益が大きかった。つまり、鉱山は開発できる集団にとっては文字通り宝の山。世界を股にかけた鉱山メジャーともいうべき集団がいたことは容易に想像出来ます。

 ざっくり云って、中世以降は日本人の手によって鉱山開発が行われるようになったと思いますが、古代において鉱山開発をやっていたのは、特殊な渡来人、渡来系氏族だったと思います。つまり、鉱山=鬼ヶ城、鉱山民=鬼という図式。

 それが、「八重歯」と「鬼歯」にどう関係するのか?

 歯列からハミ出した歯、それを醜いと感じたとして、どうして「鬼」と表したのか? 犬とか狼とかで良さそうなものです。それをわざわざ「鬼」と形容し、それに「八重」を対比させたというあたり、偶然ではなさそう。
「鬼」が「鉱山関係者」を指す隠語だったとすると「鬼歯」という表現が出てきた理由が分かりますし、それに「八重歯」が対比される深意も想像できます。鬼の領域(鉱山)にもお姫様(支配者の娘)がいた。そのすさまじい身分格差のことを「八重歯」と「鬼歯」で暗示していたのではないでしょうか。「八重」は単なる微笑ではなく、それも隠語だった。
 そしてそんな言葉が流布したというのは、庶民がそれを別世界のことではなく自分の身にも及ぶことを怖れていた証拠では……。

 では、「えくぼ」と「あばた」のほうはどうか?

 えくぼを、ほっぺたをすぼめた時の顔と解釈すれば、火吹き棒を使う仕草がオーバーラップします。火の勢いを盛んにするために筒を使って息を吹き込むあれです。だいたい片目と火吹きの顔は、タタラ(製鉄)に関わる象徴です。鬼の領域には二種類あって一つは鉱山、もう一つはタタラ(製鉄)場だったと思われます。
 そう考えると、「あばたもえくぼ」のフレーズも、鬼(鉱山・タタラ)に関係する言葉だったのではないかと。同じ顔の凹みでも、タタラの長者の娘だと「えくぼ」。労働者の女たちだと「あばた」ということです。
 これには悲しい裏付けもあって、『もののけ姫』でも描かれましたが、タタラ場の労働者には、ハンセン病や天然痘、疱瘡の元患者たちがいたようです。天然痘、疱瘡の痕というのが、まさに「あばた」。
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まとめ

 日本の成り立ちには、鉱山経営のためにやってきた渡来人が大きく関わっていたのではないか。それは朝鮮半島の人たちではなく自分たちとは明らかに異なる風貌の異人!
 そして、鬼の領域(鉱山・タタラ)には二種類の鬼たちがいた。長者(経営者)と奴隷のような者たち。
 しかもそれは後の時代にも解消されることなく、上の者たちは別の形で有力者であり続け、奴隷的な者たちの多くは鉱山・タタラが無くなっても蔑視され続けたのではないか……。
「八重歯と鬼歯」、「エクボとアバタ」の話は、鬼の話として語りつつ、実は、後の資本主義に通じる格差社会のおそろしさを語っていたのかも知れません。

 古典作品や昔話、歌などには隠された意味があるとよくいわれますが、「八重歯と鬼歯」「あばたもえくぼ」にもしっかり秘密が隠されていた!

 以上、思いつきを粗雑な知識でつなぎ合わせた推理ですが、いかがでしょう? 歴史の一端にふれたような気がしているのですが……。
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暗号文としての 「いろは歌」
https://www.historyjp.com/article/512/


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