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ポイント長者の時代[幻聴ラヂヲ]
今日も聞こえてきたどこかの星の怪電波
その星には、クルマを売っても赤字だけど、会社としては儲かってる…、そんな奇妙なクルマメーカーがあるらしい。
仕組みはこうだ。
そこが製造しているのでは、すべて電気自動車。
はじめは将来性が見込まれ赤字続きでも株価だけは高く、それでやっていけた。が、電気自動車への移行はなかなか進まず、徐々に暗雲。
ところが環境問題への関心が急速に高まり、排ガスやCO2を一定以上排出するクルマには罰金を課すことが決まった。負担するのはメーカーだ。
この規則のユニークなところは、基準より排出量が少ないクルマを製造すると、逆にポイントがもらえること。つまり、製造するクルマの半分を電気自動車にすれば罰金は支払わなくても済むのだ。
しかし、両方を製造できるような力のあるメーカーは少なかった。
化石燃料車しか製造出来ない大多数のメーカーはどうしたか? 罰金を払うと世間体が悪いので、電気自動車の専業メーカーから、ポイントを買うことにした! 何しろ電気自動車の専業メーカーは化石燃料車を製造していないから、ポイントが山のように溜まる。
ずっと赤字続きだったその電気自動車メーカーは、いっぺんに黒字転換。クルマ自体は相変わらずだったが、ポイントが莫大な利益をもたらした。
どっかの星だと、因暴だと騒がれそうな話だが、
その星では、地道に努力している人は報われるという、
美談になった。
しかも、その話には後日談があり、なんとそのメーカーの創業者X氏に、宮廷からお呼びがかかったのである。力を貸して欲しいと、王様から直々に頼まれたそうだ。絵に描いたようなドリーム・ストーリー。
この話がまたウケた。目下、民衆は大いに湧き立っているらしい。
聞えてきた話はここまで。
もちろん、うまくいくことに越したことはない。他人の不幸を期待するような趣味はない。
ただ、王様は一体どんなつもりでX氏を登用したのか? その点がやや気にかかる。政治家としての能力は未知数だからである。
もしかしたら、例のポイント制度に目を付けたのではあるまいか。
つまり、夢のような未来を作るためには大きな投資が必要だ、と民衆に信じ込ませて莫大な支出を黙認させる。しかし成果はなかなか現れない。このままでは国家財政が破綻するというところで、例のポイント制度を導入……
もっとも、それが悪だと決めつけるつもりはない。
黙々と「地域の清掃」や「学童の見守り」をしている人たちにポイントが付与され、金持ちがそれを買うというのなら、まごうことなき善政である。
しかし、環境保護を第一にした制度ならばどうなる!
庶民の家には、ソーラーパネルが無い=減点! 庶民の使う廉価な製品はエコじゃない=減点! 一方、富裕層はソーラーパネルでポイントを稼ぎ、広い庭の緑でポイントを稼ぎ、電気自動車をはじめとする性能の良い製品でポイントを稼ぎ、それを庶民に売ることでさらに豊かになる!
とまあ、成功者の反対のオレには、そんなことが案じられる。
「そういう陰気な想像をしてるからアナタはダメなのよ!
この星がひどいことになってるのも、
アナタみたいな被害妄想家が多いせいだわ!」
追記
X氏の担当が決まったらしい。スーパー倹約プロジェクトのアドバイザーだそうだ。これはうっかりしていた。彼の偉大な実績はもう一つあった。
買収した会社従業員の異次元の解雇…
成功すれば、ますます人気が高まるな