[暮らしっ句]秋日和1[俳句鑑賞]
「出かけたくなる」編
出掛けねば 損するやうな 秋日和 熊谷みどり
そうそう! と思いましたか?
それともモヤっとしましたか。別に行きたいところなんかないし…とか。 心を映す鏡は、こんなところにも。
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晴れがましい席は好きです 秋日和 林朋子
親族や地域、仕事関係の集まり… 賛否や好き嫌いはあると思いますが、「晴れがましい席」が愉しかった時の思い出って、よくないですか?
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余所行の母 助手席に 秋日和 志水やおい
普段なかなか出かけられないお母さん、なのでしょう。暮らしに追われる生涯で、このお出かけも自分の愉しみではなく、結婚式や法事だったのかもしれませんが、ただよう空気があたたかい。
例によって、トンデモ、
腸内細菌の役割が知られるようになりました。昔の日本人の食事は西洋の栄養学から見れば粗食ですが、頑健な人が多かった。それは食べ物(有機農法+添加物なし!)と腸内細菌が良かったからだそうです。腸内細菌がうまく必要な栄養素に転換してくれていた。それに引き換え、今や国中が病気の百貨店状態。専門家の人、本当のことを云ってくださいよ、です(日本人には油、小麦粉、乳製品は合わないみたいです)。
何の話? 心にも、同じような事情があるのではないでしょうか。
昔は、苦労を栄養に転換できる人が多かった。それが何かはわかりませんが、腸内細菌に似ているとすれば、育てるのには時間がかかり、こわれるのは短時間。善行を積む大切さというのは、そういうところにあるのかも。
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「出かけると、何が待ってる?」編
トラツクで婚の荷の発つ秋日和 森良子
「婚の荷」のトラック… 昭和も中頃までの光景ですが、確かに見かけた時には気分が上がりました。時代はすっかり変わりましたが、秋日和って、なんだかそんないい光景に出会えそう。
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手づくりの婆の商い 秋日和 大西和子
年老いても、多少なりとも自分で働けて、作った物を直接、道行く人に買ってもらえる… なんて幸せな暮らしなんでしょう!
※ところがですよ。個人による「漬物」の製造販売は事実上、困難になったようです(設備が義務づけられたのと、事務が煩雑になった?)。個人の漬物売りのおばあさんの大半は消えるんだとか… こういうところに不信感を感じてしまいます。消毒vs乳酸菌、どっちが毒なの!
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銀座三越 大増床の秋日和 北村香朗
底辺の大人にはデパートなど別世界で、オシャレにリニューアルされても、ますます足が遠のくというものですが、こんなふうにレトロな言葉で表現されると、親近感がわいたりして。
※昭和中頃のデパートを再現したら、それだけでテーマパークになりそう!
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秋日和 院内学級 絵画展 中里とも子
たまたま覗いた展覧会が良かったりしたら、それも最高ですね!
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和田金に人あふれをり 秋日和 田下宮子
松阪牛のお店でしたっけ? 常識的に考えれば「和田金」で食事を愉しめる人はそこそこの人なわけで、格差の象徴になってもおかしくありません。ところが、作者の視線にはこだわりがない。ネコがあくびをしていた、くらいの描写。その作者の軽やかさが「秋日和」と共鳴しあってる~
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ひよつこりと友に逢ふ町 秋日和 秋葉貞子
会いたいと思えば簡単に会えるのが友達だと思いがちですが、
簡単なのは約束して会うことであって、約束しないで会うことは難しい。「ひよつこり」が、最初の出会いを思い出させてくれる。運命です。
「町」も効いてますね。あの時も、ここで出会ったんだと。
それが、「秋日和」とどう関係するのか?
「秋日和」って、いかにも平和って感じじゃないですか。ともすれば、平凡・退屈のイメージ。でも、宇宙は動いている。
…いつもより遅れたことで事故に遭わなかった人、いつもより早く出かけて事故に遭ってしまった人… 「たまたま」は事故の前にはじまっている。
もちろん、幸運も。
のどかな日常って、
実は未来の伏線に気づく大事な時期かも
「ひよつこりと友に逢ふ」… きっと何か意味があるんです
シンクロニシティというやつです
意味を読み取れるかどうかで未来が決まる!
出典 俳誌のサロン
歳時記 秋日和
ttp://www.haisi.com/saijiki/akibiyori.htm