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[暮らしっ句]犬ふぐり[俳句鑑賞]

 犬ふぐり およそ似合はぬ名をもらひ  楠木君子

 わたしがこの花をはじめて意識したのは平城京跡。今はかなり整備されているようですが、昔は野原、野原、野原で、一面に咲いていました。ご一緒していた女性に名前を尋ねたところ「わたしの口からは云えません」と。そんな記憶はいつまでも残るものですね。
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 真先に笑ひかけしは 犬ふぐり  小山徳夫

 探梅とかで春を探すのとは違う。桜で春を感じるのとも違う。気候が良くなったので野に出かけたわけですが、そしたら一面の犬ぶくりがお出迎え。「待っててくれたんだ、今年もよろしく~」
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 指させば指にかくれて 犬ふぐり  高橋千枝

 仏教のエピソードに何かそんなのがありましたね。師が月を指し示しても、未熟な弟子は師の指先ばかり見て、月に気づかないとか。
 この句の場合は、師匠の指が邪魔で花が見えない! やたらと口数が多いばかりで弟子に気づきを与えられない、そんなダメ師匠の風刺とも詠めます。もちろん曲解です~
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 野にありて 賎しからざり 犬ふぐり  山本喜朗

「粗野」とか「野蛮」とか「野」は差別用語でもあります。わたしにはそんな感覚がなかったので、ちょっと意表を突かれましたが、思えばそれはわたしが「野」だからですね。
 ちゃんとしたお仕事、身分の人からすれば、「あいつら何考えてるんだ」「おこぼれで生きてる連中」とか、そんな感じなのでしょう。野良的存在。
 そういう視線に対して、反抗するとか萎縮するのではなく、「賤しくならないよう、そこだけは気をつけなさい」と。そんな教えにも聞こえました。
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 遠い遠い遠い悲しみ 犬ふぐり  中原幸子

 どんなつらいことも「遠い」を三度繰り返せば、かなり薄れます。でも、消えることはない。作者は決して忘れない。しかし、カタチは変わる。痛いような感覚は蒸発し、いわば悲しみが純化され結晶化していく。
「犬ふぐり」について、星とか空のイメージを重ねた句がたくさんありましたが、この作品においては、悲しみが結晶化しさらに風化して砂粒のようになったのが「犬ふぐり」だと。
 色も当初は痛々しい鮮紅だったかもしれないけれど、長い歳月を経た今はどこまでも静かな青色……。
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 犬ふぐり 古墳に出入り穴一つ  朝妻力

「犬ふぐり」といえば、わたしの場合は奈良なんです。ですから、「古墳」との取り合わせは自然。しかし、この作品を取り上げたのは「出入り穴一つ」にひっかかったから。古墳の穴は「入り口」で「出入り口」じゃありません。「出口」は冥界。まあ、屁理屈ですが~
 でもそう考えると「犬ふぐり」が地の「冥界」とこの世界の境界の花に見えてくる。一つ一つの小さな花が名も無き人々の墓標のように思えます。
 思えば、名もなき者にふさわしいのは墓石ではないかもしれませんね。「犬ふぐり」のように気づかれなくてもいい。踏まれてもいい。春の時期、ひととき咲いて微笑めればそれで十分。
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 子の眠る 墓地に煌めく 犬ふぐり  大関とし子
 子の眠る 墓地の日溜 犬ふぐり  大関とし子

 一句目は「犬ふぐり」に彼岸、故人を見ている作品。「煌めく」とありますから、故人はかなり若かったのでしょう。ところが二句目になるとかなり趣が違います。「犬ふぐり」は、のんびりと日向ぼっこしているかのようですから。二つの句の間には何があったのでしょう。 
 一句目はおそらくお墓の前に立ってすぐの、こみ上げる思い。それが時が経つにつれ変容したのだと思われます。通常のお参りの後、しばらくそこに留まっておられたのではないでしょうか。すると何ともいえないのどかな空気に包まれるようになったと。
 その安らぎは、彼岸に対する此岸ではありません。それもまた非日常。
 スローライフじゃないですけど、お墓参りもスローにしたほうが豊かな気持ちになれるのかもしれません。
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 犬ふぐりさへ見逃さぬ 小さき風  岩瀬操舟

 口調はキツめですが、「犬ふぐり」が風に倒されたり飛ばされることはないわけで、試練のような意味ではありません。たぶん、どんな小さなものにも恵みはもれなく配られる、そんなニュアンスなのだと思います。「小さき風」はサンタさん。
 思えば、「風神雷神図」の「風神」も大きな袋を持っていますね。あの袋から風と一緒にプレゼントが振りまかれる、そんなイメージ。
 絵に描いて貰えませんかね。村上隆さーん~
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 諸手にて 掬ひて見たき 犬ふぐり  小林伸江

!? 

ご想像におまかせします~


出典 俳誌のサロン 歳時記 犬ふぐり
歳時記 犬ふぐり
ttp://www.haisi.com/saijiki/inuhuguri1.htm


※見出し画像は、AIで生成したものですが、犬ふぐりとは違います。
本物はネットでご確認ください!



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