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作詞講座 第五回 「リピート」
作詞講座を連載しているが、巷に「あなたも作詞ができる」みたいなテキストはたくさんある。
そんな、作詞テキストでよくある作詞の方法。
『作詞はサビのリピートからキャッチーなキメフレーズから作ろう!
サビはその繰り返しでオッケーよ。』
そんなのが多いような気がする。
でも結構日本の歌って、サビが全くの繰り返しのリピートって少ないんじゃないかな。
あっても一単語ぐらいの繰り返し。
一番と二番はサビでも歌詞が違うこと多くない?
洋楽、アメリカンな歌だと、同じフレーズをしつこく繰り返し、一番と二番、そのあとも何度もっての多いような気がする。洋楽ほとんど聴かない人なんで、偏見かも知れないけど。
どうでしょ?
日本の歌でサビが何度も繰り返しになってる歌の例。
ふきのとうの「思い出通り雨」を見てみる。
君の目は寂しそうに遠くを見てる
あの人を追いかけて遠くを見てる
思い出通り雨 も一度降れ降れ
気まぐれ通り雨 優しく降ってやれ
君はただひとりぼっちベンチに座る
あの人と話をしたベンチに座る
思い出通り雨 も一度降れ降れ
気まぐれ通り雨 優しく降ってやれ
「思い出通り雨 ~ 優しく降ってやれ」これが、4番までつづき、さらにリピートされる。
一番と二番でちょっと言葉が違ったりということが多い日本の歌としては、めずらしいつくりをしてる。
いずれにしても、そういうリピートを多用した歌詞の作り方がある。
井上陽水の「氷の世界」。
『毎日、吹雪、吹雪、氷の世界』と三番までリピート。
窓の外ではリンゴ売り 声をからしてリンゴ売り
きっと誰かがふざけて
リンゴ売りのまねをしているだけなんだろう
僕のTVは寒さで 画期的な色になり
とても醜いあの娘を
グッと魅力的な娘にしてすぐ消えた
今年の寒さは 記録的なもの こごえてしまうよ
毎日、吹雪、吹雪、氷の世界
この歌の歌詞作りの話だったと思う。
ボブディランの歌を初めて聴いた陽水さん、歌詞ってこんなで良いんだ!と気がついた。
すなわち、キメフレーズをサビでリピート。そこに至る歌詞は、脈絡無くても構わないと。
りんご売りだろうと、テレビが壊れただの。整ってサビに向かうとか考えないでいいと。
リピートに至る道は、しっかり組み立てても良いが、全然脈絡無くても良いのである。
自分の歌で、サビが一番、二番、三番と繰り返しリピートって、少ないのだが(何せ語りたいことが多くなってしまうんで(笑))、先日作った「プリズムプリズン」という歌。
これはサビのリピートを考えて書いた歌詞だった。
テーブルの上の水を入れたコップに
窓から光がさしこんで
君と僕の間に小さな虹ができて
少し二人を和ませる
僕が投げかけた光は屈折して
君のところまで届かない
多面体のような世界に囲まれて
まるでとらわれ人のよう
プリズムプリズン 僕の想いが
真っ直ぐ君に 届くといいのに
プリズムプリズン 僕の声が
真っ直ぐ君に 聴こえてほしいのに
最初は以下のフレーズをひたすらにリピートするつもりだった。
プリズムプリズン 僕の想いが真っ直ぐ君に 届くといいのに
ところが結局、一番のサビの中でも少し言葉を変え
そして二番を変え・・・
全部リピートにした方が良かっただろうか。
その勇気が持てなかった私である。
言葉のリピートは、サビだけのものではない。
章の頭に同じフレーズ。そんな作り方もある。
岡林信康の「私たちの望むものは」
私たちの望むものは
生きる苦しみではなく
私たちの 望むものは
生きる喜びなのだ
私たちの 望むものは
社会のための 私ではなく
私たちの 望むものは
私たちのための 社会なのだ
昔のメッセージフォークソングによくある手法かも。
『私たちの望むものは・・だ』と、何度も繰り返される。
そんな歌詞の作り方もある。
サビでない場所に出てきたフレーズをサビでも使う。
この手法を私が意識した歌は、渡辺美里の「悲しいボーイフレンド」だった。
昔くれたシャツを今日は重ねて着た
彼氏にとがめられてもいい の
そんなわがままをつらそうに聞いた
あなたは悲しいボーイフレンド
悲しいボーイフレンド
いつだって私だけ許さないで
思い出せないほどに憎んでもいいのよ
だけど…
「悲しいボーイフレンド」というイカしたフレーズ。
それが二番Bパートの最後に出て来る。
そして、それがサビの頭にも登場するのである。
こんなリピートの使い方もあるのだなと、若い頃に思ったのだった。
この技を自分でも真似して歌詞を書いた気がするのだが、どの歌だっけ。ピックアップできなかった。
作詞講座第五回のまとめ
「気の利いたサビのフレーズを考えてリピートを上手に使おう。リピートはサビだけじゃない。」