作詞講座 第三回 「人称」
人称を考える。
一人称、二人称、三人称などという人称のことだ。
まずは吉田拓郎の歌の例から。
「わたしは・・」という明快な一人称。
続いて、井上陽水の歌の例。
先の吉田拓郎同様、自分からの視点の歌だが、一人称というよりもモノローグ。一人語りで、人称代名詞は出てこない。よりいっそう、話者(歌い手)の心情が強調されて感じられる。
二人称、語りかける歌詞も、世の中には多い。
「君がすき」「I Love You」恋の歌はおおむねそんな二人称だ。
小田和正のラブソングは君と僕の世界の典型だ。さらに、この歌詞では女性の台詞として「私は・・」と女性側からの一人称を組み入れるという技法を使ってる。
二人称問いかけは、恋の歌でなくてもいい。
一人称で一人語りしてもいい内容を問いかけの形にすることで、強く聴く者に訴えるという形をつくることができる。
始めて私が「問いかけ」の二人称を意識して作った歌。2012年の作品。
問いかけを歌詞の最初に持ってくることで、いわゆる「つかみ」、オーディエンスを引き込む。だが、二行目までは問いかけだけど、三行目からは問いかけるでもない。モノローグ的であるが、淡々と「こういうもんだ」という語り。
二番も同じような形で始まるが、三行目からは「君」という二人称を使いつつモノローグ的。
そのあと、三人称的「神」を主語にして語って、
サビでは、誰か、不特定多数に呼び掛ける。「持て」「聴け」。
そんなふうに、人称の移動を意識した歌詞づくりをした歌だった。
最後に、明快な三人称の歌詞の例を挙げておこう。
「彼」「時代」「恋人たち」「やんちゃ坊主」「婦人」。三人称を使った歌詞である。それぞれ、三人称を使うことで、淡々とした第三者的な描写となっている。
一人称で、自分を強く表現するもよし。二人称で、オーディエンスを引き込むのもよし。三人称で、歌詞に説明付けをしたり、第三者としての描写をするもあり。
人称ということを考えて、歌詞にバリエーションを持たそう。
また、たとえば一人称でも「私」「僕」「俺」「あたし」「われ」日本語には色々な表現もある。色々使ってみよう。
いちど、歌詞を作った後で、その人称を変えてみると、ちがう雰囲気になるよ。
人称を意識して歌詞をつくろう。
作詞講座 第三回のまとめ
「人称を意識しよう」
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