陶芸の釉薬調合―660レシピと応用例
火(fire)と水(water)、土(earth)、そして空気(air)。昔の人は、この4つの要素が全ての物質を構成していると考えられていた。世界を形作るための4つの元素。現在は、元素周期表を見ると118個の元素が並んでいるけど、実際に我々の身の回りにあるのは80種類以上、90種類くらいであると言われている。そう考えると、たった4つの元素が世界のすべてを構築していると信じていた時代はなにか物足りないものに見えるかもしれないが。陶芸の世界ではわりとこの4つの要素が作品制作の全ての基本であったりもする。
そんな理由で、私が学生時代に開いた個展のタイトルをこの4つのエレメントである『fire, water, earth and air』とした。
大学で私は、アート学部の陶芸彫刻学科を専攻した。陶芸と聞くと、ろくろに向かって器や壺を作っているイメージが強いかもしれない。もちろん私もろくろで器を作ったりもしたが、メインはあくまで彫塑として粘土を使った作品をつくるということ。人形の顔型をとってそれを使って粘土で大量に同じ顔が並ぶという作品をつくったり、それを真空管のテレビを分解したブラウン管と並べて写真を撮ったりなどしていた。もっとも、人が欲しがったり、売れたりした作品は器の方が多かったが。
粘土による造形も面白かったが、僕が興味を持ったのは釉薬づくり。陶器の表面にかける釉をつくるということである。基本となるのは、石灰石、長石、珪石などの鉱物。これを粉にしたものに金属化合物を混ぜて釉薬を調合する。微妙な違いが色や質感の差を生み出す。そして、同じ調合でも焼き上がりが全く同じにはならないのも面白かった。温度や酸素の違いで、仕上がりが変わってくる。正確さの中に偶然性があるのが面白い。どんどんいろいろな釉薬をつくっては、作品をつくっていった。
この本は、そんな釉薬研究の資料として購入したもの。もともとは英語で書かれていた本を日本語に訳してある。
「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。