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梶井基次郎の『檸檬』

気づけば自宅に、梶井基次郎の『檸檬』の文庫本が3冊もあった。好きな本で、今までに何度も繰り返し読み返している。

初出が1925年(大正14年)なので、もうすぐ執筆されてから100年も経つのか。今も色あせない、名作だと思う。

最初にこの本を手に入れたのは、ロサンゼルスの古本屋だったと思う。夏目漱石の『彼岸過迄』を購入したのと同じお店だったはず。旧仮名遣いの細かい文字で、本全体がびっくりするほど日焼けして変色している。そして、この古びた本が発するニオイ。こういう本は、大好きだ。

短編集なので、旅先でちょっと時間ができた時に読むのに適していて、一時はいつも旅に出る時はこの本を鞄の片隅に入れていた。新婚旅行先のモルディブでも、海辺のデッキチェアでこの本を読んでいたと思う。

あまりにも頻繁に旅先で読んでいたため、ある時この本を持たずに東北方面を旅した時、条件反射的にどうしても読みたくなり、福島県の駅に併設されている本屋さんで同じ文庫本を購入した。昨年も、三省堂本店の仮店舗で、限定版のカバーのものが売っているのを見て、思わずまた買ってしまった。手元にある、一番古い『檸檬』の文庫本に、この一番新しい鮮やかなレモン色のカバーをつけて、最近は読んでいる。

つい先日、神田の屋上で「おすすめの本」を持ち寄るイベントがあった。前回は「中銀カプセルタワービル」に関する本を何冊か持って行った。そのうちの一冊は、私がクラウドファンディングで支援した本。今回は何を持っていくか悩んだのだが、私は結局この3冊の『檸檬』の文庫本を持っていくことにした。何度も何度も読んでいるうちに、いつの間にか冊数が増えてしまったこの本。読むたびに、これまでのいろいろな旅の思い出がよみがえってくる。


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個人的に思い入れのある本、大切にしたい本、知人が書いた本や、私がちょっとだけ載ってる本などについて書いています。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。