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「健康ウォーキング」100万歩チャレンジ
2021年11月11日。今から28日前。
僕は、スマホ画面に開いたスプレッドシートの「-210,365」という数字を見つめていた。
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「マイナス21万か」と僕は声に出して呟いた。すると、改めて今更ながらその数字の重さが身に染みて、暗い気分になった。
健保の「健康ウォーキング」チャレンジ企画
きっかけは、2014年。会社で加入している健康保険組合が企画した、ちょっとしたチャレンジ企画。「健康ウォーキング参加者募集」のメールが届いたので、なんとなく申し込んでみたことから始まる。
この健康ウォーキングとは、健康増進と体力づくりのためのプログラムで、9月1日からスタートして100日間で毎日1万歩ずつ、合計100万歩を歩こうという企画である。参加申し込みをすると、自宅に「健歩カード」というものが送られてきて、そこに日々の歩数を記録していくのである。そして100日後、12月9日の時点で100万歩以上歩いていれば、目標達成。「達成賞」として、ちょっとした粗品がもらえるという仕組み。
普段、一日中パソコンに向かってデスクワークをしている自分にとっては、毎日1万歩を歩くには、それなりに意識して努力をしなければならない。結構なチャレンジである。なかなかコンスタントに1万歩を達成するのは難しく、週末にちょっと長めに散歩をしたり、あるいは帰宅時に少し手前の駅で降りて歩くなど、目標達成のために工夫をした。
チャレンジ企画中に、マスターズ陸上の大会に出場したり、10kmの皇居マラソン大会にも申し込んで走ったりもした。おかげで、見事目標の100万歩を達成することができた。これはうれしかった。
というわけで、それ以来ずっと、毎年9月1日になると、100日間で100万歩を目指すというチャレンジを行っている。健保の企画に申し込むこともあるが、たまに申し込みを忘れた時でも自発的にチャレンジしている。
それ以来、自分にとっては毎年、この100万歩チャレンジが年末にかけての恒例行事となっている。そして、2014年以来、昨年までずっと100万歩を達成してきた。ただ、今年は少し違っていた。
2021年のチャレンジ
2021年の「健康ウォーキング」も、いつもと同様に順調に進行していたように思えた。少なくとも、途中までは。
10月に「東京マラソン」に参加することが決まっていたので、そのためのトレーニングを積んでいた。本来であれば2020年に参加できる予定だったのだが、コロナ過の影響で一般の部の大会は中止となり、走ることはできなかった。その代わり、2021年に出場できることになり、10月17日の人生初マラソンを楽しみにしていた。
しかし残念ながら、今回の東京マラソンも延期が確定。9月17日に開催延期を通知するメールを受け取ったのち、次第に僕は走るトレーニングどころか、歩くことすらしないようになってしまった。折しも、仕事は自宅からのリモートワーク。つまり、通勤のために外に出ることすらない。ひどいときは、スマホの歩数計が「0」のままだった日もある。
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100万歩チャレンジの期間中、日々の体重と歩数を自作のスプレッドシートに記録している。それを見ると、目標歩数に対してその日の進捗が分かるようになっている。累計歩数が想定より少ないと、マイナスとなって数字が赤くなる。11月11日の時点で、連続48日間の赤字。累計のマイナスは21万歩を超えていた。
それが、今から28日前。冒頭の書き出しの場面である。
100日まで、残りの日数は1か月を切っている。普通に考えたら、今年のチャレンジは失敗だった。100日間で100万歩を歩くだけでもかなり難易度の高いチャレンジなのに、その時点で不足分も足すと30日足らずで50万歩を歩かなければならないというチャレンジに格上げされていた。
「これはムリだ……」と思った瞬間、なぜかスイッチが入った。8年前に初めて100万歩にチャレンジしたときのことを思い出した。あの時も、できるかできないかは分からなかったが、とりあえず飛び込んでみたのだ。思えば、自分の人生はそんなチャレンジの連続だった。海外に一度も行ったことがないのに突然留学したり。そこでもマジメに人類学を学ぶ予定が、途中でアート学部に切り替えたり。卒業後、ほぼホームレスの状態でアメリカ西海岸をさまよいながら就職活動をしたりなど。そこでエンジンがかかり、毎日2万歩~3万歩を歩く生活を17日間続け(途中1日だけ、飲み会があったので歩数が足りなかったが)、なんとか不足分の歩数を補い、赤字から黒字に転じることができた。
そして昨夜、99日目にして念願の100万歩に到達することができた。今回で8回目のチャレンジ達成だったが、今までで一番ギリギリだったし、「ダメかもしれない」と思ったのは今回が初めてだ。
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逆境になると燃える。「ダメかもしれない」と思った瞬間、そこから新たな力が生まれる。もちろん、それが毎回必ず成功するとは限らないけど。でも、やらないで後悔するより、ダメ元でもチャレンジした方が気持ちが良い。
せっかく100万歩を達成したので、ついでにこのまま200日間で200万歩にもチャレンジしてみようと思う。実は昨年も、7月1日から200日間かけて、200万歩を歩いている。今年もこの勢いで、200万歩を目指す。そしてその先には、来年3月の東京マラソンが待ち受けている。生まれて初めてのフルマラソン。昨年の大会中止に続いて、今年の大会延期で気分が落ち込んだけど、なんとかモチベーションを取り戻すことができた。完走できるかどうかは分からないけど、やれるだけのことはやってみる。
挑戦は、終わらない。
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