ハピハロ☆
ハピハロ☆
大学にはいろいろな格好の人がわんさかいた。
一番多いのはメイド服。
ていうかほとんどメイド服。
私は着たい服とか、なりたいキャラとかいないので特に何もしなかった。
嘘です。本当は何もしてなくても仮装状態なのに、これ以上何をしろってんだ!
という気持ちで何もできなかった。
ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと何かの役を演じている。
女の子やって、男の子やって、女子高校生と異性愛者とシスジェンダーとヘテロセクシャルやって、今は杜鞠ちゃんしてる。
人間は社会のねじというのは真実で、みんな何かしらの役割を負おうと必死なように見える。
自分の居場所というのは自分の役職のことなんじゃないだろうか。
本当の私とは、そうやって役割を求めている この肉体だけ
なのに私はこの肉体にいやでも課せられる女という役割ができなくて
肉体ごと拒否した。あんなの野放しにして良いことはない。変わっていくべきだ。
それに私はそもそも女にも男にも拒絶されている。
子供は残酷に自分と違うものを選別する。
小学生時点で女子にも男子にもなれないとわかっていた。
そしてそのどちらのグループにも入れないのは、人間社会への入社試験に落ちるみたいなことだったのだ。
大人になった私自身は今、一番肉体に近いところにいられるように役を選んでいる。一番無防備な状態を目指している。目指せるようになったのだ。
周囲を信用して、あるいは圧倒的な力によって道端で安心して眠れるようなものになりたい。
役職を着れば社会との契約によって守られるけど、
私の補償は限りなく薄い。
私ができるのは裸の王様コスだけかもしれない。
それは少しいいかもしれない。
間抜けなのは良いことだ。
雨にも負けず、風にも負けず、そういう人に私はなりたい。