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【超短編3連発】SHORTS(8)
安眠グッズ
友人のつてで、安眠グッズを手に入れた。容器の中に、小分けにされた黒っぽいリンゴが8つ入っていた。
「1回あたり1個・容量絶対厳守」との記載。それは当然だろうけど、果たして1個でも大丈夫なのだろうか。
ラベルを見ると、どうやら睡眠導入剤の成分を注入したリンゴらしい。その名も「白雪姫のリンゴ」。
怖い。嫌な予感がする。商標権とか、安全面とか、その他諸々。
(173文字)
雪とコーヒー
私の町に、雪が降ってきた。降ることはあっても、夜中だったり僅かだったりでそんなに実感はなかった。
はっきりと白い雪が、パラパラと灰色の空から舞い降りてくる。
道端の自販機でホットコーヒーを買い、公園の木の下で缶を開ける。
猫舌の私は、自販機のコーヒーは熱すぎて飲む気になれない。でも、今日の寒さならちょうどいいだろう。
ああ、おいしいな。
(165文字)
デジャブ
私の町では今、電車の高架線の工事をしている。踏切が無くなるというのだ。素晴らしいニュースだった。
子供の頃、急にカンカンと音を立てて光り出す踏切が怖かった。今はさすがに克服できるようになったが。
けれども無くなる、となると、なぜだか寂しく感じてしまう。昔からあった光景だったからか。
夕日に照らされる踏切の前に、母親に連れられた女の子がいた。
踏切の警報機が、カンカンと音を立て始めた。
それに合わせて、女の子は耳を塞いだ。
デジャブ。昔の私を見ているようだった。あの光景は、まだ続いていたのだ。
(242文字)