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トマさん劇場#41「トマのちょっとだけ怖い話」/第六回ちょっとだけコンテスト

別タイトル「女の顔のシミの顔の女」


Osaka Metro・長堀鶴見緑地線に乗って、鶴見緑地を目指す。訳はない。
今、丁度森ノ宮駅を出た辺りだ。
「次は、大阪ビジネスパーク・大阪城ホール前です」
「4号出口が最寄りの『魔法少女育成専門学校・アドプレミオ学園』へお越しの方は、次でお降りください」
前方には子供が一人だけ、窓の前に陣取っている。
「川崎重工 平成元年」と「ローレル賞1991 鉄道友の会」、そして車両番号「7159」のプレートが、鈍く存在感を示している。

ボーッとドアの窓を眺めていると、古い日々を思い出してくる。
かつて、この電車で、今福鶴見駅近くの学校に通っていたことがあった。
もう20年も前の話だ。
今日はその時の話をしてみよう。

高校時代のその日は期末テストの最終日だった。
クラス順位が35人中、30位だった私は、このテストで順位をあげなければ、ヤバイ。アホな男になる。そんな所まで来ていた。

憂鬱な気持ちになりながら、長堀鶴見緑地線の70系電車に大正駅から乗り込み、いざ学校へ向かった。

電車に乗って、今日のようにボーッとドアの方を眺める。
確か、松屋町まつやまち駅を出て、谷町六丁目たにまちろくちょうめ駅へ向かっている時だった。

右から左に流れるトンネルの壁を見ていると、ふと、壁の細かな模様が、人の顔に見えてきた。

模様が人の顔を形作る、とでも言えばいいのか。
模様がサーッ、と流れてきて、それがピッタリ合わさり、人の顔ができる。
いつも同じ、古いビデオに出てくるような女の顔だった。
それはこの一区間だけで、谷町六丁目駅を出た頃にはなくなっていたが、帰り、同区間を走ると、やっぱり女の顔が出てくる。
しかも、何回乗っても出てくる。

印象には残っていたものの、オカルトに縁のない私は、特に怖がることもなく、「錯覚ってあるんだ~」と思うぐらいの認識でいた。

怖くなってから7日。
地元・大正の界隈を歩いていると、そこには、あの顔と同じ顔をした女がいた。

チラチラとその女の方を見ると、女はこちらに向かって、お守りを渡してきた。
受け取ると、それには「安産御守」と書いてあった。

なぜ、あの女は男の私に「安産御守」を渡してきたのか。
ちょっとだけ怖くなって、その御守は当時出産を控えていた母に渡した。

あの女は私の母の事まで知っていたのか。というか同じ顔がいたのか。
なんだかちょっと怖い。

「大阪ビジネスパーク、大阪ビジネスパーク・大阪城ホール前。右側の扉が開きます。ご注意下さい」
おっと、駅に着いた…あれ?
森ノ宮から大阪ビジネスパークの間って、こんなに長かったかな?
やばい、なんかちょっと怖い。
早く鶴見緑地に着いて欲しい。

と思っていたら、無事につけた。時間通りに。

(了)(1109文字)


この作品はフィクションです。
実在する人物・地名・団体等とは、一切関係ありません。


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