突然ショートショート「魔法少女の暇潰し」
私は、魔法少女だ。普段は平凡で頭の冴える中学3年生として暮らしている。
今日は進路のことでまた時間を使ってしまった。お昼には帰れると思っていたのに、気づけば帰れるのは午後2時過ぎになりそう。
この後、午後3時に塾に行く予定が入っている。
こんな日は、時間の使い方に困る。中途半端に暇な時間ができてしまうからだ。
どこかに遊びに行こうという気にはなれないし、かといって早めに行って勉強しようという気にもなれない。
暇潰しにならないかと思って、少しの間魔法で遊べないかと考えてみた。
魔法を使うには、ステッキが必要だ。
このステッキ、変身しなければ使えない訳ではない。戦えないというのが正しい。つまり変身せずとも魔法は使えるのだ。
内心ドキドキしていた。果たしてどうなるのか、バレたらどうしようかと。
人気の無い場所を探して、普段は通らない住宅街の中に入って探してみたら、家々の中にぽっかりと空間が空いているのが見えた。
そこは、誰もいない小さな公園だった。
ブランコに腰掛け、通学カバンの中からステッキを取り出した。
普段は魔物が出たときのために持っているもので、こういう時のために使うのはちょっぴり気が引ける。
なんだか不安になってきた。魔法という特別な能力を自分のために使って、果たして大丈夫なのだろうか。
元々は誰かを、世界の平和を守るために妖精から与えられた力。それを一個人のこんな快楽のために使っていいのだろうか。
そう思っていると、私の元に妖精が飛んできた。
「仕事だよ。別に自分のために使ってもいいけど、まず仕事」
「本当!自分のために使っていいんだ!?」
「うん。でもまず仕事だって。怪人が出たから」
「じゃあ、仕事が無い時はすぐ自分のために…」
「しつこいよ。早くしないとダメだよ」
「よーし、…」私は、はやる気持ちを抑えてステッキに力を込めた。
「…変身!エターナルジューシーパワー、チャージスタート!」
ステッキから魔法の力が放たれて、一瞬で変身を完了させる。
「…よし。行こう!」
誰かに与えられた力を、自分のために使ってもいい。そのことがわかっただけで、私は満足だ。
(完)(870文字)