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【超短編3連発】SHORTS(5)
お楽しみ
生意気を言う人は許さない。例えば、電車の中で僕に「邪魔」と暴言を吐いてきたあの老人である。
足を広げて生意気に席に座るくせに。
だが僕には復讐できる力がある。少し念じれば、どんなことでも現実になるのだ。
その後、電車の中で立ちっぱなしのあの老人と出会った。今度は優しいふりをして、席を譲ってあげた。
お楽しみはこれからだ。
尻を気にしつつ、苦痛に満ちた顔をしながら席につき、中指を立てる老人。
これが僕の望んだ展開だったのだろうか。何かを間違えているような、納得のいかない感覚を覚えた。
(237文字)
危機回避
乗り過ごしてしまった。つい飛び乗った電車は、知らない場所へ連れていってくれた。
喧騒から離れた森の中。降りる客は僕、ただ一人。
改札の方に向かうと、フードを深く被った人が手招きをしてくるではないか。
「お客様はここに来て、この改札をくぐって一度だけやり直せるんです」
「何をやり直すのさ」
「お客様の不幸に関わる決断です」
不幸と言われると心が動いてしまい、私は改札をくぐった。すると、そこには飲み会に誘う友人の姿があった。
思い出した。このあと飲み会で暴れたこの友人が捕まり、僕も共犯扱いされてしまったということを。
決断した。この誘いは断ろう。
(266文字)
悪いヒーロー
今日、私はヒーローとしての仕事を済ませてきた。怪物を操り、世間を揺るがす悪人を倒した。これで世界には平和が訪れたと信じている。
けれど、彼は死に際にこう言っていた。
「お前は悪者だ。私のしてきたことはすべて正義のため。お前らのような悪と戦いながら、してきたんだ」
すぐそばで少年が泣いていた。
「あの人は、腐ったこの世界を直してくれる光のような方だったんですよ…」
そして「この悪者め」と言い残して去っていった。
私も涙が出てきた。おかしい。後悔なんてしないはずだったのに。
(231文字)