突然ショートショート「デジタルバレンタイン」/毎週ショートショートnote
2024年2月14日、水曜日─1年に1度のバレンタインであげる本命チョコを買いに、私はデパ地下の店へ向かった。
ショーケースには、様々なチョコレートが並んでいた。目星はつけているのについ見てしまう。
その片隅に、チョコレート色の薄い板があった。金色で「デジタルバレンタイン」と書いてある。
説明の紙には、こう書いてあった。
『チョコレートの風味をAIの力で完全再現したプレートと、デジタル世界で使えるバレンタインギフトのセット。ずっと溶けない、ずっと日持ち、生産者の労働問題からの開放』と。
労働問題からの開放というのは大切なんだろうけど、チョコレート風の『プレート』とは、なんてSFチックな話なのだろう。食べ物が無くなった近未来みたいな。
結局、たくさん売れ残っていた板ではなく、あらかじめ決めていた高いチョコレートにした。フェアトレードの。
せっかくの本命チョコ、ただの板をあげてもつまらないし、フェアトレードは高いけれども生産者のためになるから。
(完)(419文字)