突然ショートショート「気持ちよさについての短い話」
今日もいつもの時間に目が覚める。窓からは暗いままの空が見える。
朝食はしっかりと食べる。サラダとチルドのラーメンとインスタントの味噌汁、そして唐揚げ。シリアルとかパンとかで済ませるよりもいい。何より食い溜めできるので得した気分になる。
歯磨きを済ませた後、液体歯磨きを行う。酸っぱい刺激的な味が口いっぱいに広がり、ごちゃごちゃした朝食の味をリセットしてくれる。
空が明るみを増してきた。自家用の電動キックボードの充電コネクタを外し、ヘルメットを被る。
スクーターよりもこっちの方が楽しい。昔シェアリングサービスで乗った時の感動を味わいたくて買った。
スクーターや不要品を売った金があったので安く済んだ。
ウィーンと小さく音を立てながら、車に混じってスイスイと走るのがたまらない。
目的地の河原についたら、モバイルWi-Fiを起動してパソコンを開く。
やることはただの動画鑑賞だけども、こっちの方が気持ちいい。
結局、人間は己の気持ちよさを忘れてはならないのだと思う。
スクーターより、電動キックボード。家で見るより、外で見る。
そんな具合に、小さいながらも感動をしていたい。
だから、今日もキックボードで街をスイスイ移動する。
(終)(501文字)
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