突然ショートショート「チャレンジャー」
私の髪の毛は、光を当てると30分ぐらいで伸ばすことができる。
特殊体質なのだ。どんな光でもOK。2時間もあれば結構伸びる。
正直言って、不便だ。できるものなら、ずっと光に当たらず過ごしていたい。
けれども、この世界は光に溢れている。部屋の電球や蛍光灯、街灯、太陽の光、月の光…という具合に。
特に電球や蛍光灯が最も多い。どこに行っても天井ではそのどちらかが光を放っているのだ。
それがなければ暗いままで物が見えづらく、何かと支障が出るのがわかる。
けれども、このままでは私の方にも支障が出てしまう。
なので普段は帽子を被るか、ウイッグを被って対処する。
ウイッグは特殊仕様で、ベースの所が光を通さない素材でできているのだ。
地毛はベリーショートだけれども、周りに見せる機会は殆どない。せいぜい風呂に入るときぐらいだ。
ウイッグを被れば、それで髪型が変わり、新しい自分に生まれ変わった気分になれる。
なので、変わった髪型も色々試してみた。職場が髪型自由、ウイッグを認めてくれる所なのも幸いだった。
中でも、大型のツインテールはお気に入りだった。
太陽の光のような黄色にして、私服もそれに合わせた色のワンピースにした。
その姿で友達に会いに行った所、驚かれつつも気に入られた。過去最大級の反響があった。
その今までとは違う反応の中には、「ずっとそれでいてもいいんじゃない?」というものまであった。
今、これからしばらくの間、黄色のツインテールで毎日を過ごそうかと考えている。
あんなに気に入られたのは初めてで、私自身も気に入っているからだ。
元々、何か私個人のアイデンティティが欲しいとも思っていた。
性格では「はっきりしている」とか「チャレンジャー」という風に言われていたけれど、生まれつきの特殊体質が響いて、からかわれることもよくあった。
だから、それを上回るものが欲しかった。
ならば、なぜ髪型なのか。それはやっぱり見てもらえるからだ。
今のようにコロコロと変えていては、「私」というイメージがはっきり定まらないものになってしまうということに気づいた。
だから、髪型。
私は、このツインテールを旗印に、私だけの人生を状態突き進んでいく。
チャレンジャーとして、誰にも止められないぐらいに特殊で、楽しいことをして生きていく。
マガジン
https://note.com/toma_cy_note/m/m9743e6c3436b