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ビジター応援席の席数【セ・リーグ】

はじめに

カープファンである筆者にとって、本拠地マツダスタジアムのビジターパフフォーマンス(および3塁側パフォーマンス)は悩みの種である。というのも、様々な座席を揃えるセ・リーグで最も新しい本拠地球場は、ビジターパフォーマンス席の酷さで評価を落としているからである。

事実、建設用地の関係で左右非対称であるマツダスタジアムは、外野ライト側上段にあるカープパフォーマンスに対し、内野3塁側上段にビジターパフォーマンスが設置されており、一般的な球場と異なる。また、ビジターパフォーマンスが張り出している都合上、レフトの大部分が見えないという問題も抱えている。

ビジターファンにおいては当然ではあるが、いわゆる遠征客の割合も高く、球団だけでなく広島の街にとって大事なお客様である。カープパフォーマンス以外の全座席はビジターグッズの着用が可能であるが、1塁側やライトで敢えてそのようなことをする人はいないはずだ。ビジターパフォーマンスがどういう座席であるかという「イメージ」は、大切なビジターファンを集客する上で大事なことである。

しかし、内野3塁側上段にあるビジターパフォーマンスは、どうも狭いという「イメージ」を抱かれることが多いらしい。これは果たして本当であろうか。この記事においては、2024年セ・リーグ主催試合のビジター応援席の座席数を西から比較し、マツダスタジアムのビジターパフォーマンスが本当に狭い(=座席数が少ない)のか検討する。

本記事の中に出てくる座席数は数え上げのため、誤っている可能性がある。また、座席図は手書きのため、正確性を欠く場合がある。


①カープ主催試合

はじめに検討するのはカープ主催試合である。最近、カープは地方での主催試合を行なっていないため、本拠地であるマツダスタジアムのビジターパフォーマンスについてのみ考察する。

・マツダスタジアム

マツダスタジアム・ビジターパフォーマンス

上図は、マツダスタジアムのビジターパフォーマンスおよび3塁側パフォーマンスを簡易的に示した図である。マツダスタジアムでは対戦チームに合わせ、ビジターパフォーマンスの広さを変更しており、縮小時にはAのみがビジターパフォーマンスとして設定される。

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
マツダ& 設定区画 & 座席数 \\ \hline
阪神 & \text{ABCD} & 1648 \\ \hline
中日 &\text{A} & 616 \\ \hline
横浜 & \text{AB} & 931 \\ \hline
ヤクルト & \text{A} & 616 \\ \hline
巨人&\text{ABC} & 1206 \\ \hline
\end{array}
$$

昨年優勝チームのタイガースは、地理的にも広島に多くのファンを擁するため、ビジターパフォーマンスは全面開放(=ABCD)の1648席となる。また、スワローズによる大燕会も全面開放の対象となる。対してスワローズの通常時やドラゴンズ戦においてはAのみ開放となり、席数はわずか616席である。

注意したいのは、マツダスタジアムには応援団専用ブースが存在するため、上記の席数がそのままビジター応援席となるが、他の球場では基本的にビジター応援席内に応援団エリアが設定されるため、実際の席数は減少することである。本記事ではその減少分は考慮しない。

②タイガース主催試合

次に検討するのはタイガースの主催試合についてである。甲子園球場に加え、高校野球開催時期は京セラドームにおいても主催試合を行うので、本記事ではこの2つの球場のビジター応援席について論ずる。また、2024年は倉敷でも主催試合があったが、本記事では扱わない。

・甲子園球場

甲子園球場・レフトビジター専用応援席

上図は、甲子園球場のレフトビジター専用応援席を簡易的に示した図である。タイガースの公式サイトでは、レフト外野席上段の5区画を、センター側よりABCDEとして説明しているが、ここではそのABをB、CDEをAとして説明する。

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
甲子園& 設定区画 & 座席数 \\ \hline
広島 & \text{A} & 1290 \\ \hline
中日 &\text{B} & 755 \\ \hline
横浜 & \text{B} & 755 \\ \hline
ヤクルト & \text{B} & 755 \\ \hline
巨人&\text{A} & 1290 \\ \hline
\end{array}
$$

関西にも多くファンを擁するジャイアンツおよびカープはやや広めの1290席に設定されているが、その他セ・リーグチームは755席である。最小設定はイーグルス戦におけるB左側のみの375席である。

・京セラドーム

京セラドーム・上段レフトビジター専用応援席

タイガースの京セラドーム主催試合では、対戦チームによる上段レフトビジター専用応援席の設定に変動はない。常に661席である。

③ドラゴンズ主催試合

次に検討するのはドラゴンズ主催試合についてである。2024シーズンは豊橋球場と長良川球場で地方開催があったが、本記事で対象とするのはナゴヤドームのみとする。

・ナゴヤドーム


ナゴヤドーム・ビジター外野/内野応援

上図は、ナゴヤドームのビジター外野応援(AおよびC)とビジター内野応援(B)を簡易的に示した図である。基本的にはビジター外野応援のみの1464席であるが、試合によってはビジター内野応援498席を含めた計1962席が設定されることもある。料金区分プレミアムのベイスターズ戦においてはA760席のみに縮小される。

④ベイスターズ主催試合

次に検討するのはベイスターズ主催試合についてである。横浜スタジアムは試合によってはレフトスタンドを全面開放するなど、ビジターファンにとっては優しい球場である。また当記事では立ち見席は含めない。

・横浜スタジアム

横浜スタジアム・ビジター外野指定席

上図は、横浜スタジアムのビジター外野指定席およびビジター外野応援シートを簡易的に示した図である。LOWの試合ではABCが設定されるが、MIDDLEの試合ではAB、HIGHの試合ではAのみがビジター応援席となる。

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
ハマスタ& 設定区画 & 座席数 \\ \hline
広島 & \text{ABC} & 2525 \\ \hline
阪神&\text{ABC} & 2525 \\ \hline
中日 &\text{A} & 958 \\ \hline
ヤクルト & \text{AB} & 1748 \\ \hline
巨人 & \text{AB} & 1748 \\ \hline
\end{array}
$$

タイガースおよびカープ戦は基本的に最大開放であるLOWに設定され、2525席がビジター応援席となる。対してドラゴンズ戦や週末のスワローズ戦では最小開放であるHIGHとなり、ビジター応援席となるのは958席に限られる。

⑤スワローズ主催試合

次に検討するのはスワローズ主催試合についてである。神宮球場は試合によってはレフトスタンドを全面開放するなど、横浜スタジアムと同様にビジターファンにとっては優しい球場である。また坊ちゃんスタジアムでの主催試合でもレフト外野側はビジター応援席として全面解放される。

・神宮球場

神宮球場・外野指定席(ビジター側)

上図は、神宮球場の外野指定席(ビジター側)およびSEDIAヒップバーシート(ビジター側)を簡易的に示した図である。

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
神宮& 設定区画 & 座席数 \\ \hline
広島 & \text{AB} & 5404 \\ \hline
阪神&\text{ABC} & 6978 \\ \hline
中日 &\text{AB} & 5404 \\ \hline
横浜 & \text{AB} & 5404 \\ \hline
巨人 & \text{AB} & 5404 \\ \hline
\end{array}
$$

タイガース戦は基本的に最大開放で、6978席がビジター応援席となる。それ以外の場合は7ブロック開放(=AB)が一般的だが、TOKYO燕プロジェクト試合時は4ブロック(=A)の4262席がビジター応援席となる。

・坊っちゃんスタジアム

坊っちゃんスタジアム・外野指定席レフト側

上図は、坊っちゃんスタジアムの外野指定席レフト側(A)を簡易的に示した図である。外野指定席レフト側はビジター応援席として2934席が設定されている。

⑥ジャャイアンツ主催試合

最後に検討するのはジャイアンツ主催試合についてである。球界の盟主たるジャイアンツは多くの地方主催を行なっているが、本記事では本拠地である東京ドームについてのみ扱う。

・東京ドーム

東京ドーム・外野指定席(ビジターチーム応援席)/内野ビジターチーム応援席

上図は、東京ドームの外野指定席(ビジターチーム応援席)および内野ビジターチーム応援席を簡易的に示した図である。内野席235席を含めて1182席がビジターチーム応援席として設定されている。

まとめ

以上のように、球場によってビジター応援席の設定は様々である。以下に本拠地球場におけるビジター応援席の座席数をまとめ直した。

$$
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
球場名& 最少時 & 最大時 \\ \hline
マツダ & \textbf{616} & 1648 \\ \hline
甲子園& 755 & 1290 \\ \hline
ナゴド& 760 & 1962 \\ \hline
ハマスタ & 958 & 2525 \\ \hline
神宮 & 4262 & 6978 \\ \hline
東京ド & 1182 & \textbf{1182} \\ \hline
\end{array}
$$

この表からも、マツダスタジアムのビジターパフォーマンスの座席数は、ドラゴンズおよびスワローズ戦において、セ・リーグ6球団最少となることがわかった。また全面開放時の座席数は、甲子園や東京ドームの最大時よりも多いことがわかった。ビジターパフォーマンスは本来であれば一般的な広さであるが、縮小時にはかなり狭いということができよう。

$$
\begin{array}{|c|c|c|c|c|} \hline
球場名& 最少時/球場全体 & 百分率 & 最大時/球場全体 & 百分率 \\ \hline
マツダ & 616/33000 & 1.87 & 1648/33000 & 4.99 \\ \hline
甲子園 & 755/43359 & \textbf{1.74} & 1290/43359 & 2.98 \\ \hline
ナゴド & 760/36398 & 2.09 &1962/36398& 5.39 \\ \hline
ハマスタ & 958/33912 & 2.82 & 2525/33912 & 7.45 \\ \hline
神宮 & 4262/30969 & 13.76 & 6978/30969 & 22.53 \\ \hline
東京ド & 1182/43500 & 2.72 & 1182/43500 & \textbf{2.72} \\ \hline
\end{array}
$$

また、ビジター応援席が占める割合をみてみると、最小時は最も低い甲子園とほぼ同じ値であるが、最大時はナゴヤドームに近い値となった。しかしこのことから、マツダスタジアムや甲子園球場はビジターファンを制限していると断言はできない。なぜなら、これらの球場においてビジター応援席以外のレフト外野席はすべてビジターグッズの着用が認められているからである。これにより、ビジター応援席が狭かろうが、より多くのビジターファンの観戦が可能となっている。2013年にカープが初めてCSに出場した際の甲子園球場をみればこのことは明らかである。なによりこの2球場においてビジターファンが少なく感じるのは、悪しきチケット一斉販売によって遠征予定が立てにくいことや、人口に占めるビジターファンの割合の低さであろう。それゆえに「マツダスタジアムや甲子園球場のビジター応援席は狭い」と一概に語ることは難しい。

本記事を通じて、マツダスタジアムのビジターパフォーマンス(および3塁側パフォーマンス)そのものは世間の狭いというイメージほどに狭くないことが明らかになった。しかしながら、その展望やチケット販売方法は完全なものであるとは言い難く、改善されるべきといえよう。

参考資料

・マツダスタジアム

・甲子園球場


・京セラドーム

・ナゴヤドーム

・横浜スタジアム

・神宮球場

・坊っちゃんスタジアム

・東京ドーム

https://www.giants.jp/ticket/stadium/

いずれのサイトも最終閲覧日は2024年9月12日である。

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