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廃棄物処理業況解説①


この記事を読む所要時間:10分

この記事がおススメな方:廃棄物処理業者の皆さん、就活生の企業研究 等


廃棄物処理のビジネスモデルについて


廃棄物処理業のビジネスモデルとは、過去に個人ブログで説明した通り、下図のようになります。


  1. 廃棄物=価値の付かない、不要物である。

  2. 原則自己処理せねばならないが、出来ない場合は委託することが出来る。

  3. 廃棄物の運搬・処分を他者から受託するには許可が必要である。

  4. 許可を持っている業者は、②のような自己処理できない者からの委託手数料を収益源とする。

  5. 不要物=廃棄物は無害化・減容などの処理が加えられる。人の不要物を加工していると捉える。

  6. その加工物に価値が付く場合は有価物となり、廃棄物処理業者はそれを販売し、対価を得る。

こういった構造が、現在の廃棄物処理業者の主たる収益構造となっています。


今後も成長するのか という問題


下のデータをご覧ください。(出典:グローバルノートより出力し、筆者加工)

これは廃棄物量と名目GDPを並べた表です。右側には成長率があり、2000年比で、廃棄物量や名目GDPがどのくらい増加しているかを計算しています。(USドルにて計算されているので、為替レートは考慮が必要ですが、今回は本旨ではないので省略します)

名目GDPの成長率は、わが国日本を除いてかなり大きく増加しています。

一方で廃棄物量については、2020年比で減少している国もあります。100%を超えていたとしても、GDPの成長率よりは下回っており、経済の拡大=廃棄物も同様に増加するという経済ではないことがうかがえます。これをいわゆる経済成長と廃棄物量の「デカップリング(分離)」と呼びます。


各国比較


下のグラフをご覧ください。(出典:グローバルノートより出力し、筆者加工)

これが、上記データを可視化したグラフとなります。減少傾向にあることが見て取れます。

一方で、だいたい2008年ころ以降は、減少の傾きが小さくなっていることも読み取れます。


これらが何を意味するのか?


廃棄物量に頼ったビジネスモデルでは、今後成長するとは限らない という結論が出せそうです。

これまでは経済成長するとともに廃棄物量が増加し、廃棄物処理業者においても事業規模を拡大してきました。廃棄物が減少する要因よりも増加する要因の方が強ければ、同じようなビジネスモデルでも問題はないでしょう。では廃棄物の増減の要因には何があるでしょうか。

廃棄物が増加する要因

  • 廃棄物を減量しようという気運が一切なくなり、経済成長がなされる

  • 製造業や建設業、各業者における製造ロスが今よりも起こる

  • 大災害が発生し、廃棄物が大量に発生する

  • 何か国際政治的要因や、法的問題で、仕掛品や完成品の販売が出来なくなり大量廃棄となる

非常に無理がある仮定が多いと思われます。

廃棄物が減少する要因

  • 廃棄物=もったいない。そもそも発生させない、再使用する。

  • DX等の企業合理化によって、製造ロスを削減し、廃棄コストを削減する。

  • 埋立処分場の逼迫により、廃棄物にかかる費用(ゴミ袋等)が上昇し、削減の気運が高まる。

  • 人口減少により、単純に減少する。

後者の方が現実的に思われます。

災害の発生は特にわが国においては避けられない問題かもしれません。そのため最近では廃棄物処理業者が特例措置のもとで災害廃棄物を処理する例が増えているようです。それにしてもその廃棄物の発生を喜ぶわけにもいかないわけで、全体としては廃棄物が減少する傾向に進むことと思われます。


まとめ


  1. 廃棄物業者の主たる収益源は、廃棄物運搬処分の手数料や、有価物販売である。

  2. 経済成長をすれば廃棄物が増加して廃棄物業者も潤うのだと、単純には言えなくなっていく。

次回以降、下記のようなことを整理してみます。

外部環境

  • では廃棄物業者はどのように生き残っていけばいいのか?

  • 今後の競合他社とはどのような業界・どのような企業か?

内部環境

  • 廃棄物業者の特徴(規模・従業員数・地域性等)は?

  • それゆえ抱えている経営課題の特徴は?

  • 業界を成立させている規制と、今後見直すべき規制は?


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