文句があるなら役職つけな
20代半ばに念願のアパレルブランドに転職した。
いちばん最初の配属先は上司の態度が最悪で、ろくに指導もしないのに、間違いを見つけると一度教えたのに何で出来ないんんだ。って毎日怒られて、毎日泣いて帰る日々だった。精神的にも体力的にも1ヶ月で限界になり、人事に退職したいと申し出た。
幸い人事を担当されている方が、入社前から顔見知りの方で、退職を申し出た際に、思いっきり叱ってくれた。
「あなたこの会社の事、まだ何も分かってないでしょ。私が信頼できる人が別の店舗に居るから、そこでやり直してきなさい。」そんな事を言ってくれた。
元々、反骨精神満々で入社してしまった私は謙虚さとか、受け入れる気持ちが全く無く、一匹狼みたいな気持ちで居た時に、影響をいただいた上司と出会った。
移動先には店長さんとサブリーダー、私より年下で社歴があるスタッフが2人。年下上司、気まずい。そんな気持ちだった。誰にも心を許せない気持ちだった。
だけど、そんな気持ちはだんだん薄れて、自分の器の狭さだったり、何をしたかったのか思い出させてもらったのが、移動先の店長さんだった。
時間があれば一緒にお昼に出て話しを聞いてくださった。質問をいっぱいされて、最初は答えられな自分にイライラした。都合の良い言葉が見つけれなくて黙ってしまう事も多かった。ただ少しづつ自分の言葉にできない感情を一生懸命考え、言葉に変えて、自分が何を考えてるのか自覚させてもらった。すごいちっぽけな自分が居る事を感じて、涙を流すことも多かった。言葉が見つけれなくて、苦しくなることも沢山あったけど、言葉を見つけ出せた時の嬉しさは、仕事に通じるモチベーションになった。
そして1年目、2年目と時が過ぎた時、店舗の売上柱の2番手まで成長することができた。
3年目にサブリーダーを任された。会社の営業とも関わる事が増え、自分の存在がちゃんと会社に認知されるようになった。ただそれは良いことばかりでは無かった。
思ったことを直ぐ口にしてしまう性格なので、それが良い時もあれば、判断をミスって良くないことを言ってしまう事もある。会社の為と思って言った言葉が、相手の立場や状況、私が見えてない部分があり、できないことだって沢山ある。そんな事を知らずに私がつい簡単に言ってしまった言葉は、私の性格を知らない相手にとっては生意気に何も知らずに何言ってるんだ。と受け取られしまう事があった。その状況に気づいた自分は恥ずかしくなって、何であんな簡単に言ってしまったんだろうと、反省する。
そんな私を見て、店長さんが『文句があるなら役職をもらいなさい』と真剣に伝えてくれた。その時はその言葉の意味をしっかり理解できていなかったかもしれないが、その後、4年目に移動して店長をやらせてもらった際に、あの時の言葉が頭に浮かぶ事が沢山ある。
入社したばっかは不満ばかりで、何であーやらないんだとか、こうしたらもっと良くなるのに、とか思う事が沢山あったけど、入社して店長になった時、見えてる世界は全然違った。それは反骨精神が無くなって丸くなった自分が居るようで、面白みもなくて寂しく思う気持ちも有るけれど、ここまで育ててもらって、違う景色を見せていただいた嬉しさもあった。
役職がつくって、良いことも有るけれど、忘れてしまう事もいっぱいあって複雑だと思う。