
【TOLOPANの真髄に迫る 番外編】パン職人とプロデューサーの二足のわらじ
「UMAMI 食パンまほろば」
僕がプロデュースするパン屋はこれが7件目。
プロデュースとは「制作する」「生み出す」「引き起こす」「生じさせる」を意味する。これを意図して行うことが、プロデューサーとして活動するということだ。
「制作する」
とは、パンを制作していくこと。
「生み出す」
とは、他にないパンと人を生み出すこと。
「引き起こす」
自分のパン作りに対しての姿勢を惹き起こすこと。
自分が引いたところ(会社、業者、農家)から人の潜在を起こすこと。
「生じさせる」
ヒトとヒトの化学反応を生じさせること。
と、僕は捉えている。
プロデューサーとパン職人の「二足のわらじ」
共に自分の「夢」である。
しかし異を唱えるのは「ヒトの夢」「個人の夢」である。
まずパン職人として自分の夢は、
「ごまんといる職人の中で誰もやっていないことを成し遂げる人生にすること」
プロデューサーとしての自分の夢は、
この職人という舞台の高さではなく
「パン、楽しい」である。
修行。重労働。低賃金。
これは夢一つあれば自分は気にもならないこと。
しかし、この3つを行わなくても自分達のパン作りの楽しさを感じてもらいたい。パンの垣根を広げたい。これが1番の目的だ。
パンに携わる人々が増えれば、パン作りの楽しさ、そして難しさ、厳しさをより多くの人に知ってもらえる。認知された職業になっていける。
しかし3つを続けていくことに厳しさがある。どれもが持続可能でなくてはならない。
では、どうすれば持続可能になるのか。
僕が考える条件は、
「人として当たり前に幸せなること」
パン職人としての僕は、
パンさえしていれば幸せだ。
だから、修行も重労働も低賃金も苦ではない。
プロデューサーとしての僕は、
パン作りにプラスして他に大切にしているものが増えた感覚で幸せだ。
持続可能性には、「幸せ」が必要なのだ。
さてここからは、今回オープンするお店の話。
「UMAMI食パンまほろば」は、
寿司屋を展開していたオーナーが始めた
埼玉県鴻巣市吹上にある食パンのお店。
お店の名前になっている『まほろば』とは、
「素晴らしいところ」という意味。
「倭(大和)は国のまほろばたたなづく青垣山隠れる倭しうるわし」
とヤマトタケルノミコトが国を忍んで歌った和歌からくる言葉だ。
お店にどんな楽しい要素をを入れているのかというと「うまみ」にちなんで、自家製のあごだし、自家製オニオン塩、五島列島の椿の花びらから採取された無添加の椿酵母、ボワロン社(日仏商事)のいちごピュレ、カゴメのトマトパウダーを使用。FMIのUNOX社のコンベクションのみで行う焼成スタイルをとっている。ショックフリーザーの優れたイリノックスからの恒温高湿庫での熟成、そして食パンのお店なのにリバースシーターを入れている。
ここからは、まほろばで販売するパンの紹介。
「生食パン」は、ブリオッシュ生地に卵を使用せずバターで作る食パン。乳化剤なしでのパウンド型のワンローフタイプ。本当に柔らかく、窯出しの難しさに面白さがあるものだ。
「デニッシュ食パン」は、バター30%と少なめ。砂糖を減らし、層とバターを感じてもらう引き算系の食パンだ。これはぜひともジャンボンフロマージュで召し上がってもらいたい。現在はさらなるブラッシュアップとして、トレハロースを入れてバターの変敗臭を防止するテストを進めている。
「トースト食パン」は、田中製粉のミナミの全粒粉を使用。郊外での購入ならではの良い香りと空気で、トーストした時のメイラード反応とキャラメル化を味わえる。それを活かすためハムエッグを雑にのせた朝食をとりたいものだ。
「イチゴ食パン」は、サイズを250gと小さめ。ドライイチゴ、カレンズ、ピュレ、パウダーを入れたフルーツ感が特徴。ヨーグルトにハチミツ、ブルーポピーシードで食べたくなる。
「トマト食パン」は、こちらも250gの小さめサイズ。あごだし、さらに3種のトマト使用。酸味のマスキングと皮を薄くする為にハチミツと水をミキシングし、最後にグルテンを切りながら入れる。ケチャップではない、自然なトマト風味を活かしてぜひともピザトーストで。
現在はこの五種類で構成されているが、
これはまだまだ序章に過ぎない。
お世話になった、川上社長、関口さん、小林さん、唐沢さん、パートさん。プレオープンの1月30日は、とてつもない良い表情と緊張感の融合があった。初心は最高のゼロである。半年、一年の経過時に初心を上回るもっともっとがあれば、それはもう本物になっていくと思う。
この気持ちの交差のおかげで「二足のわらじ」がすごく誇りに思える。
「わらじの街」にぜひ足を運んでみてください。