見出し画像

谷山浩子 猫森集会2013のAプロは朝川朋之さんが奏でるミネルヴァの毒薬

※この記事は、過去のブログからの転載です。
初出:2013/09/17


イベント名:猫森集会2013 Aプログラム
ゲスト:朝川朋之(ハープ)

先週末、9月15日のA1に参加してきました。
大型の台風18号が到来したため、泣く泣くライブ参加を見送った人もいたりしましたが、私は帰りの新幹線が恐ろしく遅れた程度で済みました。翌日のA2も行きたかったなー。ハープ、すごくよかったもの。

今回のゲストは、男性のハープ奏者。実は21年前に共演していたそうです。

なんと、今回の座席は1列目9番!
ハープのど真ん前でした。めーっちゃよく見えたー!いい席だったー!

いつものように、メモはとってないので、自分の記憶だけで感想書くよー。
曲順はさすがに覚えきれないので、谷山浩子スタッフがA2でツイートしてた実況を参照してます。今回はセットリスト撮り忘れた…。


最初はとっても普通にスタート

浩子さんとAQさん、ふたりでスタート。ふたりだけのターンが思ったより長かったです。
ハープの弦越しに浩子さんが見えました。

珍しく、浩子さんはブーツじゃなくて、ほっそりしたブラックのサンダルでした。ヒールもほっそりしてちょっと高さがある感じ。
他の人から「浩子さんは今でも足がほっそりしててきれいなの」と聞いていたので、思わずおっさんのように凝視してしまった。


「カントリーガール」

なんかめっちゃ普通の曲でスタート。
この先、ハープが出てきてどう転がるのか、まったく予想つきません。

1曲目を歌い終えて、恒例のあいさつをする浩子さん。
毎回、ライブのたびに、「だらーんとリラックスして聞いて下さいね」とおっしゃるのですが、今回はこうつけ加えてました。

「でも、何百人ものお客さんがだらーんとしてたら、ちょっと怖いですけど(だらけた仕草をしつつ)」

ピカソの絵みたいなイメージが脳内に…。


「会いたくて」「三日月の女神」

しかし3曲目から早くもおかしな方向に舵を切る。

特に意味もなく選んだ歌だそうです。
「少年の片思いの歌と、なんかちょっと怖い人の歌です」
怖い人じゃなくて、やばい人だったかな?うろ覚え。


「何かが空を飛んでくる」「FANTASY」

声優の豊崎愛生さんに提供した歌のコーナー。
「FANTASY」は最近提供したばかりの新しい歌です。

「『FANTASY』は80年代テイストでつくったんですけど、ミックスしてみたらその部分がほとんど消えていたという…なので、今からAQさんと演奏するのが、『本当はこんな感じだった』曲です」
という浩子さんの言葉通り、ちょっと懐かしい感じ。
80年代というか、90年代前半というか、私が小学生の頃に見てたアニメで使われてそうな雰囲気でした。

…歌詞に細胞核とミトコンドリアが出てきた時点で、脳内のイメージがNHK天才てれび君でやってた「ジーン・ダイバー」に固定されましたよ…。あのアニメ、小学生の頃に夢中で見てたわー。

「何かが空を飛んでくる」は、完全に「鯖(サバ・sava・さば・saba)の歌」として記憶していたので、曲名を聞いた時に「そういえばそんなタイトルだった」って思ったw


一陣の風のように朝川さんが登場

ここでようやく、ゲストの朝川朋之さんが加わります。
スーツ姿で登場。

風のようにさっそうと出てこられました。
浩子さんやAQさんみたいに、とてとてとしたリズムで少しゆっくりめに出てくるんじゃなくて、さあああーっと駆けるように出てきて、そのままの勢いで風のように、風というか風が吹いてこうべをたれる植物みたいに、さあっさあっとしたリズムでおじぎしてはった。

浩子さん:「あいさつする時の足、なんかかっこいいですね」
朝川さん:「ダンスやってるんです」

確かに社交ダンスやってそうな感じだった。
(タップダンスをされているそうです)


「さよならDINO」「時の回廊」

ハープが加わって最初の曲が、まさかの「さよならDINO」だったんだけど、意外な面白さがあった。
「あ、ハープって弦楽器なんだ!ギターの仲間なんだ!」っていう発見が。
ポロンポローンっていう、いかにもハープらしい音だけじゃないんよね。ジャジャーンって感じの音も出るの。もちろん、ギターとは趣のちがうジャジャーンなんだけど。

そして、「さよならDINO」が終わったあともずっと朝川さんがハープを弾いてて、そのまま「時の回廊」につながっていくという素敵な流れ。
こういう演出、大好きです。

「時の回廊」が全然ちがう曲に聞こえました。
なんかちょっと淋しくて暗そうな歌だなーと思ってたけど、ハープがメインの伴奏に変わると、ふんわりしたやさしい光が差してくる感じなの。夕方が近づいてくる窓辺を連想した。

浩子さんが、
「ハープは、ずるい!」
「ハープが出てきただけで、時空が2個増えたような…2個?その数え方はおかしいか」
などとコメント。


斎藤ネコさんとの微妙な距離感

朝川さんは、斎藤ネコさんと同じ大学だったそうなのですが、
「実は高校も一緒なんです」
とのこと。

浩子さん:「へえー!仲良かったんですか?」
朝川さん:「いや、特に仲が良くはなかったです」

あ、あれっ。

そして、浩子さんと共演するのは21年ぶりだという朝川さん。

朝川さん:「あの時は、斎藤ネコさんのご縁で共演させていただいたんですよ」
浩子さん:「そうだったんですかー」
朝川さん:「だから僕は、斎藤ネコさんに感謝しなくちゃいけないですね」
浩子さん:「…なんでそういう微妙な言い回しなんですかw」


「人生は一本の長い煙草のようなもの」「マギー」「月見て跳ねる」

大好きな「マギー」が聞けて、すごくすごくうれしかったです。
しかも、ハープが伴奏だなんて…!

ただ、あまりにも思い入れのありすぎる曲だったためか、今思い出そうとしても、どんな演奏だったのか思い出せないのです…つらい…。


ハープを始めたのは26歳の頃

朝川さんは、作曲科の出身だそうです。
(だからピアノが弾ける)

ハープとの出会いは割と遅くて、社会に出て4年くらいたった頃。
作曲家としてテレビ番組などの曲をつくっていたそうなのですが、とある曲でハープを使うことになった時、「その時のハープ奏者が、へたくそだった」。
録り直しも多かったし、自分で出だしのリズムをとることができない人だったため、朝川さんは一緒に狭い録音ブースへ入って、「さん、はい!」などと指示を出したりしたそうです。

その時、間近にハープを見て、感じるものがあったらしい。

朝川さん:「ピアノってなんかややこしいじゃないですか。鍵盤を弾いたらあそこがこうなって、こうなって、やっと音が出て…って感じで、自分が弾いてから音が出るまでにタイムラグがあるんです」

浩子さん:「!…そこにタイムラグを感じるとか、すごいですね!」

浩子さん:「ギターとかでは駄目だったんですか?」
朝川さん:「あの頃はこれこれこんな風に感じていたので…」
浩子さん:「あー、遅れてきた厨二病みたいな…」
朝川さん:「そうです」

…まぁ、やっぱりその、間近であのでっかいハープをどーんと見ちゃったのが、ハープを演奏するきっかけになったんだそうですよ。

そして、ハープはピアノと同じで、演奏者はソリストのタイプが多いため、こうしてアンサンブルなどに出て伴奏をする人は少ないらしい。
コードの譜面を渡されても読めない人も多い、みたいなことを朝川さんがおっしゃってましたが、マジっすか。

朝川さん:「もともとハープは、吟遊詩人が歌の伴奏に使っていたものですし、僕は伴奏もどんどんすればいいと思うんですけど」

おかげで、ハープをやり始めた朝川さんは、伴奏ができる貴重なハープ奏者ということで仕事が入るようになったそうで、「だから本当に叩き上げですね」とおっしゃってました。
浩子さんと21年前に共演したのは、本当にハープを始めてまもない頃だったそうですよ。
それを知った浩子さんもAQさんも驚いてた。


「空からマリカが」「SEAGULL」「タイタニア 恋をしよう」

浩子さんいわく、
「最近、からくり人形楽団の仕事が多くて忘れていたのですが、(私の曲には)きれいな曲もたくさんあります!」
とのことで、メロディーがきれいな3曲のコーナー。

特に面白かったのが「タイタニア 恋をしよう」。
冒頭の、ジャン、ジャン、ジャーンっていう部分が、ハープになってたんですよ。

やっぱね、ハープらしくシャララララーンと上から下まで指をすべらせて、今度は逆に下から上まで音を奏でて…という演出も多かったんですけど、このタイタニアのジャン、ジャン、ジャーンは迫力がちがった。
少し弦の弾き方を変えてるのかな。力強かったんよね。
ひとつひとつの音を、ぐっ、ぐっと弦をしっかり弾いてて、ピアノの和音のようにずっしりとした響きがあったの。

浩子さんによれば、橋本一子さんがアレンジか何かで入れた音だったんだそうです。
「こういう、ちょっと変な(恐らく弾きにくい)音…」

浩子さん:「朝川さんは、なんと、最初の練習の前に、何も言ってなかったのに、そのへんの部分を楽譜に起こして、練習してきて下さってたんですよ!」

聴衆、「おおー」とどよめく。

朝川さん:「やらされそうだなと思ったので」

崩れそうになってAQさんのシンセに手をつく浩子さん。

トークのどこかで朝川さんが、
「(浩子さんとAQさんは)ハープのことをよく知らないんだろなって思いました」
とコメントされてました。
多分、ハープにとって弾きにくい曲をばんばん入れたとか、そういう意味合いだったと思う…。


生々しいけど皆が知りたいハープのお話

浩子さん:「あの、ちょっと下世話な質問してもいいですか」
朝川さん:「値段のことですか?」

というわけで、朝川さんのハープ講座!


ハープのお値段

朝川さんが当日演奏していたのは、550万円のグランドハープ。
ハープの中では、お値段が高い方だそうです。

朝川さん:「これ、金箔が貼ってあるんで、それがなければ350万くらいです」
浩子さん:「に、200万の金箔が貼ってあるんだ…」

そろそろとハープに指を近づけて、一瞬だけさわってみる浩子さん。

朝川さん:「でも、金を貼ってある方が、音がいいんですよ」
浩子さん:「そうなんですか!装飾のためじゃないんですね」

初心者向けの安いものだと、もっと小さくて(腰のあたりの高さ)、ペダルのついてないものが20万くらいで買えるらしい。

朝川さん:「楽器としての値段の上限は、700万くらいですね。あとは装飾によって高くなっていきます。真珠が埋めこんであるとか」
浩子さん:「あー、いくらでも高くなるんですね」
朝川さん:「天井知らずですね」

ハープの相場を知った浩子さんの総括、
「車を買うと思えば同じですよね。車をあきらめればいいんだ!」

まさに都会の人の発言です。


ミネルヴァの毒薬

朝川さんいわく「ハープって、ピアノと同じなんですよ。工業製品なんです」

ちゃんと機種が決まっていて、品番・型番があって、大量生産されているんだそうです。
そりゃピアノに比べたら数は少ないだろうけど。

朝川さん:「アメリカのメーカーだと、数字の品番ですね。イタリアのメーカーでは、ヴィーナスとか、ミネルヴァとか、女神の名前をつけているんですけど」
浩子さん:「名前、それだけなんですか?『ミネルヴァの毒薬』みたいなのは…」

なんで真っ先に毒薬?!

しかし、浩子さんのノリに対して、
「あぁ、料理の名前の『~添え』みたいなね」
と返していた朝川さんもおかしかった。


ノンコーティングの弦を使っています

ほとんどのハープは、切れにくいようにコーティングした弦を使っているそうなのですが、
「僕は音質重視で、コーティングしてない弦(ガット)を使ってます」
と朝川さん。

ハープは繊細な楽器なので、すぐに音が狂っちゃいます。
朝川さんも、数曲演奏するたびに弦の上の部分を回して調律し、時には演奏中にちょいちょいと調律してはりました。特にライトが当たると狂いやすいらしい。温度が上がるから。

コーティングしてある方が丈夫なんだけど、やっぱりノンコーティングの方が音はいい。

朝川さん:「でももう、コーティングしてない弦そのものがあんまりないんです。羊の腸からつくるんですけど、環境破壊であまりいい腸がとれなくて。すごく貴重なんです(なのに切れやすいけど)」


47本の弦と、7本のペダル

朝川さんの使っているグランドハープには、47本の弦が貼ってあります。
(わかりやすく、ドの弦だけ赤くなってる)

この47本の弦が、ピアノの白鍵に相当するらしい。
そこで、ハープの下部についている「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ」に相当する7本のペダルを操作して、それ以外の音を出しています。

・ペダルを踏んでいない状態:フラット(♭)のついた音
・ペダルを1段踏みこむ:ナチュラルの音
・ペダルを2段踏みこむ:シャープ(♯)のついた音

んで、どれかペダルを踏んで転調したりすると、「ある弦にフラットがついた状態の音は、となりの弦のナチュラルと同じ音」になっちゃったりするので、それを調整するためにまた別のペダルも踏む必要があったり…。
演奏中は、かなり忙しくペダルを踏んだり上げたりしてはります。

そのなめらかな動きに感心した浩子さん、
「朝川さん、その足の動き、無意識にやってますよね?!」
「ハープ、やってみようかなーって思った人のほとんどが、あきらめたと思います(うろ覚え)」
とコメント。

しかし、朝川さんは、ハープを覚え始めた頃について、
「ペダルで音が変わって、それを計算しなきゃいけなかったりするのは面白かったですね。弦に慣れるまでは指から血が出たりして、それはつらかったですけど」
とポジティブな反応でした。


ピアノの先生に弾き方を褒められたような反応

浩子さん:「朝川さんはピアノも私よりよっぽどうまい方なので、先生に見られてるみたいですごく恥ずかしいです」
朝川さん:「いやいやそんなことないです」

朝川さん:「浩子さんの弾き方、滞空時間がちゃんとリズムになってるんですよね」
浩子さん:「?」
朝川さん:「ピアノを弾いてる時、まりつきをしてるみたいに、手首のはずむ高さが、ちゃんと曲のリズムに合ってるんですよね。すごいなぁと思って」

褒められた浩子さんはかなりうれしそうで、「今日はもう、この言葉があればいい!」という感じでした。


「冷たい水の中をきみと歩いていく」「僕は帰る きっと帰る」

今回のライブでは、浩子さんがピアノを弾かずにハープの伴奏だけで歌ったり、ピアノはサビなどの最低限にとどめてハープの音を活かしたりする演奏が多かったです。

「冷たい水を~」も、ハープが前面に出てて、ピアノは控えめ。
ピアノの美しい音が印象的な曲なんだけど、ハープがメインの演奏もいいね!

ただ、冷たい水の中をきらきらとした光が…という歌詞通りの雰囲気ではなくて、天上の雲海をたゆたいながら、運命に逆らえずにどこか別の世界へ押し流されていくような印象を受けます。

「僕は帰る きっと帰る」では、冒頭の
♪チャンチャーララチャンチャンチャーラ チャンチャンチャーラララー
の部分で朝川さんがまちがえて、両手を盛大にふり回す。

浩子さんも同じ仕草をしながら、「なし!今の、なし!」と叫ぶ。

改めて弾き直して、今度は成功!
成功しても、その曲の中で同じメロディーは4回出てくるんで、大変だったと思います…。
(他にも、速いテンポで音がくるくる変わる部分がある)
母の前で、このメロディーをくちずさんでみせて「これをハープで弾いてはったの」と言ったら、目をむいてました。

演奏後、浩子さんが、
「(ハープも失敗した時に)やり直してもいいんだーってわかって、安心しました」
とコメントしたところ、恥ずかしさのためか、思わずすごい速さで立ち上がってくるっとその場で回ってまた座った朝川さん…。やはり風のようです。


「海の時間」

ラストは、この人気曲。
ハープのシャラララーという音は、海の泡が水面へとのぼっていく音みたいでした。

すでに私の脳内では、
「ハープを入れたバージョンのアルバムをつくるべき!猫森のゲストに来たROLLYさんをきっかけに、からくり人形楽団を結成するのなら、今度は朝川さんと組む企画があってもいいはずだ!ハープ!ハープ!」
という大合唱が渦を巻いていました。

実際、ライブアンケートに2回くらい「朝川さんとアルバム出して下さい」と書いた。


アンコール

ここでいつも、浩子さんのグッズの宣伝や、AQさんの新譜の宣伝や、ゲストのライブの宣伝が入るものなのですが…。

朝川さん:「ないです」
浩子さん:「?!…えっ…じゃあ、朝川さんに会いたくなったら、どうすればいいですか」
朝川さん:「Facebookとか…?」

それでいいのか。

その後、ハッと思い出した朝川さん、
「10月頃に、Apple Storeで、ハンディハープというアプリが出ます。iOSでハープが弾けるアプリです」
とおっしゃってました。

ふむ。面白そう。
いや…そうじゃなくて、私がハープを弾く真似をするんじゃなくて、朝川さんのライブとかアルバムとか、そっちはないんですか…!

やっぱりここは浩子さんと組んでいただいて、ハープでアレンジしたアルバムを出していただきたいですね!是非!


「電波塔の少年」

アンコール曲は、私がよく当たるこの1曲。
「少年の片思いの歌」「理系っぽい歌」という選曲。

ギターとかベースとか、いかにもバンドっぽい楽器が似合う曲かと思ってた。
ハープが入ると、少年の淋しさが増すというか、淋しくて泡になって消えちゃったみたいに聞こえるというか…むしろそれは人魚姫…。
とりあえず、地に足がついてない感じです。ハープ恐ろしい。


ハープのアルバムを出して下さい

今調べたら、Amazonで朝川さんのアルバム『おとなの休日~a dreamy day』が売ってた!
iTunesでも売ってました(買いました)

朝川さんは是非、浩子さんと組んでアルバム出してほしいです。きれいな曲をたくさんアレンジしてほしいし、意外な曲をアレンジして驚かせてほしい。
もっと聞きたいです!