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DfMSへの覚書#2「For The Love of Bees/ Healthy Urban Microbiome Initiative」

このnoteはDesign for Multispecies Sustainabilityと呼べるような多種と共栄するようなデザインを実践するための輪郭を探索する覚書です。一介のデザイン学生が修士制作にまつわるメモを公開しているに過ぎないものなので内容のルーズさは悪しからずです。もし興味を持たれた方はプロフィールにTwitterとかあるので適当にフォローしてもらえると嬉しいです。では本題へ。

前回からの続き

前回は「Multispecies Sustainability」の外郭やそこから考えられるシナリオについてまとめてきたので、ここからはその論文において扱われていた事例を中心に見ていきます。

1. For the Love of Bees

「多種多様な幸福の共有された未来」というシナリオをすでに行っている事例として、論文の中ではニュージランドで行われたFor the Love of Beesというプロジェクトを取り上げています。その背景として著者の著者の一部が日本でのニホンミツバチの飼育に関する2年間の学際的な研究に基づき、ドーナツ経済の概念を利用した、複数種のステークホルダーによる政策フレームワークを開発していた経験からこの事例を取り上げています。

このFor the Love of Beesというプログラムは、市民が参加しながらアート作品の制作や、オーガニックマーケット、コンポストのHUB制作などを通して循環型の社会に向けたインフラストラクチャーの制作を目指しています。またポウと呼ばれるマオリ族の文化に基づくオブジェクトやマオリ文化のナレッジを都市農園に組み込んでいます。

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https://www.fortheloveofbees.co.nz/innercity-rongo-garden

こういったコミュニティガーデンの活動は全世界的にも多く行われているものですが、本論文ではこの事例を挙げた点として「ミツバチというレンズを通して一つのまとまった行動にまとめ上げ」(For The Love of Bees, 2019)ている点を示しています。人間とハチという異なる存在同士の間を結びつけ、それを単一のプロジェクトではなく新たな取り組みとしてスピンオフさせていく(コミュニティガーデンからアートイベントまで)ことで人間の側においても多様なアクターとして学校、アートセンター、レストランが参加しうる場になっています。

人と人でないもの(ここではミツバチ)の相互作用が、その周縁にある間接的な社会生態学的な繋がりを探究する入り口となり、そこから多種のための街づくりを描くための知識やプロセスを見出せるかもしれません。


2. Healthy Urban Mirobiome Initiative

昨今では、人間や他の生物種の健康を形成する上で、微生物が重要な役割を果たしていることが注目されていますが、このプロジェクトもその事例の一つです。本論文では「これらの概念の基礎となるのは、生物多様性が生態系を安定させ、脅威や環境条件の変化に直面しても機能を維持することができるという認識である(Tilman, 1996)。」と記述されている。この論文では生物多様性の役割については詳細に記述されているわけではないが、前提として生物多様性が重要性が共有されている。

このプロジェクトは、人間と自然保護、多種族の幸福の間の共通の利益を紹介し、それをどう健康に役立つ方法で用いるかについてのテンプレートを提供するものです。特に都市部では、原生地域よりも空気中の微生物群やマイクロバイオームの多様性が低いとされており、(Hanski et.al,2012,  Vangay et.al, 2018)多くのアレルギー疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患の発生率が高くなると考えられています。(Flies et.al, 2019)

これらの情報は出版物やブログ記事としてWeb上で共有されています。例えば論文の中ではマウスへの実験として、生物多様性の高い土壌に触れた個体と、そうでない個体では不安行動の発生率が低いことを例に出しています。

以上のことから、生物多様性のある都市の緑地を利用することで、(1)人間の健康を回復し、(2)都市の生物多様性を改善し、(3)多種多様な考え方を支えるのに重要な人間と自然の相互作用を促進することができると考えられます(Flies et al., 2017, 2018; Liddicoat et al., 2019; Mills et al., 2017; Robinson & Breed, 2019)。このプロジェクトの焦点は、人間と微生物(それ自体が信じられないほど多様な生命のカテゴリーであるが)、このプロジェクトは、生物多様性のある微生物群集が生物多様性のある植物群集や人間以外の動物群集に依存していると主張しており、このことが多種多様な持続可能性を象徴している。

論文の筆者らは最後にこうまとめている。

このようにしてHealthy Urban Mirobiome Initiativeは、還元主義に陥ることなく人間中心主義を貫き、代わりに多種多様な持続可能性のレンズを適用して、人間以上の相互繁栄を目指す試みを例示している。重要なことは、生物多様性に富んだ都市の緑地を作るために、セクターを超えたコラボレーションの必要性を強調していることです。成功するプロジェクトは、コミュニティが主導し、地方自治体が支援し、公衆衛生と研究の専門家が指導する。このような部門横断的な協力体制により、異なる見解や目的が議論され、複数の種の幸福を強調する可能性が出てくるのです。

まとめ

この論文では、現在の持続可能性の概念は、人間のニーズだけを対象とした場合には成功しそうにないことが示されました。それに代わるものとして、提案されたのは、人文科学や社会科学におけるMultispecies Ethnographyや「more-than-human」の研究に関する経験的・概念的な進歩を利用したものでした。

次に、4つのシナリオを検討することで、持続可能な未来についての還元主義的な人間中心主義と多種多様性のバージョンがどのように大きく影響しうるかを説明しました。そして、多種多様な持続可能性を応用した2つの例を紹介することで、多種多様な考え方が、現場での多種多様な幸福の向上を目指す活動へどのように役立つかを示しました。

この論文を、調査と議論の出発点とすることで多種多様な持続可能性が、差し迫った地球環境問題や持続可能性の問題に対する私たちの視点についてどのような影響を与えうるでしょうか。論文の最後はこう締め括られています。

人間の予測能力は、他の種の予測能力によって補完されながら、どのようにして多種多様な未来のために使われるのでしょうか?本稿の初稿以降、SARS-CoV-2が世界的なパンデミックに発展し、本稿執筆時点でも進行中である。このことは、多種多様な種の絡み合いの原理と結果をよりよく理解することが緊急に必要であることを痛切に物語っている。<中略>持続可能性の課題はますます困難になっていますが、人間のニーズと幸福が必然的に位置する大きな絵を意識することは、私たち自身の利益のために行動することをより良くするために必要なことなのかもしれません。

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Hiroto Okuda
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