DfMSへの覚書#3「課題設計の転回」
このnoteはDesign for Multispecies Sustainabilityと呼べるような多種と共栄するようなデザインを実践するための輪郭を探索する覚書です。一介のデザイン学生が修士制作にまつわるメモを公開しているに過ぎないものなので内容のルーズさは悪しからずです。もし興味を持たれた方はプロフィールにTwitterとかあるので適当にフォローしてもらえると嬉しいです。では内容にいきましょう。
修士制作のテーマ
僕は修士号を取得するため、ミミズと共にデザインをするというテーマで制作しています。(デザインの大学院は論文を書かずとも修士号を取得できる場合がある。)学部の卒業制作の時も卒制月報として制作の記録を残していましたが、今回はもう少しラフに継続できるようにするつもりです。
すでにDesign for Multispecies sustainabilityへの覚書というタイトルでいくつか記事を書いていますが、多種という漠っとした対象からミミズに焦点を絞って制作を始めたのが去年の11月ぐらいだったと思います。今回はどのような流れでミミズという対象に絞ったのかについて簡単に書きます。
人間から多種への調査対象の転回
自分の修士制作のテーマは「都市に自立(律)的な環境を築くためのデザン」という漠然とした設定から始まっています。そこから自立のために食と農が重要であると見定め都市農園に調査へと訪れることにしました。その時はまだ都市農園の利用者や管理者の課題を探索するという、デザインの調査としては素直なものでした。ところが実際に調査をしていると思いもよらないことに資源の循環や害虫との闘いがその場における問題だったのです。
重要なのは利用者や管理者という人間のアクターではなく土壌や土の中の生き物、そしてその周辺を取り巻くエコシステムだと気づいた僕は、デザインのパートナーを人からミミズに転回することになりました。ミミズは土壌の中でも有力な大型生物であり、彼のチャールズ・ダーウィンも晩年ミミズの重要性についての論考を残していることは有名です。
後になって気づけばこの課題を調査する対象の転回こそ、人間中心的デザインから多種に向けたデザインへの転回を象徴するものなのかもしれません。
上記の論文では、参加型デザインのこれまでの民主主義的性質が気候危機にまで拡張された際に「参加」の対象が非人間を包含するという前提に基づきポスト・フェミニズムや日本の神道まで多岐にわたる観点から参加の形態について検討している非常に面白いものですので、また今度サマリーを書いてみようと思います。
ということで、ミミズと共にデザインすることを決めた私はミミズ1000匹を購入しミミズコンポストをしながら残りの修士課程を過ごすことになりました。次回以降はまずミミズとの暮らしのあれこれについて書こうと思います。