経営のイロハ、起業ビフォーアフター[16]
連載記事【16/18】
起業したい人は、ぜひ見てみてほしい、「生々しい起業家の半生」にみる経営のティップス。そこには、時代を超越した起業と、その後に関するティップスが存在します。30年眠ってきた日本、そろそろ目覚めてみませんか?
尾崎氏のお話し、連載16回目はいかにやりたい事を見つけて実現するか、についてです。
今回は、尾崎さんの真骨頂ともいえる、アイデア出し=やりたいことを作り出す、からの、どう実現するか?についてです。もう事業アイデアはあるよ、という人にはあんまり響かないかもですが、ピボットするときの参考になるかもしれません。そして、それを実現する方法についてのお話しです。
すでになんらかの方法によって事業のための運転資金を持っている人は、最初からその資金を使って準備ができますが、そうでない方、体制をゼロから作らなければいけない人は、いかに初期投資をすくなく、かつやりたい事業を実現できるかについて、考えているでしょう。資金があったって1円も無駄にしたくないのが本音だと思います、今回はその辺も含めた内容です。
INDEX
1. “儲かる”ことをやるのではなく、やりたいこと・得意なことを軸にする
2. 事業計画・フィジビリティスタディ(=FS)の重要性
3. 起業の手続や作業は、全部自分で出来る
4. 資本金・運転資金の集め方極意
5. 政府金融機関・銀行との付き合い方
6. ベンチャーキャピタルは期待するほど機能しない
7. クラウドファンディングは資金集めになるか ?
8. 最初は恰好を付けない、実質勝負できる武装が必要
9. 情報収集は、ありとあらゆる手を使う
10. 意味のある人材ネットワークを構築する
11. 企画立案の極意・方法
12. 製品アイデア発案の極意・方法
13. 文書作成と文書管理の極意・方法
14. 営業の極意・方法
15. キーパーソンを見つける
16.“それいいね”と言われる「刺さる話」を展開する
17. 中小企業との付き合い方・大企業との付き合い方
18. いわゆるサラリーマンが言うことは、契約して金が入るまで信じるな
(企業勤務者でもビジネスマンなら良い、この違いを見抜くのが重要)19. プロジェクトチームの創り方極意
20. 製作監理ではなく“一緒に編み出す”
21. 営業や技術の苦労は少し、大半は資金繰りの苦労
22. 出港した以上「空荷」では戻れない
23.“幸せ家族”の生活は少ないが、それでもかなりのことは出来る
24. 経営者は個人に全責任が掛かる、覚悟はあるか
25. 第三者の保証人にはなるな
26. 間違いがあれば全部負わなければならない
27. インチキ・不正は絶対しない
28. 節税しても脱税はしない
29. 競合との対応
30. 知的財産権(特許)
31. 世の中の要素を組み合わせ展開すれば、かなりのことが出来る
32. 所有する必要は無い、使用すればよい
33. 時間が経っても、本当の人間関係やネットワークは、いつまでも活きる
34. 必要充分で展開し、余剰は社会や次世代の若者に還元する
35. 事実と実質3
ではでは、本文にいってみましょう!
31. 世の中の要素を組み合わせ展開すれば、かなりのことが出来る
こうしている間にも、世の中では水面下で凄い技術が開発されてるはずだ。優れた人材・強い組織・整った設備・豊富な資金など、先端技術・先端材料は、大企業や専門の研究所じゃないと開発できない。アメリカの大学などもそういうところが多いし、日本では京都大学なんかかなりやっている。
研究開発している技術のどれ位が世に出るか、確率は高くないかも知れないが、こうした研究開発は継続的に強化しないと、産業・社会が衰退する。しかし反面、凄い技術・材料の研究開発に携わっている人たちには弱みがある。
専門分野を掘り下げるのは凄いが、その技術を‥‥どのような機構で‥‥何に使い‥‥どんな機能を持たせたら‥‥誰がどう喜ぶか‥‥という視点が乏しい。
凄さのトレードオフ(一方を尊重すればもう一方が成り立たない状態)で、無理からぬことであるが、エクスぺリアンス(経験)の多彩さは無い。専門分野の視点を持って深堀し成果を出してくれればそれで良いのだ。
ここに Application(アプリケーション:適用・応用)開発が浮上してくる。アプリケーションの視点は、ユーザーが実際に使用するのに即しているから、“こんなものがあれば、こういう人がこう喜ぶな”という具体的かつ現実的な製品企画・製品アイデアを出せるのが強みになる。
先端技術・先端材料が次々と開発されれば、今までに無かったモノが出現するから、それはそれで大歓迎だ。同時に、アプリケーション開発のグッドアイデアは、生活の身近なところで“今までに無かったものを編み出す”ことが出来る。
すなわち、既存の材料・部品・製品・製法などを組み合わせると、誰も考えていなかった新製品アイデアが湧いてくる。そのキーは、「組合せ」「応用」「多彩展開」にある。
“世の中の要素を組み合わせ展開すれば、かなりのことが出来る”のだ。
私は現在、今までに無かった新製品アイデア298件を発案し、このうち30件ほどは強い特許が成立すると予期している。具体的に内容を明かせないが、キーになる視点の実例として示しておこう。
「組合せ」の例では、既存製品が沢山あり、使用する部品なども既存品だが、同じ機能を持った新製品群として「ハンズフリー」を共通コンセプトとしたバリエーションが展開できるアイデアだ。6分野の新製品が同時開発出来て、製品と使い方は6種類成立するというものだ。特許は1件で出願できる。「応用」の例では、ある機構を導入すると、今までに無かった腕時計の装着方法が成立し、腕時計のデザインを根本から変えてしまうものだ。また、既成技術と機構を応用することで、盲人が事故に遭遇するのを予め防止できる白杖がある。
「多彩展開」では、既存技術を利用して今まで無かった仕様の動力源を創り、それをベースとして他要素と組み合わせれば、10種類の新製品が成立する。この分野では各社が様々な製品を開発しているが、これと同じ視点のものは無い。
「組合せ」「応用」「多彩展開」を併せ持った新製品アイデア群もある。ある機能を持った材料が大企業で開発され、それを使用する新製品アイデア72件も発案済みだ。
“ま~、良くこんなものが成立するね”と言われる製品が多いが、既成概念を大きく凌駕(りょうが:他をしのいでその上に出る)するものもあれば、今まで世の中に存在しなかった製品もあり、新しい用途・利便性・市場を創造する。
“今までに無かった新製品をゼロから編み出す”ことは、研究開発の成果を具体的に世に出すゴールだが、最も重要なことは、“見てるだけ”“考えているだけ(実際は考えてもいないけど)”“言ってるだけ(こればっかり)”で、実践力を持たないと達成できない。近年の日本の企業・産業界・社会は、ここに陥っている。
HONDAの創業何周年かの式典で、創業者の本田宗一郎さんが、大勢の社員を前にして鈴鹿サーキットで挨拶した。“ウチは、社長がエエ加減だから、若い皆がしっかりしてくれないと困る”だ。本田宗一郎さんは決してエエ加減な経営者ではないが、あの話術と屈託ない笑顔で、若い社員たちを鼓舞(こぶ:大いに励まし気持ちを奮いたたせる)したのだ、これから社会と国を背負って立つ皆も、実践力を装備して大いに活躍して欲しい。
32. 所有する必要は無い、使用すればよい
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