むらさきのスカートの女/今村夏子 読了
近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女が気になる「わたし」が彼女と友達になるためさまざまな行動をする物語。
淡々と「わたし」は「むらさきのスカートの女」を描写する。
社会不適合者とも言えるその人への同情、憐憫、そして嫌悪感が湧く。しかし途中から徐々に、「わたし」の狂気が増していく。
小説を成り立たせているはずの語り手への信頼感が揺らいでいく。
町の人がみんな「むらさきのスカートの女」を話題にしていると記されているけど、それも妄想、だれも彼女のことなんて見てないのかもしれない。
物語後半、「わたし」である「権藤さん」は職場の上司にお金を無心するが仕事ぶりの悪さを叱られている。
たつみ酒店(だったかな)のおじさんに呼び止められたのも「わたし」である。
安部公房の「友達」で感じた足元がぐらつく感覚を思い出した。
巻末のエッセイに、書くことに対して葛藤を抱き、評価に喜び、そのプレッシャーに落ち込み、距離を置くも編集者の言葉でようやく書いた小説であるというようなことが書いてあった。
なるほどそんな心境になるのかと興味深く、そして羨ましく思った。