ハワイ島旅行記
ハワイ島・・・通称ビッグアイランド。
昨年の秋ごろに手足口病を患い、かなり消耗したので、大自然の場所に行って、のんびり過ごしてみたかった。
オアフ島、マウイ島には過去行ったことがあり、ホノルルは那覇、マウイは武富島、ハワイ島は宮古島みたいなイメージを勝手に持っていた。(ハワイを沖縄で喩えようとする時点でナンセンスである)
人口およそ20万人。人口密度はわずか19人/km²。島自体はだだっ広く、黒い溶岩石が至る所に見られる。
最初に訪れたのは、「全米の美しいビーチ第1位」に選ばれたハプナビーチ。大谷翔平が「完璧なビーチ」と称してわざわざ近くに別荘を建てたというくらいだから、どんなものかと心躍った。
・・・なんというか、普通のビーチである。これが全米No.1なら宮古島の与那覇前浜は世界No.1だ。意外なのは、鶏がいたるところに放し飼いされていることだ。
コケッコッコー!
大分の田舎を思い出す。大谷翔平はビーチの何を知っているのだ。いや、大谷翔平がいえば何でもすごいものだと思い込んでいる自分の思考停止を反省したい。彼は別にビーチ評論家ではない。
ひとしきり海で泳いだ後、ビーチの穴蔵で休んでいると、妻に埋められた。
その後、おもむろに胸に膨らみを盛られる。
夫でなければ立派なセクシャル・ハラスメントである。夫のいじり方をよくわきまえている。僕はビーチの砂浜のあたたかさに気持ちよく眠りにつき、妻はその場を離れて写真を撮りに行った。
妻が近くにいてこそ、微笑ましい光景として許されるものが、単独で置いてけぼりになると、もはやハワイ島に出没した、ただの変態おじさんである。
地元のおばあちゃんが「Nice Body!」と言って笑いながら去っていく。半笑いで返すしかなかった。
翌る日、朝からシュノーケルツアーに参加。
感動したのは野生のイルカも見れたことだ。
そして、ウミガメもたくさんいる。
ハワイでは「ホヌ」と呼ばれ、神聖な生き物とされ、幸運を運んでくるという。
その後、向かったワイピオ渓谷もすごく良かった。
カメハメハ大王が幼少期を過ごした場所で「王の谷」とも呼ばれた場所。言葉にできない威厳のようなものと人間界から隔離された静寂のバランスが良かった。
街としてよかったのはホノカアである。映画『ホノカアボーイ』の舞台になった場所だが、観たのがかなり昔のことなので、何一つ記憶にない。
メイン通りのママネ・ストリートには、100年前に遡ったようなレトロな雰囲気もありながら、センスの良いチョコレート店やアンティークショップが立ち並ぶ。
街の映画館もレトロで可愛かった。
昔の名作映画を上映しているのかと思いきやゴリゴリの新作「グラディエーターⅡ」を上映していた。
街としては「無理してよく見せようとしない」「ありのままでいながらも、気品があり、穏やかで優しい」という、自分のなかの求めていたハワイにようやく来た気がして心が躍った。
帰りに寄ったのが「テックス・ドライブイン」という店だ。マクドナルドのドライブスルーのように車で乗った状態で注文し、マラサダというドーナツみたいな揚げパンみたいなスイーツを受け取る。外はカリカリで中はふわふわとした食感、あたたかくて甘いスイーツだ。
「何も言えねぇ〜」
オリンピックで金メダルをとったこともないくせに、北島康介に負けないくらい感情が昂ぶってしまうほど美味い。
3日目くらいになると、徐々にハワイ島の全体感をつかめるようになる。
「プウホヌア・O・ホナウナウ国立歴史公園」。
すごいネーミングの公園だ。ロト7を当てるより、この公園の名前を言い当てることのほうが難しい気がする。そして、ふとハワイの言葉は、どれも雰囲気が似ていることに気づく。その理由に気づいて、ハッとした。
ハワイ語には「サ行」「タ行」「ヤ行」が存在しない!
実際、調べてみると、ハワイ語のアルファベットは、以下の 13文字 で構成されているようだ。
• 母音 (Vowels):A, E, I, O, U (ア、エ、イ、オ、ウ)
• 子音 (Consonants):H, K, L, M, N, P, W (ハ、カ、ラ、マ、ナ、パ、ワ)
• ʻOkina (オキナ):「ʻ」 という特殊な発音記号(声門破裂音)
もしハワイ語しかわからない人が「サ行」「タ行」「ヤ行」だらけの言葉に出会ったらどう発音するのだろう。たとえば「仕立て屋で、シャツ、立たせてよ」と言ってもらうようお願いしたら、どんな感じになるだろう。
おそらく、そんなくだらない実験に付き合ってくれるハワイの人は一人もいないし、そもそも仕立て屋でシャツを立たせようと意味不明な行動をとる人を僕は見たことがなかった。
夕方にはワイコロアビーチで沈む夕日を観る。
太陽が海に沈む瞬間、緑色に輝くことをグリーンフラッシュと呼ぶらしい。
写真ではわかりづらいが、たしかに緑色に光るのを感じた。あるいは「緑に光った!」と言いたい欲求から、寄せに行った可能性もある。それくらいの微差である。
そして夜はマウナケア山頂付近で、星空の観測ツアーに参加した。
天の川がはっきりと見える。
「あぁ、今、俺は地球に来ているんだなぁ」
という謎の宇宙人視点で、ため息が漏れる。星座の位置が変わっていくたび、
「あぁ、今、地球は自転しているんだなぁ」
と感じる。東京の夜空は自転感がない。危うく天動説に舞い戻りそうになる。
そして、ツアーガイドのおじさんは言った。
「地球や宇宙のレベルで考えたら、人生はほんの一瞬に過ぎないんです。『なんとか100年でやりたいこと全部まとめなさい』って、僕らは宇宙から言われてるんですよね。だから遠慮もしちゃいけないし、自分の魂を喜ばせるようなことをどんどんしていくべきだと思う」
ツアーガイドの人にあたたかいココアを何杯も勧められる。途中から「捨てるのもったいないから全部飲ませようとしているのではないか」とさえ思えてくる。
ツアー参加者6名の中で僕が一番ココアを勧めやすそうな顔をしていた。そして飲みすぎて、ゲップが止まらない。嫌がらせかと思ったが、星野道夫のファンということで意気投合した。そして彼は人生哲学を語った。
「僕は自分で1つ決めてることがあるんです。それは『この人はと思ったらどんどん話しかけるようにすること』『ダメな時も多いけど決してめげないこと』です」
素晴らしい。(ゲップ)見習いたい。(ゲップ)ココアを飲みすぎた以外は本当に素晴らしいツアーだった。
翌朝、プルナウ黒砂海岸に行って、ウミガメを一生分くらいたくさん見た。
何度見ても癒される。のんびり、ゆっくり生きている。僕ものんびり、ゆっくり生きていきたい。
そしてキラウエア山の火口を見に行った。
写真でみると「だだっ広いゴミ処理施設場にしか見えない」と思ったそこのあなたは、今すぐ有給をとって現地に行ってらっしゃい。このスケールは圧巻ですよ。人生1度は行く価値があると思います。そして1度行けば十分だと思います。
そして、いよいよ旅も終わりを迎える。
特筆すべき観光名所があるかと言われるとわからないが、大自然を満喫しながら、のんびり過ごすには最高の場所だと思った。
気がつけば、かなり心や身体は回復していた。また東京で頑張ろうと思えた。
ありがとう、ハワイ島。