雷門の提灯、下から見るか?横から見るか?
2月3日、節分。浅草を訪れる。
「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」なんて映画が昔あったけど、雷門の大提灯だって、その問いを立てる価値はある。
横からみれば言わずと知れたこの姿。
下から見ると、辰年にふさわしいこの姿。
節分ならではだろうか、福豆も売っていた。
「豆まき」なんて小さい頃以来やってなかったが、
あれは鬼の来る夜にやるのだと初めて知った。
冬晴れの気持ちのいい日で、もう一度、正月を迎えた気分だった。浅草もんじゃ「かのや はなれ」でもんじゃを食べる。美味なり。
接客もまた素晴らしい。僕が飲食業をやっていたら引き抜きたいほどだ。
その後、うななという鰻焼きおにぎりが気になる。
受け取りまで2時間待ちだったが、これもまた2時間後に訪れて食す。美味なり。
夕方、「亀十」という老舗の和菓子屋さんで、またもや行列に並んで、どら焼きと「松風」という黒糖蒸しパンみたいなものを食す。美味なり。
長年誰かに愛されてきたものを、ふらりと訪れた先で食す。幸福なり。
夕方家に帰り、手袋の片方をどこかに落としたことを知る。残念なり。
写真もまた警察が押収した物的証拠写真みたいな感じになってしまった。
この手袋は昨年ベルギーで買った思い出の大切なもの。このまま泣き寝入りするわけにはいかない。
せっかくお手製の恵方巻きをつくって東北東に向かって食すも、願いは手袋の片割れが見つかることしか思いつかない。
2月4日、立春。浅草を訪れる。
「雷門の提灯、下から見るか?横から見るか?」なんて言ってる暇はない。足早に浅草寺や近辺の訪れた店々を訪ね歩く。見つからない。
浅草駅で遺失物の問い合わせをすると「それらしきものがある」と判明。しかしすでに1日経っているので飯田橋駅に届けられていると知る。
少し平静を取り戻し、昨日、気になって行けなかった喫茶店に行く。
一見やっているかやっていないかが全くわからない。まるで人に見つかってはいけないかのように気配を消しさることに成功した店の扉を開く。
昭和レトロブームなんて言葉がちゃんちゃらおかしいくらい年季の入りまくった昭和レトロ感漂う店内は、いつか是非、みなさんの目で確かめてほしいところだ。出てきたモーニングは心がこもっていた。美味なり。
店内のマスター夫婦もまた素敵なお人柄だった。
ふと飯田橋まで歩いてみたくなり、浅草から上野を通って湯島天神を訪れ、神田明神もせっかくなので参拝し、小石川後楽園で休憩して飯田橋を訪れた。
13.6kmの道のりだったが、最近ハマっているオーディブル(本を音声で聴くアプリ)で染井為人著『正体』というミステリー小説を聴くのが面白すぎて、あっという間だった。
多くの受験生たちが湯島で合格を祈願するなか、僕は事件の真相解明を願った。
途中、猫にまつわるものしか売っていない雑貨屋さんに立ち寄り、あまりに可愛すぎた猫の木彫り置物を買った。
見れば見るほど、愛くるしい。
七輪まで極めて正確だ。
ちなみに飯田橋駅で無事に、手袋の片割れも見つかった。
届けてくれた人、ありがとう。
2つ揃ってもなお警察が押収した物的証拠写真にしか見えないのは、あなたもまたミステリー小説が好きだからに違いない。
無事に戻ってきてくれて良かった。
でも、なくしたからこそ、新たに出会えたものもある。
そういうものはより一層、愛おしい。