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伝えたいという気持ち

下北沢の小田急線路跡地にできた「線路街」には
いろいろなユニークなお店ができている。

10年近く下北沢の「餃子の王将」の上に事務所を構えていた僕は、ひそかにこの新たな光景を「下北沢2.0」と呼んでいる。

もともと線路だった場所に新たに街ができたのだから、
感傷も何もないどころか、むしろこの新しい光景が好きだ。

ふと下北沢2.0を歩いている時にみかけた古いバスの本屋さん。

手前の黒板には、新成人に向けた言葉として、
美術家ブルーノ・ムナーリさんの言葉が書かれていた。

子どもの心を、一生のあいだ
自分の中に持ち続けるということは
知りたいという好奇心やわかる喜び
伝えたいという気持ちを
持ち続けるということ

『ナムーリのことば』ブルーノ・ムナーリ

そうか、子どもの心を持ち続けることは、
そんなに難しいことなんかじゃなくて、
自分に素直でいることなのかもしれない。

この本屋さん自身も、セレクトした素敵な本をお客さんに伝えたい気持ちが伝わってくる素敵な本屋さんだった。

      *

先日、関西在住の大学4年生の映像クリエイター島田拓空也くんが、東京に来るタイミングがあって、わざわざ会いにきてくれた。

彼は札幌短編映画際でMicroDocsという3分くらいの
短尺ドキュメンタリー部門で最優秀賞を受賞した。

僕はこの作品がすごく好きで4回くらい見返した。
自閉症のしんちゃんは、陶芸で自分の気持ちを表現する。
そして、イタリア・ヴェネツィア・ヴィエンナーレ展に
出展されるほど世界的に評価されている。

そんな彼の創作に向き合う姿勢と彼を支える支援員、
池谷正晴さんの思いが映像で紡がれる。

とても短い映像作品なのに、見終わるたびに心の奥のほうであたたかいものが生まれる。それの正体を僕はまだ言語化できていない。でも、言語化できないけど伝えたい気持ちが伝わってくる。それがまさにこのドキュメンタリーの素晴らしいところだなと思う。

わざわざ遊びに来てくれた島田くんを
下北沢1.0の方の「トロワシャンブル」という
僕の行きつけの喫茶店に誘っていろんな話をした。
あっという間の3時間、楽しかった。
これからの彼の作品がとても楽しみである。

島田くんは僕の本も読み込んでくれていたみたいで、とても嬉しかった。僕も僕なりのやり方で、自分の好きな街のことや、好きなもの、伝えたいことを伝えていきたい。

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