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「囀る鳥は羽ばたかない」 第59話 感想

第59話

 今回最もエロいのは、矢代の後ろから腕を回しその唇を指先で塞ぐ百目鬼が描かれた表紙で、58話までほぼ毎回あった二人の絡みはない。(ちょっと残念)
 59話はこの先にあると予想される大きな展開へ繋がっていく下ごしらえ回だった。

「浮かび上がる 埋もれていた過去」は百目鬼のではなく綱川周りのことだった。
 早く百目鬼の過去が知りたくて私はじりじりする。

 冒頭、タバコを吸おうとする神谷を百目鬼が咎める。

「クソ真面目同士お似合いだな」とふてくされた神谷が「(あのママと)デキてんだろ?」と百目鬼に尋ねる。


百目鬼「あの人がそう言ったんですか?」(=違います
神谷「あんたが家に通ってること認めてた」
百目鬼「なら、そうですね」(=それならそういうことにしておきます

 この会話で、私は百目鬼がママとデキていないという確信をさらに強めた。

 その場に綱川の乗った車が到着する。入院している奥山と会うために。

 百目鬼が「場所が場所ですから」と神谷の喫煙を注意したのは、病院の敷地内だったからなのだ。

 ここで場面は渋谷に移る。クラブでボヤ騒ぎが起き、その騒ぎに乗じて一人の男が非常階段に走って逃げている。

 男は(おそらく)甲斐たちに監禁されていた山川だった。

 七海を連れた矢代が山川の前に現れ「逃がしてやっただろ?」と言うからには、ボヤの原因を作ったのは矢代たちで、山川を炙り出すためにわざとやったというわけだ。

 矢代は余裕の笑みを浮かべながら、「あんたにひとつ提案がある」と山川に取引を持ち掛ける。

 山川は金の成る木として甲斐に「大事にされて」いるが(第45話)、彼の資金源が気になる。山川を生かしておいてこそ得られる金はどこから来るのか。

 矢代は、山川を甲斐や奥山組や桜一家から追われる身から自由にしてやる代わりに大金を寄越せとでも持ち掛けるのだろうか?(そんな単純なものではないかも)

 奥山は6年前に桜一家を離れた後、がんを発症し一旦は治療で回復したものの再発し、もはや長くは生きられないようだ。

 甲斐は昨年病に伏せる奥山の姿を見て激昂し、その後奥山とは交流を断った。
 奥山は、綱川の娘(仁姫)がさらわれたのはその後だ(つまり、仁姫の誘拐に奥山は関与していない)と言う。

 綱川が甲斐を殺すつもりだと知っても、奥山は「殺さないでくれ」とは言わない。そんな言葉は「意味も効果もない」と自覚している。

 奥山は、甲斐のことを「もう私が守る程ガキじゃない」と突き放し、綱川にここに来たもう一つの理由を尋ねる。

 すると綱川は、

あんたの天秤が重過ぎて傾いてんのを拝みに来てやろうと思ったのよ

 と不思議な言葉を残して去るのだった。

 天秤は、第55話で奥山が綱川に対して

極道には見えない天秤があると思いませんか。
釣り合い、やったやられた、面子、報復、落とし前。
その均衡が極道である限り続くとしたら…

という場面でキーワードとして出てくる。

 綱川は「何が言いたい?」と返すのだが、その言葉通り、私には奥山の言いたいことがまだよくわからない。

 奥山の天秤の皿には一体何が乗ったことで、重過ぎて傾いてしまったのだろうか。

 綱川が去った後、奥山は甲斐を捜すよう部下に命じる。

 甲斐を桜一家から守るためだろうか。
 そこまで甲斐をかばいだてするほど、奥山は甲斐の父(関西で奥山が客人として世話になっていた組の組長)に恩があるのか、まだわからない。

 一方、綱川も百目鬼と神谷に、甲斐と竜頭を狙うよう命じる。

「奥山組には手を出すな、ただし連中が手を貸すなら容赦するな」と言い添えて。

 桜一家VS甲斐(バックに奥山組)・竜頭の本格的な抗争の火蓋が切って落とされたのだ。

 矢代と百目鬼が濃密に絡み合い、二人の感情がずっしりと重くて読むのが苦しかった9巻から一転、59話はヤクザパートだった。

 大きな爆発が起きる前の不穏な静けさを感じる。
 いよいよドンパチが始まりそうだ。

 なぜ、ヨネダ先生が奥山を、甲斐と竜頭を操って綱川と対立するラスボスにせず、病気で余命幾許もない設定にしたのかが気になる。
 いずれその理由も明らかになるのだろうが、やはり最後は三角が裏ボスとして矢代と百目鬼の前に立ちはだかるのか?

 ヤクザの抗争が盛り上がるのと連動して、きっと矢代と百目鬼の関係も大きな展開を見せると期待しながら、60話を楽しみに待つ。

おまけ


 今回「囀る」の感想を書くためにihr HertZのバックナンバーをパラパラめくっていたら、ミナヅキアキラ先生の「スモーキーネクター」に出会い、即単行本を買ってキュンキュン、ドキドキ、ポロポロ泣きながら一気に読みました。とてもよかった!!

≪can’t live without you≫ は永遠に究極の、私が求める愛の理想形。
 私は、囀る59話で不足していたキュンキュンを溢れるほど摂取したのでした。

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