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「ハッピー・オブ・ジ・エンド 2」 3巻予想 約束されたハッピーエンドに向かって


2巻感想まとめ


「ハッピー・オブ・ジ・エンド 2」の感想を一言で言うと、「本当に面白かった」と小学生みたいになってしまうので、何がどうよかったのか1話ずつ書いた。

 私はすっかりこの物語の虜で、2022年4月15日の発売以来3週間、「ハッピー・オブ・ジ・エンド」を読まない日はなかった。

 2巻は1話ごとに盛り上がる場面があり、かつep.09以外は各話にセックスシーンも入っていた。
 まずこの構成が凄い。
 1巻から感じていたが、読んでいて「ずっと面白い」のだ。

 2巻の名シーンを振り返ると…

ep.07  浩然の交際宣言、千紘が裸の浩然を黙って抱きしめる
ep.08 映画館デート、喧嘩した後浩然が玄関でずっと立っている
ep.09 マヤとの再会、ラブホのお風呂場で浩然が傷の理由を話す(この回だけセックスしない)
ep.10  浩然とマヤの過去、「俺がいなきゃ、生きていけなくなってくれ」
ep.11  二人のクリスマス、千紘のプレゼントを浩然が喜ぶ
ep.12 初詣で浩然が涙を流す、「これ以上、何を願えっていうんだ」

 ストーリーの甘い辛いの配分が絶妙で、どの話もとても良かった。

 全体的に、1巻に比べて浩然にスポットライトが当たっていた。
 浩然は本当に魅力的な人物だと思う。

 私は「ハッピー・オブ・ジ・エンド」でおげれつ先生に出会い、その後入手できる商業作品はすべて読んだけれど、やはり「ハッピー・オブ・ジ・エンド」が一番好きだ。

 ストーリーももちろんだが、千紘と浩然という二人の主人公に惹かれている部分が大きい。外見もこの二人が一番好みだ。

 千紘はちょっとバカで優しくて健気で可愛くて、何より浩然をありのままに受け止めて愛する包容力がある。

 浩然は今までのおげれつ先生の作品にはいなかったタイプの「攻」だ。

 美形でミステリアスで、ちょっと意地悪で我儘で猫みたい。(私は猫が大好き。猫は神)
 こんなに美しくて可愛い人が、「攻」なのがたまらない。

 千紘の方が3.5㎝背が高いという二人の体格のバランスもいい。

 従来のおげれつ先生の作品だと(大抵のBL作品もそうだが)、攻の方が背が高くて顔も精悍な感じで、二人が並んでいる一枚絵を見るだけでどちらが受でどちらが攻かすぐわかる。

 でも、千紘と浩然は違う。

 私は何も知らずに「ハッピー・オブ・ジ・エンド2」の表紙を見せられたら、浩然が受だと思ってしまう。

 浩然が「攻」という意外性が、私がこの物語の虜になった最初のポイントだった。
 
 さらに、浩然が抱えている心の闇の深さ、苦しみ、悲しみ、千紘への愛情を知ってますます好きになったし、2巻では予想外の可愛さや素直さを見せてくれて、完全に心を鷲掴みにされた。

 そして、千紘も浩然も性的経験は豊富だけど、好きな人とちゃんと付き合うのはお互い初めて、というところにときめく。


 読者の中には、マヤに対して「二人の邪魔をしないで」と思う方もいらっしゃるかもしれないが、私はマヤが嫌いじゃない。

 マヤがいないと2巻で終わってしまう。
 マヤがいるからこそ、この先も物語は盛り上がる。
「エスケープジャーニー」の2巻で仁科が登場して、ストーリーがより一層面白くなったように。

 私は「エスケープジャーニー」では仁科が一番好きで、途中から太一より応援していた。
 叶わないとわかっていながら、直人に恋をしているところにぐっときた。
 優れた絵の才能があったのに、好きな人に裏切られたら綺麗な絵が描けなくなってしまって、直人と出会ってまた美しい人物像が描けるようになった姿に感動した。

 絵と言えば、ep.09の「傍から見たら同じ絵」のモノローグ、私はマヤのものなのでは? と思っている。千紘と浩然には該当しないように感じているのだが…。

 どの作家さんにもある程度、定型というものがあると思う。
 繰り返されるパターンによって生まれる既視感は、ファンにとっては決して飽きるものではなく、むしろ惹かれる理由となる。

 おげれつ先生はコミュ障・陰キャ(太一、仁科、遠野、ヒロ、真山、秋)とみんなの人気者・陽キャ(直人、加島、夏生、弓、潤也)を組み合わせることがお好きだし、千紘と加島は写真が趣味、千紘と弓、サヤ、夏生は攻のために料理をする受(このうち弓以外はギャルっぽい見た目)、千紘とヒロは鉢植えを育てているなどの共通点がある。

 ep.09のモノローグは仁科のように絵を描く人にこそ相応しいように思えるのだが、果たして…?


3巻予想 約束されたハッピーエンドに向かって


 ここからは結構本気の予想なので、「余計なこと言わないで!」と思われる方は閲覧にご注意ください。

 おげれつ先生は、今まで発表された商業作品の結末はすべてハッピーエンドにされているので(同人誌はまだ全部読んでいないが、たぶん同様の傾向)、「ハッピー・オブ・ジ・エンド」もそうなるだろうと思っていた。

 先日のスぺースでおげれつ先生が「バドエン(バッドエンド)は描かない」とはっきりおっしゃってくださったことで、既にハッピーエンドは確約されている。

 ハッピーエンドが待っていると事前にわかっているからといって、この物語の面白さは少しも損なわれない。

 むしろ、読者は最終的には幸せな気持ちになれると安心して、途中のハラハラ、ドキドキを楽しむことができる。

 おげれつ先生は「全3巻です」ともおっしゃった。

 私はできるだけ長く千紘と浩然の生きる世界を味わいたいので、3巻で終わってしまうのは残念だが、物語のバランスとしてそれがベストだと理解はしている。

 夏に出会った二人が、秋、冬を経て、幸せな春を迎える、という時の流れはこの美しい物語に相応しい。

 春になって千紘が植えたパンジーの花が咲き、二人が旅行に出かける、という幸福の予兆を感じさせるフラグも立っている。


 2巻の終わりで、千紘はマヤに車に乗るよう脅されている。

 仕方なく千紘は車に乗るのだろう。千紘を人質にしてマヤは浩然を呼び出すかもしれない。
 浩然にとって、マヤとの対決は避けられないものだ。その苦しみを経て、浩然は過去を乗り越えることになると思う。
 浩然がマツキにした「頼みごと」が事態を解決する助けになるのだろうか。

 感想その4でも書いたように、おげれつ先生はマヤを「本当に嫌な奴」としては描かないだろう。
 どこかに読者が好きになれる要素を入れる気がする。

 マヤが「保護施設にいた時の思い出」と言ったカエルのエピソードは明かされるはずだ。なぜマヤがカエルの刺青を入れていて、浩然はカエルの写真を見ただけで「マヤだ」とわかったのかという疑問はきっと解決する。

 あと残された問題としては、千紘と家族が絶縁していることだけれど、私は「エスケープジャーニー」のように家族と和解できなくてもいいのではないかと思う。

 現実にはままあることだし、わかり合えないまま生きていく、という道があってもいいのではないだろうか。
 おげれつ先生は優しい方なので、何らかの「救い」を描かれる気もするけれど。

 千紘はバイトしたお金でカメラを買うと思う。
 旅行した時に浩然を撮るんじゃないかな。

 物語の最後に、二人は旅行に行くだろう。

 浩然が「考えておく」と言った旅行先、母の思い出の場所になるだろうと私は予想している。

 ep.06で「母」が死んだ後、ショックで動けなくなった浩然は、幼い頃テレビに映った風景を見ながら聞いた母の言葉を思い出す。

「お母さんねえ、ここに住んでたの」
「新宿に来る前までずーっといたんだぁ」

 猫がいっぱいいて、水族館があって、坂ばっかりで、名物がしらす丼…ヒントは散りばめられている。
 ここはどこなのか。
 私はまだ行ったことがない場所なのですぐにはピンとこなかったが、決め手はテレビ画面に映った建物だった。
 はっきりと「駅」の画像が描かれている。
 最終的にはおげれつ先生の画力によって特定できたのだった。

「浩然も一緒に帰れたらいいね」

「行く」ではなく、「帰る」というところに重みを感じる。
 浩然は「母」とは一緒に帰れなかったけれど、千紘と一緒に帰るのだろう。

 江の島に。


 二人が暮らす東京からの距離も、恋人同士が春に行くデートスポットとしても申し分ない。

 おげれつ先生はデート先として水族館を描くのがお好きだし、きっと千紘は江の島でいい写真が撮れるだろう。

 母の思い出の場所を訪ねることで、マヤとのことも含めた過去を乗り越えた浩然が、千紘と二人で生きていく未来に希望を持てるようになるのではないかと予想している。

 こんなふうに先の展開をごちゃごちゃ考えずに、おげれつ先生が与えて下さる物語を素直に楽しめばいいのに、と自分でも呆れるが、私はどうしてもあれこれ考えてしまう。
 私に考える余地を与えてくれる物語に惹かれてしまう性分なので仕方ない。

「3巻はたぶん来年」とおげれつ先生はおっしゃっていた。
「3巻が待ち遠しい」と書いたが、こらえ性のない私はもちろん、3巻発売まで待つことができない。
 これからリアルタイムで1話ずつ追いかけて、千紘と浩然のハッピーエンドを見守ろうと思う。

 スペースで読者からの質問にお答えになる際、おげれつ先生はご自身の作品の登場人物について、まるで実在する人物の事のように語っていらした。
 それを聞きながら、私はとても嬉しかった。
 この世界に実体は持たなくても、千紘と浩然は確かに存在し、私たちの心の中に生きている。
 そして、これからも私たちにこの上ない喜びと幸せを与えてくれるのだ。


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